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病院パンフレットの作り方~在宅医療クリニックのパンフレット制作でやったこと・考えたこと~

こんにちは! さつきホームクリニック広報の藤井です。
2020年を迎えたこのタイミングで、当院の新しいパンフレットが完成しました。

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182mm×182mmの正方形で8ページ綴り。表紙は全面イラストで、パンフレットの中にもふんだんにイラストを使っています。

とにかくこだわりがいっぱい(その分試行錯誤もいっぱい)のパンフレットということで、せっかくなのでその制作過程をまとめておこうかと思います。

はじめに

パンフレット等を制作するにあたり、どこまでを中のスタッフがやってどこからを外注するかは、予算やスタッフのスキル、用意できるツール、納期などによってケースバイケースかと思います。

今回、制作にあたっての目安はこんな感じ。

・予算→できる限り抑えられるにこしたことはない
・納期→できる限り早くできるにこしたことはない
・藤井→テキスト書く、Adobe Illustratorいじれる
・ツール→Adobe Illustratorある
『相場感がよく分からないから予算や納期は場合によって増えても可。だが、とにかく良いもの・長く使えるものを作る』

そして、ざっくりの制作工程はこんな感じ。

1 構成/ラフ
2 イラスト/画像/テキストの準備
3 デザイン制作
4 校正/修正対応
5 印刷
6 納品

そこで、構成・ラフ作成・テキスト作成・画像準備等は藤井が担当し、イラスト作成はイラストレーターに、全体のデザイン組みはデザイン制作会社に外注。印刷はネット印刷業者を利用することにしました。

デザイン事務所などに一括でお願いするのではなく、それぞれ別の人にお願いするので打ち合わせや細々としたやりとりは増えますが、こちらのイメージ通りに形にしていくにはこの流れが最適だったかなと思います。

コンセプトをつくる

「誰に読んでもらうのか?」 「どんな場面で活用するのか?」

パンフレットを作るにあたり、最初に考えることです。

当院は在宅医療が専門なので、パンフレットを目にする機会があるのは患者様やそのご家族はもちろん、施設関係者、医療関係者、ケアマネジャー、地域包括の方々…。医療業界と福祉業界が密接に連携しあっているのもあり、どこに焦点を当ててどんな内容を載せるのか、検討もつきませんでした。すでにあるホームページや以前のパンフレット等を参考にしてみるも、なんだかクリニックの情報をただ羅列しただけのように感じてしまい、ピンとこず。

そもそもこのパンフレットでは、「さつきホームクリニックがどんな病院であるのか?」をしっかり示す必要があるはず。在宅医療という、まだまだ一般的になじみが少なく、外来という形を持たないゆえにイメージもされずらい当クリニックの、最初の挨拶状のようなものだからです。

そこでまずは、「何を一番伝えたいのか」を軸において考えてみることにしました。院長の講演内容や院長が連載しているエッセイ、毎朝のカンファレンス、職員スタッフと話した内容などから「さつきホームクリニックの在宅医療」を表す重要な言葉や概念をピックアップして、自分の中に落とし込んでいきました。

その作業の中で出てきたのが「さつきのチーム医療」です。医師・看護師・リハビリスタッフ・医療事務・診療サポート・薬剤師など様々な職種のスタッフたちの距離感がとても近く、情報共有も早い。毎朝1時間行うカンファレンスは、大きな机を囲んで全職種全スタッフが参加しますし、スタッフ間の主要連絡ツールはLINE WORKSなので個別にもグループにも情報共有が簡単です(レスポンスも早い)。また、診療カルテは電子化されており、その場で更新され共有されています。日中は訪問診療や訪問看護で外に出ている医療スタッフがほとんどという在宅医療の現場であっても、チームで患者様を診ていける体制が整っていること、それこそが当院の特徴であり強みなのではと考えました。(そこら辺詳しくは、こちらでも紹介されています。)

この「さつきのチーム医療」を中心に、構成を組み立てよう。
全体にストーリー性を持たせた、読み物のようなパンフレットにしよう。

そんなふうにコンセプトの方向性が定まり、やっと構成を考えるフェーズに進めたのでした。

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↑コンセプトにたどりつく前の初期のラフ案たち。振り返ると思考の乱れっぷりがよく分かります…

構成を考える

デザインや内容について、何度も繰り返した院長との打ち合わせの中で印象的だった言葉が「突き抜けたい」でした。それまで無意識に病院のパンフレットとしての正解を探そうとしていた自分…。そんな枠にとらわれずに自由に発想しよう! と考え方を根本から変えることに。

そこで、院長からの進言もあり、パンフレットの顔ともいえる表紙は全面イラストでいくことにしました。タイトルも、「さつきホームクリニック 診療のご案内」というあたりさわりのないものから「あなたらしい暮らしを支える 在宅医療」へ変更。中の内容は、さつきの在宅医療はチームとして密に連携しあっているということを説明した後、それぞれ「訪問診療」「訪問看護」「訪問リハビリテーション」「医療相談」の4つの柱で詳細が分かるようにしました。

