全国水族館の旅【32】アクアテラス錦ケ丘
飼育技術や水質浄化技術の発達した現代では、水源から離れた陸地の至るところに水族館があります。それが高じて、より身近な飼育展示施設となり、今や商業施設の中にも水族館が設けられています。
宮城県には小高い丘の上の水族館があると聞いて、ワクワクしながら出かけてみました。ショッピングモールの奥にはどのような空間が広がっているのか、とても楽しみです。
内陸地のショッピングモールの中に水族館?
アクアテラス錦ケ丘は、仙台市青葉区の商業施設「錦ケ丘ヒルサイドモール」の中にあります。現地の公共交通機関を楽しみたい筆者は鉄道にするか路線バスにするか悩みましたが、その場の気分で電車を選択(笑)。
JR仙台駅から仙山線に乗って、電車移動すること約30分。ヒルサイドモールの最寄り駅であるJR愛子駅に到着です。街歩きも兼ねて、駅から徒歩で行くことにしました。
勾配の緩い坂道を20分ほど歩き、錦ケ丘ヒルサイドモールに到着。その外観はお城のようであり、とても趣深いです。施設内には多岐にわたる業種のお店が並んでいて、さらに英会話教室や学習塾も入っており、地域の暮らしを支える重要な場所となっています。
お目当ての水族館・アクアテラス錦ケ丘は施設のアクア棟の2階にあります。入口からすでに楽しい雰囲気があふれ出しており、展示への期待が爆発寸前まで高まります。商業施設の中にある魅惑のアクアリウム、どんな世界が広がっているのか気になります。
不思議な生命との出会いを導く新感覚アクアリウム
魅力的な生体と工夫を凝らした展示スタイル
展示エリアに入って来館者が最初に目にするのは、和の雰囲気漂うメダカたちの展示です。多くの観賞魚と同じように、メダカにも様々な品種が生み出されています。お目利きの愛好家の人々にとっては、たまらなく興味深い展示だと思います。
個々の展示からは「楽しんで観覧してもらいたい」という本館の強い想いを受け取れます。魚との触れ合いを楽しめるタッチプールに、芸術の域に達する魅惑の緑豊かなアクアリウム。生き物たちが有するヒーリング効果に、身も心も癒されます。
ここからはジャングルゾーン。テンションを上げて進みたいと思います。水族館ファン・熱帯魚ファンなら誰もが心踊る空間であり、力強い淡水のスターたちの共演に感激必至です。展示の魅力に引き込まれ、別世界に迷い混んだかのような心地になります。
本館には、来館者を楽しませる工夫がいっぱい! その1つが、多くの展示水槽に貼られている生物紹介カードです。
カードには展示生物の情報が簡潔にまとめられていて、生き物の分類や特徴を素早く理解できます。大人気のポケモンカード風のデザインですので、多くの人々が強く関心をそそられるでしょう。
自然界のジャングルでは、熱帯魚だけでなく多種多様な爬虫類たちも暮らしています。ジャングルゾーンの隣には爬虫類ゾーンが設けられており、美しさと可愛いさを併せ持つ魅力的なアイドルたちが続々登場します。筆者をはじめ、生物マニアは爬虫類の生体展示が大好物です(笑)。
ユニークな展示はまだまだ続きます。個人的に度肝を抜かれた工夫は、マレージャイアントスコーピオンの特殊な展示です。
飼育ケース備えつけのライトを当ててみると、サソリの体が青白く発光します。サソリの体に含まれる物質の特性を利用した素晴らしい展示手法であり、生き物の不思議な秘密に触れられて、大人も子供も好奇心を強く刺激されます。
水槽の形状や配置の工夫も本館の強みの1つです。水族館にはエンターテインメント性を求める人も多く、水槽の見せ方は大きなアピールポイントになると思います。展示に引きつけられた瞬間に、来館者はスタッフさんが仕掛けた技の虜になっているのです。
生き物たちが織り成す美のファンタジー空間
ジャングルゾーンを抜けると、世界の全てが一変! 照明の配色も館内の雰囲気も妖しさが増し、摩訶不思議なファンタジーゾーンへと突入します。
1つ1つの水族展示がアートのごとく煌めいており、近代美術館の中にいるような心地になります。ムード満点の展示空間ですので、カップルでの来館にもオススメですね。
