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全国自然博物館の旅【44】徳島県立博物館

今、四国の古生物学が熱いです! 今回訪れる徳島県においても極めて貴重な大発見が成し遂げられており、太古の徳島には多くの恐竜たちもいたことが判明しています
現代も古代も魅力的な大自然を有する徳島県。その自然史をとことん深く学びたいと思い、緑あふれる文化の公園を訪れました。


県民の憩いの場に佇む複合学習施設

徳島県民にとって、重要な学習と憩いの場。それが文化の森総合公園です。美術館や図書館など様々な学術・教育施設と公園一体となった、まさに学びの理想郷と呼べる場所です。聞くだけで知的好奇心をそそられる、本当に素晴らしいスポットですね。
徳島市内のホテルに宿泊していた筆者は、チェックアウト後、まったりドライブしながら文化の森へと向かいました。文化の森総合公園は美しい丘陵地に築かれており、活き活きとした木々の緑が来園者を癒してくれます。

文化の森総合公園に到着。園内には屋外のコンサート会場があり、文化的な活動がたくさん実施されています。
丘陵地の公園なので、豊かな植生の中をゆったりと歩けます。鳥や昆虫などの動物を探したくなりますね。
生物観察したくなる瑞々しい緑の公園。ただ、園内の環境を維持するために、植生の中に立ち入ることは控え、双眼鏡などの道具による観察だけに留めた方がいいと思います。
園内に立つ県立図書館。緑に美しい緑に取り巻かれて読書ができるとは、本当に素晴らしい環境だと思います。

文化施設の建屋で最も大きいのは三館棟です。複数の博物館施設(県立博物館・鳥居記念館・近代美術館・21世紀館)となった建物であり、自然科学・人文科学・芸術を広範に学べます。
人々の憩いの場である公園と学びがたっぷりの学習施設。2つの公共のオアシスのユニゾンは、本当に素晴らしいできごとです。

三館棟。複数の博物館施設を擁する建屋であり、徳島県立博物館も入っています。
1階エントランスホール。このインパクトあふれる展示を目の当たりにすると、ここが学術と芸術の総合施設であるとわかりますね。
美術館の手前に設置されたアート。県立博物館のすぐ近くにありますので、三館棟で学習施設巡りをしてみるのも大いにありだと思います。

多種多様な知が融合した三館棟は、とても広大な学習施設です。目指す県立博物館は、当施設2階に位置しています。特別な学びの公園でどんな自然科学学習ができるのか、楽しみすぎてワクワクが止まりません。

三館棟に入って2階へ上がると、徳島県立博物館はすぐそこです。徳島県の自然科学と文化を専門的に深く学べる場です。

古代と現代! 徳島県の自然を濃密学習!!

最新研究で甦る四国の古生物たち

いよいよ博物館の展示エリアへ!
いきなり我々を出迎えてくれるのは、かっこいい恐竜の全身骨格。マラウィサウルスをはじめ、マニア心を刺激するユニークな種類たちです。太古の世界への導入として、恐竜たちの魅力をとことん味わいましょう。

展示エリアに入ると、さっそく恐竜たちが登場! 大人も子供も知的好奇心が爆上がりします。
アフリカ産の植物食恐竜マラウィサウルス。全長10 mありますが、それでも竜脚類(カミナリ竜)恐竜の中では小型です
肉食恐竜コンカヴェナトル。背中に突起があり、生きているときはコブのよう見えたことでしょう。
中型の鳥脚類プロバクトロサウルス。イグアノドン類の植物食恐竜です。

そして、恐竜マニア大注目の標本が登場。徳島県で発見された恐竜たち実物化石です!
徳島県の羽ノ浦丘陵や勝浦町川盆地の周辺には白亜紀の地層があり、様々な動植物の化石が産出しています。その中には恐竜も含まれており、かつて四国には大恐竜王国があったとわかります。眠りから目覚めた勇ましい四国の恐竜たちと出会いは、恐竜マニアにとって特別な体験となるはずです。

