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全国水族館の旅③八戸市水産科学館マリエント

東北には、おいしい海の幸があるーーすなわち海が豊かだということです。それゆえ水族館もとっても楽しく勉強になる名所ばかりです。今回は、八戸市の海沿いにあるマリエントを紹介します。


ウミネコの港街に立つ絆の水族館

青森県八戸市には、国内で唯一、海鳥ウミネコの繁殖の様子を観察できるスポットがあります。それが国の天然記念物に指定されている蕪島であり、すぐ近くに水産科学館マリエントが立っています。

JR八戸駅でも蕪島がPRされていました。青森県の誇りですね。
JR八戸線で鮫駅へ。駅の表札にもウミネコがあしらわれています。

鮫駅から向かうと、水族館の前に必ず蕪島付近を通ることになりますので、ぜひ観光しましょう。なお、ウミネコの繁殖と乱舞を見たい方は、3月~7月頃に訪れるのがいいと思います。基本的に7月下旬以降になるとウミネコは別の地方へ旅立ってしまいます

もちろん、水族館はいつのシーズンでも楽しめますし、蕪嶋神社の手前にはウミネコの生態を学べる公共施設があります。秋冬に来ても、存分に八戸の海を満喫できますね!

神社の前の休憩所では、ウミネコの生態や蕪島について学べます。小さな博物館みたいで素敵です。

蕪島の上空を乱舞するウミネコの大群が見たい方は、下記リンクをチェックしてください。筆者が行った時期ではすでに大半のウミネコが旅立っており、船の上に留まっている数羽を見れただけでした(泣)。

ウミネコの姿を堪能し、テンションを上げたら八戸水産科学館マリエントへ向かいましょう。蕪島から海岸線を数分歩けば、水族館はすぐそこです。

海岸線沿いにある水族館。展望台とレストランを備えています。

遊び心と教育が充実! 八戸の海を楽しく学ぼう!!

生き物たちへの愛であふれる、わかりやすく暖かい展示

館内の水族展示エリアでは、可愛らしい魚たちを中心に、鮮やかな生き物がたくさんいます。フロアのスペースに合わせて適切に水槽が配置してあり、来館者にとって回りやすい展示設計となっています。
個人的に印象深かったのは、手書きのキャプションがあることです。人の手で書いた暖かみが感じられ、「生き物大好き!」というスタッフさんの気持ちが伝わってきます。

地元・八戸の魚たち。手書きのキャプションだからこそ、子供たちにも馴染みやすくてわかりやすく見えますね。
中央の大型水槽では、アオウミガメが展示されています。本当にウミガメの可愛さには癒やされます。

そして蕪島とは目と鼻の先ということで、もちろんウミネコに関する解説資料も充実。こちら「ウミネコアイランド」は巨大な巣をイメージした展示ゾーンとなっており、模型やイラストでわかりやすくウミネコの季節的な生態を学べます。

ウミネコアイランド。多くの立体物やイラストが配されており、とてもわかりやすい展示の工夫だと思います。
ヒナたちの生き方を可愛らしいイラストで解説。ただ、実際の生存競争はかなり厳しく、親以外の成鳥から攻撃されて、命を落とすヒナもたくさんいます。

生き物たちの生体展示や解説資料を総括すると、筆者の中では何よりもまず「可愛い!」というイメージが先行してきます。ネズミフグはもちらん、神秘的なフォルムのウィーディーシードラゴンにも見とれてしまいました。

ネズミフグ。見ての通り、ハリセンボンの一種です。好奇心旺盛らしく(もしくは餌をくれると思っているのか)、筆者に見つめ返してくれました。
ヨウジウオの一種、ウィーディーシードラゴン。死角にいたので探すのに苦労しました(笑)。神々しい姿は、いかにもシードラゴン!

また、ウミネコの他にも地域愛を垣間見れる展示があり、青森県産のサーモンが印象的でした。地方水族館に来ると、当地の水産業について知ることができますね。

青森県の清らかな水で育てられたサーモン。思わず見惚れる美しさです。
カレイの仲間、マツカワ。こちらも青森県で養殖されているおいしい魚です。

水族館と「ちきゅう」が結んだ絆

本館には、特殊な探査船「ちきゅう」の地球深部探査ついて学べるエリア『はちのへ「ちきゅう」情報館』があります。「ちきゅう」とは海洋研究開発機構JAMSTECが保有する科学調査船であり、世界最高レベルの海底下掘削技術を駆使して、多くの海域で科学的成果を上げ続けてきた希望の船です。

地球深部探査船「ちきゅう」の模型。本物は全長210 mに及びます。本館では、タブレット機器による船内のバーチャル見学体験もできます。
海底の下を掘り進める「ちきゅう」の掘削技術の解説。地球深部という未知のフロンティアへの挑戦、すごくワクワクします!