以下がこの頃書いた、構成の大元となるラフです。

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ラフを書くときは何度も描いて消せるように鉛筆です。

この時点では、パンフレットによくある「巻き三つ折り」という形で考えていました。表紙と裏表紙をはつながった一枚のイラストにして、表紙側には街中を歩くさつきの医師と看護師を、裏表紙側には在宅で診療をする様子や施設に向かう様子をいれようと考えました。

イラストを発注する

イラストは、私が前職で一緒に仕事をしたこともある知り合いのイラストレーターさんにお願いすることにしました。

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↑こんな感じでさつきのスタッフ似顔絵も描いてくれています。

最初の打ち合わせで手描きのラフを見せながら、「全体を通してストーリー性を感じられるパンフレットにしたい」というところから、細かい描写まで話し合い、伝えました。そして上がってきたイラスト案がこれ↓

パンフ_かわめぐラフ

何度か修正を繰り返し

表紙修正_0918_page-0001

最終的にはこうなりました!

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学校があって、公園があって…。そんなありふれた日常の中に、在宅医療が根付いている様子をイメージしました。一人ひとりをきちんと描写しているのは、在宅医療というものが老若男女誰にでも関わっていくことだから。
よく見ると、さつきの花も咲いています。(当院の名にもある「さつき」は宇都宮の花なのです)

一番攻めたのは、クリニックの名前を表紙に載せていないことでしょうか…。思わず手にとりたくなるような世界観を第一にした結果、そうなりました。

イラストは、ほかの挿絵なども合わせて全部で8点描いてもらいました。描き下ろしにすることで全体の統一感も出るし、描写する人物モデルをスタッフに寄せることでオリジナリティも出ました。何より、可愛さと温かみとリアルさのバランスが最高! なのです。また、ラフの段階で看護師やリハビリスタッフにも確認してもらったことで、細かな装具や動作などもきちんと描写することができました。

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↑在宅医療の連携イメージも、ラフからこんな感じに仕上がりました

テキストを作成する

イラストの準備と並行して、テキストも作成していきます。構成を作った段階で、テキストの内容とボリュームの目途がつくので、それに沿って書いていきました。

チーム医療ということで、訪問看護・訪問リハビリテーション・医療相談の各説明をいれたかったので、それぞれ看護師・理学療法士・相談員の方々にお話しを聞いて書きました。「誰に」向けて書くのかによって、文章の平易さや表現に違いが出てくるのと、何を伝えたいのか(こちらが伝えたいことと、読む人にとって有益であること)のバランスをとることに注意しました。

デザインを発注する

さて、イラスト・画像・テキストの準備が整ったところで、制作会社にデザインを発注します。発注の際に書いた指示書がこちら↓

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指示書にはページごとのレイアウトや注意点などを書き込んでいきます。デザインの詳細イメージは口頭で共有しました。

フォント選びや文字間のバランスなど、細かな調整が全体のデザインの良し悪しに大きく影響するので、プロに任せるのは大切。

修正と校正

そしてこんな感じで仕上がってきました(一部)↓

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デザインや内容の校正をしていきます。ここまで完成に近づくと、全体を通してチェックすることができるので、院長はもちろん、内容制作に協力してもらった看護師・理学療法士・相談員の方々にも個別に見ていただきました。

それから、今まで1度もパンフレットの内容を見たことがない人にもチェックをお願いしました。何度も読み込んでしまっている私とは違う先入観のない状態で、細かな表現や構成に至るまで見てもらいました。

そして修正対応。これは自分自身で行いました。テキストや配置など、修正することによってありえないミスが起きたりするので、より注意深く。

最後は自分で納得するまで確認して、いよいよ印刷です。

印刷業者に発注する

印刷する紙によって仕上がりのイメージがだいぶ違うので、何種類かのサンプルを用意して確認していきました。最終的に院長が選んだのは「上質紙110k」。表紙のイラストの雰囲気を活かすために、光沢がなく自然な肌触りの(?)紙になりました。

そして今回はWebの印刷業者に発注するため、データ入稿も自分で。業者サイトにあるイラストレーター用テンプレートにデータを移し、画像データの埋め込みやアウトライン、保存形式などなどに一通りの注意事項に気を付けて、入稿していきます。

ミスできないので、中々ドキドキする瞬間でした。

納品

2019年も終わろうかという頃に入稿したので、2020年の仕事始めとほぼ同時にパンフレットが納品されました。

段ボールを開けて取り出した時は、ちょっと緊張。パラパラとめくってみたところ、問題はなし。ほっとしました。

まとめ

できあがったパンフレットは、新規の患者様や地域包括支援センター、施設、居宅支援事業所等に順次お配りさせていただいています。ありがたいことに「欲しい」と言っていただけることもあり、嬉しい限りです。

今回思ったのは、パンフレットがブランディングのツールになるということ。「医療機関のパンフレットは説明ができていればいい」ということでなく、表現の仕方によってそのクリニックの在り方を広報できる大きな武器なんだなと感じました。デザインの力は偉大ですね。。。

この後はホームページのリニューアルも控えています。このパンフレットをスタートとして、よりしっかりとした広報とブランディングを確立していきたいと思います!

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2021年11月18日追記


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