徳島県の勝浦町で発見された化石。マラウィサウルスと同じく、ティタノサルス類の竜脚類恐竜です。
白亜紀のイグアノドン類の歯。四国で初めて発見された恐竜化石です!
恐竜の骨質化した腱の化石(骨ではありません)。イグアノドン類は背骨を強化するため、硬い腱を備えているのです。
小型肉食恐竜の脛の骨。持ち主は、かなり軽快な俊足ハンターだったと思われます。

前述の通り、勝浦町や羽ノ浦町では恐竜以外にもたくさんの白亜紀の生物化石が見つかっています。動植物の化石は生態や進化の解明だけでなく、当時の環境の推測においても重要な標本となります。研究の結果、白亜紀の徳島県は現代よりも暖かかったことが判明しています。
様々な生き物たちが活き活きと繁栄する太古の徳島。化石を眺めながら、当時の世界を想像してみてください。

化石と復元図を同時展示。ヘテロプチコダスは淡水域や汽水域のサメであり、魚食性恐竜に捕食されることもあったでしょう。
ワニ類の歯と椎骨の化石。白亜紀の徳島県の水辺には、たくさんのワニが棲んでいたと考えられます。
シダ植物クラドフレビスの化石。発見された植物化石の種類から判断して、白亜紀の徳島県は熱帯性の気候だったと思われます
二枚貝類ハヤミナの化石。当時の採集地は、海に近い汽水域環境だったとわかります。

徳島県や近隣県の古生物探究はとても奥が深く、四国の大地には約5億年の歴史が刻まれています。シルル紀のサンゴ類や腕足類、デボン紀の古代植物など古生代の生物化石が多数発見されているうえに、中生代の地層からは多種多様な古生物が確認されています。
悠久の生命史を有する四国。その壮大な軌跡が、あまたの展示標本から感じ取れます。

数多くの化石標本と、見やすくてわかりやすいキャプション。とても理解しやすい展示形態となっています。
四国には古生代の地層も見られます。こちらは勝浦町産のシルル紀のハチノスサンゴ類です。
レプトフロエウム。デボン紀の植物化石です。
白亜紀のネズミザメ類の歯。地層の特性上、徳島県では中生代の化石が多く出土しています。
コダイアマモ。かつては海草アマモ類の化石と考えられていましたが、実は生物の巣穴に詰め込まれた排泄物の化石です(巣穴を作った生き物は不明)

白亜紀の海洋生物化石に恵まれた地層と聞けば、誰もが期待するのはアンモナイト!
四国はまさに雄大なアンモナイト産地であり、プロアマ問わず大勢の方々が多数の化石を堀り当てています。展示エリアに立ち並ぶ大小様々なアンモナイトたちを見ていると、彼らがいかに成功した種族だったのかがわかります。素晴らしい四国の財産、筆者はじっくりと見て学ばさせていただきました。

白亜紀の地層に恵まれた徳島県は、アンモナイトの化石も豊富! このストリツカイアは上勝町より出土しました。
アンモナイト類の顎の化石。鳥のクチバシのように強力で、獲物を噛み裂くことができます。
アンモナイトの化石に触れる体験展示。殻の構造をイメージしながらタッチしてみてください。
香川県にて出土したパキディスカス。これほど巨大なアンモナイトが四国に棲んでいたのです。

展示ホール「地質時代の徳島」で目を引くのは、雄々しいナウマンゾウやヤベオオツノジカの全身骨格です。実は、四国では新生代の大型生物化石が続々と発見されています。地層や洞窟堆積物からの産出はもちろん、なんと瀬戸内海の海底からもゾウ類の化石が見つかっています
海にも陸にも貴重な化石を有する四国は、古生物学にとって本当に魅惑的な地方です。標本を見て学んでいると、ナウマンゾウとヤベオオツノジカの在りし日の姿が目に浮かんできます。

展示エリア「地質時代の徳島」の中央部。新生代の勇ましい動物たちが佇んでいます。
ナウマンゾウ。とても有名な、日本における新生代更新世の代表的な動物です。
鳴門海峡の底から回収されたナウマンゾウの歯。漁船の底曳き漁によって、偶然発見されました。
ヤベオオツノジカ。日本固有の大型シカ類です。

