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【ショートショート】ブーメラン発言道 帰郷編

「あれ?こんなところに道が出来たんですか?」
「うん。久しぶりだから知らないよね。便利になったよ」
 5年ぶりに帰郷した後輩を駅までマイカーで迎えに行き、自宅に向かう途中だった。
「Y先生の口利きでね。ここ3年で一気に出来上がったんだよ」
「Y先生って、国会で交通省とゼネコンの癒着を追及して有名になったんですよね」
「そうなんだけどね…その時大臣に言い放った『そんな金があるなら地元に還元されたらどうですか?』っていう発言がそのままブーメランになっちゃったんだ…」
「あ!聞きました。実はY先生もこの町の土建屋と癒着してたんですよね!」
「そうそう。それで地元の支持者から突き上げを食ってね。面目を保つために、この道路を造ったってわけ」
「代議士のセンセイも大変ですねえ」
「まったくね。他にも君がいない間いろいろあってね…」
 そんな地元ネタで話し込んでいると、後輩が「あれ?」と声をあげた。
「駅の方に戻って来ちゃいましたね?」
「ああ!またやった!この道路、環状線になっててね。ぼうっとしてると降りどころを間違えてすぐ戻ってきちゃうんだ…不思議だよなあ…」
「とことん、ブーメランな道なんですねえ…」
 カーラジオからは、我々をあざ笑うかのように西城秀樹の歌が聞こえてきた。


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たったこれだけでも文字数オーバーの524文字…
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