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2024年 5月 短歌まとめ

連作

プールの水ぜんぶ抜く

忙しない日々のすべてが疎ましく 五月が一年中続いてる

おじさんの鶴のひと声のせいです 全部おじさんが悪いんです

単純な性格なのよわたしって 泣きたい時は我慢しないの

水の子が旅をしていてわたしまだプール開きの気配がこわい

カラオケで抱きしめていた歌声を溶けた氷をきみのからだを

ラミー

あたしにはビリー・ホリデイがあるから いいのじゅうぶん幸せよ今

恋愛の仕方を忘れたような気がしたような気がしたような気が……

ゲレンデはあたしが連れてく八の字でブレーキ踏んでいっしょに転ぼ

ラム酒からチョコの香りがしないよに あたしとあなたは別々のそれ

「独り身」が褒め言葉にも聞こえるの エジソンの手には豆電球

平日鈍行

嫌いだと思い知ることの毎日で瞼のスクリーンいつも雨

坊ちゃんを見れば見るほど上の句にちはやぶるってつけたくなるの

板の間で「もう疲れたよパトラッシュ」と同じかたちになる水曜日

じりじりと心がダメになっていく週末にまだ手が届かない

生き方をぜんぶ忘れて港町 ジャズ喫茶まで駆ける花金

一方その頃わたしは

ストーリー「ネモフィラネモフィラネモフィラネモフィラ結婚ネモフィラ結婚」

砂時計さかさまにして負荷逆の昨日と今日をあべこべにする

左手のハイボールにも伝う音 満ち足りているソウルトレーン

これを読むあなたにいのるの新情報:足のかたちが 父に似ている

社員用牛乳が乳飲料にすり替えられててめちゃくちゃまずい

連作でないもの

父母の両腕に眠る星の子が 立夏を告げて 風、ぴゅうと吹く

...

画面越し ノンフィクションに目をつぶるだけじゃ虐殺が終わらなくて

見渡せば いのちいのちいのちいのち こんなことがあってたまるかよ

ばあちゃんは防空壕で泣く少女 わたしも何も諦めないよ

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