大型哺乳類以外にも、四国では新生代の化石がざくざく見つかっています。それぞれの標本の研究が、謎に包まれていた古環境の解明につながっています。キャプションを含めて深く学習すれば、古生物学への関心はさらに倍増するでしょう。

キヌガサガイの化石標本と現生種の比較解説。古生物の実像解明には、現代の生物を参考にすることが必要なのです。
ソコダラなど深海魚の耳石の化石。耳石とは魚の聴覚や平衡感覚を司る器官です。
美馬市で採集されたヒメバラモミの球果化石。本種が生きていた更新世の四国は、寒い気候だったと思われます。
産出時の状況を写真資料で解説。化石の魅力が来館者に伝わってきます。

神秘あふれる徳島の大自然が育む生命

壮大な海と森を擁する徳島県は、生命の宝庫と呼べる素晴らしい探究フィールドです。魅力的な生き物たちの棲家が至るところにあり、生物観察には最上の環境と言えると思います。大自然の懐に飛び込む前に、本館の観覧で詳しく予習しておきたいですね。

展示エリア「徳島の自然とくらし」。海と陸に広がる徳島の生命についての学習スタートです。
徳島の山林に暮らす動植物の展示。剥製標本と模型の組み合わせが見事です。
ブナ林に棲むクワガタ類の昆虫標本。実は徳島の山林は人為的な2次林が多く、自然林はごく一部です。
爬虫類・両生類の剥製標本展示も充実。シコクハコネサンショウウオは、高地や冷涼地を好む四国産の両生類です。

現地自然の学習をしていて楽しみなのは、当地の固有種との出会いです。四国にもたくさんの固有生物がいて、みんなとても美しく興味深い種類です。生き物に詳しい方は、他の地方の近縁種との差異について考察してみてください。

固有種アワオサムシ。名前に「阿波あわ」を冠しているのが、いかにも徳島の昆虫といった感じですね。
アワマイマイ。阿南市で発見された日本最大級のカタツムリです
マニア心をくすぐるシコクトゲオトンボ。四国だけに生息する特産種です!

徳島県の水辺の環境は、とても複雑で独自性に富んでいます。「日本3大暴れ川」として名高い吉野川をはじめ、たくさんの河川が県内を流れています。
川ひとつひとつで様相が異なり、それぞれに独特な生態系があります。不思議な徳島の水域環境を、本展示でじっくりと覗いてみましょう。

川の生き物たちの展示コーナー。鮮やかな背景の区画に、水棲生物や水鳥の標本がズラリと立ち並んでいます。
模型と剥製を使い分け、各流域ごとに棲む生物を解説。上流域にはオオサンショウウオが生息していて、河川生態系の上位に君臨しています。
吉野川の干潟をジオラマで再現。川と海の影響を受ける汽水域なので、トビハゼやシオマネキなどのユニークな生き物たちが棲んでいます。
水辺付近に棲む昆虫たちの標本も多数展示。このオオヒョウタンゴミムシは、河口付近の浜辺で見られます。
那賀川の渓流沿いの植物を、モニターのデジタル画像にて解説。様々な手法を用いることで、全ての区画の展示がとても洗練されていると思います。

川がつながるのは、無限なる大海原!
徳島県は大平洋・紀伊水道・播磨灘という3つの海域に面しています。それぞれの海に特性があり、その違いが生物相にも反映されています。豊かな海洋環境に生きる多様な生命について、多数の標本展示とキャプションで細かく学ぶことができます。

徳島県の海洋生物展示。魚たちの剥製は極めて美しく、特にメカジキは超イケメンです!
県南の海底を再現したジオラマ。アオウミガメがおいしそうに海藻を食べています。
海洋に棲む昆虫・ウミアメンボ類の展示。実物標本はルーペで拡大して詳しく見れます。
アンモナイトそっくりなトグロコウイカの殻。とても珍しい生き物であり、発見例は多くありませんが、徳島県の海陽町に漂着したことがあります。

太古と現代の生命が博物館を大行進!