ファンタジーゾーンを彩る魚たちは、まさに百花繚乱。水槽の神秘的な演出と、よくマッチしています。SNS映え抜群のミステリアスな空間にて、多種多様な魚たちをたくさん撮りましょう。
ミステリアスな生き物が次々と現れる中で、筆者の推しはキュートか節足動物たち。大好きなオオグソクムシに加えて、カブトガニの赤ちゃんにも出会えます。1つ1つの動きを観察してみると新たな発見があり、きっと彼らを大好きになると思います。
長い神秘の回廊を抜けると、広いホール空間へと出ます。雄大な池では大勢のニシキゴイが飼育されており、屏風絵に描かれたワンシーンのごとく、優雅に泳ぎ回っています。
本エリアでは、コイたちへの餌やりを体験することができます。高貴なニシキゴイも、おいしいご飯を前にすると食欲全開で突撃してきます(笑)。
同エリアには、海水魚たちの展示もあります。かっこいい子、可愛い子、きれいな子、個性あふれる魚たちが自慢の姿を思いきり見せてくれます。
筆者の推しはクモウツボ。強そうな見た目でありながら、実はおとなしいというギャップに萌えます。
アクアテラス錦ケ丘は宮城県の水族館ですが、なんと沖縄の生き物たちの研究・展示室があります。本館の特別エリア「沖縄生体研究室」では、沖縄諸島に生息する様々な生命と出会えます。固有種の数多く飼育展示されており、珍しい生き物たちの姿に来館者は目を奪われることでしょう。
琉球の大自然の中で、筆者が特に出会いたい生き物は固有の爬虫類・両生類です。その生態や姿はとても興味深く、研究者やマニアの人々が熱中するのは至極当然の道理。彼らを観察していると、沖縄の山林や河川への繰り出してみたくなりますね。
エンタメMAXの本館の展示も、いよいよフィナーレです。最後のエリアでは、涼しげな水槽の中で彩り豊かな金魚たちが待っています。
可愛いランチュウが見られて筆者は大満足! 金魚は形態やカラーリングのバリエーションが豊富であり、きっと来館者の好みに合った推しの子が見つかると思います。
別世界に迷い込んだかのような新鮮な観覧体験ができるアクアテラス錦ケ丘。本館のエンターテインメント性は極めて洗練されており、家族連れの多いショッピングモールには最適な展示施設と言えます。
生命の美しさに触れることで、生命の尊さを感じ、それが環境保全へつながっていくのだと思います。アクアテラス錦ケ丘での観覧は、生き物への愛情を呼び起こす素敵な経験となるでしょう。
アクアテラス錦ケ丘 総合レビュー
所在地:宮城県仙台市青葉区錦ケ丘1-3-1
強み:展示生物の美しさを引き出す照明配色や水槽配置の工夫、多種多様な生物の魅力と空間演出の相乗効果で生まれるファンタスティックな空気感、カードゲーム風の生物紹介や爬虫類の社員証明書といった展示各所にあふれる「遊び心」
アクセス面:錦ケ丘ヒルサイドモールへの主なアクセス手段として、仙台駅前のバス停から路線バスが出ています。またJR仙山線の愛子駅にてタクシーに乗れば、駅から5分程度で到着します(行こうと思えば徒歩でも行けますが20分以上はかかると思ってください)。ヒルサイドモールには大きな駐車場がありますので、東北地方にお住まいの方、レンタカーを使用される方は、そのまま車で向かいましょう。
生物マニアはもちろん、家族連れやカップルも含めて誰もがワクワクしながら観覧できる魅惑のアクアリウムです。極限まで創意工夫が施された水槽の配置や展示の見せ方など、多彩な技で来館者を終始楽しませてくれます。カードゲーム風の生き物紹介、爬虫類の社員証明書といった遊び心満載のアイディアも素晴らしいです。
生き物とスタッフさんが魅せる極上のイリュージョン。美術館的な要素を取り入れ、なおかつ水族館の強みを活かしたエンターテインメント性抜群の飼育展示スタイルとなっています。本館の観覧を通して、水族館の展示には無限の可能性があるのだと感じました。
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