八戸市と「ちきゅう」とのつながりは深く、これまで「ちきゅう」は何度も八戸市に入港し、一般への船体内部の公開イベントなどを実施しています。

そして、2011年3月11日、八戸市の小学生が「ちきゅう」船内を見学していた最中、東日本大震災が発生しました。
ご存知の通り、青森県にも猛烈な津波が押し寄せました。港の中は巨大な洗濯機のごとく大渦を巻いていましたが、「ちきゅう」の乗組員は高い操船技術を駆使して、船体の損傷を最小限に抑えることに成功。そして、乗っていた子供たち48名全員を無事に守りきったのです。

被災当時の船内は想像もつかない恐怖に襲われたと思いますが、乗組員が子供たちと一緒に歌ったりして、不安を和らげたそうです。

「ちきゅう」と子供たちの物語は絵本にもなっています。人の絆の強さと尊さを感じられますので、ぜひ読んでいただきたいと思います。

水族館では、『マリエント「ちきゅう」たんけんクラブ』という会を発足しています。探査船「ちきゅう」の名を持つ通り、入会した子供たちは海洋や地球科学の探求を目的に活動し、貴重な学術体験を通して地球について学んでいます。
八戸市と「ちきゅう」の絆は、たくさんの子供たちを育てているのです。

同エリアには、深海についての展示もあります。深い海の中にある熱水の泉ーー熱水噴出孔(海水がマグマの熱に触れて熱水となって噴き出す場所)で得られた甲殻類や貝類は貴重な標本です。地球深部には、まだまだ知らない生き物がいるんだと実感させられます。

ユノハナガニの液浸標本。深海の熱水噴出孔の周辺にだけ生息する甲殻類です。
ヘイトウシンカイヒバリガイの殻の標本。メタンを取り込む微生物がエラの中にいて、その微生物から栄養をもらって生きています。極限環境の生物は、生態も不思議なものばかりです。

水族館での学習を楽しんだら、展望レストランでランチタイムです。八戸の海岸線を眺めながら食べるご飯は、まさに贅沢の極み。筆者のオススメはヒラメ漬丼です。
ヒラメは青森県の魚に制定されていて、青森県の天然ヒラメ漁獲量は全国上位クラス! これは食べるしかないですね(笑)。

館内にある展望レストランのメニュー、ヒラメ漬丼。コリコリしておいしいです! 青森県の魚ということもあり、ヒラメの料理を提供しているお店は他にもたくさんあります。

八戸市水産科学館マリエント 総合レビュー

所在地:青森県八戸市鮫町字下松苗場14-33

強み:来館者の目線を考えて工夫された展示方法、「ちきゅう」との長い交流によって培った地球科学に関する学術情報量の多さ、天然記念物である蕪島との地域的連携

アクセス面:JR八戸線の鮫駅より徒歩15~20分ほど。港街の海沿いを歩きつつ、蕪島を観光しながら水族館へ行けるので、体感的にはさほど長く感じないと思います。公共交通機関を使用する場合、遊覧バス「うみねこ号」がオススメです。なお、帰路につきましてですが、JR鮫駅から出る電車の本数は少ないので時刻表を必ずチェックしましょう

ウミネコの生態の丁寧な展示解説や水族展示の手書きキャプションなど、来館者にとって見やすい工夫が多く、一つ一つの展示にスタッフさんの愛を感じます。八戸の海に棲む魚たちや養殖魚を紹介することで、地域の強いPRにもなっています。地球探査の学術的意義と調査技術について学べるのも本館の特色の一つであり、探査船「ちきゅう」とのつながりが深い八戸市だからこそできる展示だと思います。
蕪島と合わせてとっても楽しめる水族館ですが、月によっては特定の期間だけ休館になることがあるため、必ず来館前にホームページ上で休館日をチェックしましょう。他の水族館についても言えることですので、ぜひ心に留めておいていただきたいと思います。

JR八戸線の車両にもウミネコのマークがあります。蕪島とマリエントは、まさに沿線の主要な観光地なのです。

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