ここからは四国を飛び出して、壮大な地球の歴史の中へ身を投じましょう。次なる展示エリア「地球と生命の歴史」では、あらゆる時代の古生物がオールスターで登場します。
初めに言っておきますが、本館の古生物展示はものすごくハイクオリティであり、化石マニアなら絶対に見ておくべきだと断言します。出だしから古生物ファンのハートを掴みにきており、カンブリア紀の生物たちが豪華なラインナップで登場。カンブリアンモンスターが大好きなマニアなら、我を忘れて感激するほど濃密な展示です!

展示エリア「地球と生命の歴史」。最強のティラノサウルスが雄々しく佇む古生物たちの空間です。
あらゆる時代の古生物を網羅的に展示。なんと、本館ではカンブリア紀の動物群の標本をこれほどたくさん見ることができます!
フォルティフォルセプス。カンブリア紀前期に生きていた初期の節足動物です。
アノマロカリス類アンプレクトベルアの模型。これほどマニアックな古生物の造形が拝めるとは、徳島県立博物館、最高すぎます!
最古の魚類ミクロミンギアの拡大模型。他にも古生物の復元模型のオンパレードであり、ガチな古生物ファンが涙を流して喜ぶ展示内容です。

カンブリア紀を過ぎた後、海洋生物はさらなる進化を遂げていきます。三葉虫をはじめ、多種多様な生命が海の中で咲き乱れます。留まることのなく躍進する生き物たちの力強さが、エネルギッシュな化石標本から来館者の心へと響いてきます。

三葉虫の化石にタッチできる体験展示。実はサソリやクモに近い三葉虫。化石になった彼らの体は、どんな触り心地なのでしょうか?
三葉虫が這った跡の化石。こういった生痕化石せいこんかせきは、古生物の行動を示す重要な証拠となります。
キャプションと標本を併用して、二枚貝類の起源について解説。カンブリア紀以降、我々のよく知る生き物たちが爆発的に進化していきます。

生命は海から陸へ上がり、多様に進化していきます。中生代に差しかかると進化の大イベントが起こり、哺乳類への道を目指す者と、恐竜への道を目指す者が現れます。
哺乳類の祖先と恐竜の競合。この戦いに勝ったのは恐竜です。恐竜たちはいかにして栄え、地球の覇者となったのか、展示と共に進化のドラマを追っていきましょう。

三畳紀の単弓類エクサエレトドンの生体復元模型。ネズミとトカゲが合体したような姿に見えますが、私たち哺乳類の祖先に近い動物です
同じく単弓類アクラトフォラスの頭骨。どっしりした植物食の大型動物でした。
最古級の恐竜ヘレラサウルス。強力な肉食動物であり、彼ら恐竜はたちまち地球の覇者となりました。
首の長い植物食恐竜プラテオサウルスの頭部。全長10 mに達する竜脚形類であり、三畳紀後半以降、恐竜たちはどんどん大型化していきます。

中生代は恐竜の大王朝。圧倒的な強さを誇る竜たちの時代が白亜紀末期まで続きます。

とにかく強い、大きい、かっこいい!
誰もが憧れる恐竜たちの勇姿をとことん拝んでください。学術的価値を超えた、恐竜たちの計り知れない魅力が来館者に伝わってきます。

巨大な恐竜の王ティラノサウルス。勝てる気がしません(笑)。
竜脚類の恐竜ディプロドクスの前足。足1本だけで、これほど巨大なのです!
植物食恐竜ネウケンサウルス。椎骨の中は空洞になっており、頑丈で軽い骨を備えていました。
シノサウロプテリクスの復元模型。羽毛を獲得した肉食恐竜の中からは、鳥への進化の道を歩む種類が出現しました。
海洋爬虫類ティロサウルスの頭骨(恐竜ではありません)。陸上で恐竜が栄えていた頃、海を支配していたのは大型爬虫類なのです。

白亜紀末期の環境激変で恐竜が衰退すると、いよいよ哺乳類の時代が到来します。空白となった陸上生態系の様々な地位に、哺乳類たちは多様化しながら参入していきます。
百花繚乱の獣たちの世界。先史時代の哺乳類たちがどのような姿をしていたのか、骨格標本と模型によって明瞭に理解できます。

