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私がまだパンだった頃

肘を直角に曲げて腕を垂直にすると、うっすらとした線が二つ、等間隔で出てくる。

赤ちゃんのむちっとした腕を「ちぎりパン」と称して愛でることがあるが、おそらくその名残りだろう。乳児線という呼び方もあるらしい。なぜこれが残るのか、残念ながらインターネットに信用できる情報はなかった。

今では信じられないくらいに小さかった頃、「いのるはどうやって生まれてきたが?」と母に質問した。
母は『お母さんが小麦粉をいっしょうけんめいこねてこねて、ふわふわのいのるになったがよ』と言った。
さすがにそれはないだろう、だってお母さんのお腹の中に私がいたのだから……。当時からそう思ってたけれど、この話が好きだ。

アンパンマンと同じだから。何となく甘くておいしそうだから。創作性に母らしさを感じるから。

私の腕に乳児線があるのは、母が私を生み出したからなんだろう。


腕の二本の線を見れば思い出す
私がまだパンだった頃

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