新生代の大型哺乳類メガテリウム。アメリカ大陸に棲んでいたオオナマケモノの一種です。
パノクツスの生体復元模型。カメのように見えますが、アルマジロに近い哺乳類です。
長大な犬歯を装備するスミロドン。「サーベルタイガー」の異名で知られるハンターです。
南アメリカの古代哺乳類マクラウケニアの復元模型。ラクダに似ていますが、滑距類というまったく別のグループの種類です

新生代で構築された哺乳類王朝は、現代の生態系へとつながっていきます。ここからは、壮麗なる現生動植物の展示「生物の多様性」エリアに突入です。
こちらの区画もすさまじいスケールと濃密な展示内容を誇っており、1つ1つの標本や資料に深い味わいがあります。ぜひとも、観覧時間の許す限りたっぷりと見ていただきたいと思います。

現生動植物の展示区画「生物の多様性」。生態学の詳細な展示がたくさんあり、本記事では到底全て紹介しきれないので、ぜひ現地にて隅々まで学んでください。
多種多様な剥製・骨格標本のオンパレード。地球生命の壮大な繁栄には、改めて驚かされます。
陸海問わず、地球の至るところから動植物が大集結。まさに生命の大共演です。

各種生物の展示解説はどれも濃密であり、生物マニアは各コーナーにどっぷり見入ってしまいます。昆虫をはじめ節足動物の展示も超素晴らしく、膨大な標本と明瞭な解説スタイルによって、ぐいぐい引き込まれます。きっと必ず、推しの生き物が見つかることでしょう。

壁面に並ぶ色鮮やかな昆虫標本。魅力的な子が多すぎて、誰をピックアップしようか迷います(笑)。
筆者のお気に入り、ボクサーカマキリ。カマの形態がとても特徴的です。
昆虫以外の節足動物の標本展示も超充実。ヒヨケムシとタイワンサソリモドキのコンビは、マニアの心に強く刺さりますね!
甲殻類の標本には、大型種もたくさんいます。アメリカンロブスターの風格と重量感は圧倒的。
フジツボ類のライフサイクルについてイラストで解説。実は、フジツボはエビやカニと同じ甲殻類の仲間です

軟体動物の展示も圧巻。膨大な標本数に加え、彼らの不思議な生態についての解説資料もあります。分類群の標本を網羅的に観覧しながら、細かい知識も身につけられるとは、とっても贅沢な展示内容で嬉しすぎます!

貝類の標本数も超膨大。改めて思いますが、ガチな生物マニアが本館を巡るならば、観覧時間をたくさん確保しておかなくてはなりません。
陸棲貝類の歩行に関するイラスト資料。カタツムリたちは、歩くと同時に粘液を分泌しているのです。
オウムガイの液浸標本。タコやイカと同じ頭足類です。

植物たちの風変わりな能力の解説も必見です。実は、この世には葉緑素を持たず光合成しない植物がいます。それはラフレシアをはじめとする寄生植物です。徳島県においても、寄生植物ヤッコソウが生息しています。
不思議な植物の特殊能力。人間の常識では計れない生命の可能性と神秘を、本展示から学んでください。

寄生植物ヤッコソウの模型。光合成能力を持たず、他の植物にくっついて養分をもらっています。徳島県が分布の北限であり、自生地は天然記念物に指定されています。
同じく光合成しない寄生植物ラフレシアの模型。葉を持たず、巨大な花を咲かせます。
フタバガキ類の種子。羽がついているので、風を受けるとプロペラのごとく回り、地面にそっと降り立つことができます。

本エリアの最後には、来館者への強いメッセージ性あふれる展示が待っています。絶滅動物と外来種の問題は、今を生きる私たちが考えなくてはならない重要トピックです。
どんな問題が起きていて、我々には何ができるのか。対策を成すには、正しい知識の学習が必要不可欠です。本区画の展示から学習したことは、必ずや環境問題と向き合う際の強い武器となるはずです。

絶滅問題、外来種問題についての区画。極めてメッセージ性の強い重要な展示です。
絶滅が危惧されている昆虫たち。彼らを守るためには、研究者と一般の人々が力を合わせて問題に取り組まなくてはなりません
教訓と発見に満ちたキャプション。決して外来種は悪者ではなく、生息域の外に連れてきた人間が全ての問題の根源なのです。
特定外来生物クビアカツヤカミキリ。サクラなどのバラ科植物を食べるカミキリムシなので、サクラを尊ぶ日本人には大きな脅威です。

「生物の多様性」エリアを抜けると、ゆったりと学習できるホール「コミュニケーションゾーン」へと出ます。すさまじいスケールの展示ラッシュの休憩も兼ねて、リラックスしながら自然科学の知識に触れていきましょう。
特に、壁側の棚は知識の宝庫。いろいろなタイプの標本、最先端研究の解説パネルが詰まっていて、楽しみながらたくさん学べます。穏やかな空間で大好きな自然科学を学習できるとは、誠に幸せの極みです。

コミュニケーションゾーン。休憩用の椅子とテーブルがありますので、小休止を入れて、これまでの展示を振り返ってみましょう。
ホールの端に設置されているパラプゾシアの複製。世界最大級のアンモナイトであり、生きている頃は殻の直径が3 mクラスになったかもしれません。
壁側の棚には、様々なタイプの自然科学展示がいっぱい! お店の棚を見るように、リラックスしながら勉強しましょう。
ここでは他の地域の自然科学情報もゲットできます。福井県で多数発見されているワニ化石について、とてもわかりやすく学べました。
ムネアカナルコグモの標本と解説キャプション。粘着性の高い糸で釣りをするクモです

徳島県立博物館、心より感服いたしました。筆者は全ての展示に心を奪われ、終始見入ってしまいました。
徳島県固有の自然展示も、地球規模の大スケール展示も、すさまじく濃密で見ごたえ抜群です。恐竜好きな子供だけでなく、ガチのマニアですら虜にする本館の魅力は底が知れません。予想をはるかに超えるハイクオリティな総合博物館、全ての生物好きが絶対訪れるべき学術施設だと断言します!

本館では、徳島県の文化や歴史に関する展示もあります。現地の魅力をとことん知って、どんどん徳島を好きになりましょう。

徳島県立博物館 総合レビュー

所在地:徳島市八万町向寺山1(文化の森総合公園内)

強み:豊かな化石産地を有する徳島県ならではの専門的かつ濃密な古生物展示、各種標本と模型をくまなく活用した視覚的に理解しやすい展示内容、あらゆる動物に関して深く掘り下げられた標本展示と生態学的解説

アクセス面:筆者のオススメは車です。平成27年に徳島南環状道路が開通したので、国道55号線バイパス方面からはスムーズに博物館へたどり着けます。文化の森総合公園には大きな無料駐車場があり、なおさらマイカー・レンタカー利用者にはリーズナブルです。なお、徳島県の学術と文化の拠点ですので、路線バスのアクセス環境も良好です。JR徳島駅前から文化の森行きのバスが出ているのも、旅行者にとっては嬉しいところですね。

徳島県の自然環境と古生物学を軸に、地球規模の大スケール展示を繰り広げる総合博物館。あらゆる動植物の展示解説において、豊富な資料と濃密なキャプションが配されていて、すさまじい量の生態学・古生物学の知識を一気に吸収することができます。地方博物館の枠をはるかに超えたスーパー学術施設であり、全ての生物マニアに訪れてほしいと筆者は心から願います!
さらに、展示観覧を通して、徳島県の驚異的かつ独特な自然環境への関心が強く湧いてきます。徳島県ーーそして四国は、他では見られない独自の環境と豊富な固有種を擁しており、現地生態系のメカニズムを本館で仔細に学べます。
恐竜時代の地層を有し、大地に生命あふれる徳島県。まさしく、生物好き・化石好きにとって究極の探検フィールドです。徳島県立博物館で真理を学んだら、ぜひとも大自然に懐に飛び込んでみましょう!

三館棟1階にはレストランがあります。博物館の観覧前後でランチや軽食が味わえますので、長時間観覧する生物マニアにはとても嬉しいですね!

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