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#7 暑かった夏から少しずつ秋へ

みなさん、こんにちは!

観測史上最も暑かった夏が過ぎ去りました。涼しい気候に慣れた北海道民にとっては、過酷な夏でしたね。体調管理に苦労された方も多いのではないでしょうか。


暑い夏でも森はひんやり

まだ暑さの残る9月上旬、大学の森に入ってみると、暑い中でも少し涼しく感じました。

森の中が涼しい理由は、木々の樹冠が1日中直射日光を遮っていることもありますが、それだけではなく、植物の葉から水分が蒸散する時、気化熱で周りの熱を奪うことも涼しく感じる理由です。
 
そういえば、直射日光を浴び続けている葉を触っても、熱いと感じることはありませんよね。むしろ少し冷たく感じます。太陽の光を利用して成長する植物は、熱さから体を守る術も備えているのです。
 
このような気温の上昇を緩和する機能は、緑地や緑の多い公園でも感じられますし、都市部で屋上緑化・壁面緑化などが推進される理由のひとつでもあります。私たちの身の周りの快適な環境づくりに貢献してくれているのですね。

秋空高く映えるアカマツ

この時期、秋らしいうろこ雲やひつじ雲が見られる日もあります。

▲第1駐車場から見上げた秋の空

第1駐車場と1号館の間にはアカマツが植えられています。葉などの特徴から、外国産のヨーロッパアカマツ(別名オウシュウアカマツ)かもしれません。いずれにせよ、年中葉をつけている常緑樹。春夏秋冬、赤い幹と濃い緑色がその時々の空に映えて美しく、いつも見上げてしまいます。
 
アカマツは樹高20m以上にもなるとされています。このアカマツも見上げると首が痛くなるくらいの立派な高さですが、いったいどのくらいの高さか見当がつきますか?
 
横から眺めてみると、1号館と同じくらいの高さです。1号館の高さは約16m。いかがでしょうか、みなさんの予想は当たっていましたか?
 
なお、樹木の高さは、森林の調査などでは特別な機械で測定しますが、今回のように何かと比べたり、三角比を使ったりして、簡単な方法でもおおよその高さを知ることができます。樹木は背が高く、手の届かない存在に思えることも多々ありますが、具体的な数値を知ると、ぐっと身近に感じるのが不思議です。

くっつくタネ

さて、夏から秋にかけて草むらに入ると「くっつくタネ」が足にくっついてきます。知らず知らずのうちにくっついていて驚いたり、お散歩帰りの飼い犬の体にたくさんついていたり、小さいものだとひとつずつつまんで取り除くのに苦労したり、みなさんちょっとした思い出がありませんか?
 
若干迷惑ながらも、「くっつきむし」、「ひっつきむし」という愛称もあるように、何となく憎めないタネたち。大学の森で、そんな「くっつくタネ」を集めてみました。

▲左から、ミズタマソウ、ヤブハギ、ハエドクソウ、ウマノミツバ、キンミズヒキ

「あぁ!これこれ!」と思い当たるタネはありますか?
 
タネの形状はさまざまですが、よく見るとかぎ状のトゲトゲや細かな毛が生えています。このトゲや毛で動物にくっつき遠くまで運んでもらおうとするのが、彼らの戦略です。
 
私が集めたタネたちは、残念ながらゴミ箱行きとなってしまいましたが、大学の森では、キタキツネなどにくっついて、新天地に運ばれていくのでしょう。

サルナシの実

そして、秋といえば実りの季節。こちらはサルナシ(別名コクワ)の実です。

樹木などに絡みつく「つる植物」で、この写真のものはエゾヤマザクラの木に旺盛に絡み、エゾヤマザクラ本体を覆ってしまっているほどです。
 
果実の大きさは長さ2~3cmほど。半分に切ってみると、緑色の果肉に胡麻のような種子が並んでいます。何かに似ていませんか?

▲サルナシを2つに切ってみました

サルナシは、キウイフルーツの仲間です。熟したものを少しかじると酸味と甘みがあって、まさにキウイフルーツそっくりな味。でも、たくさん食べるとおなかを壊すそう。お味見程度がおすすめです。
 
このような美味しい実の中にあるタネは、先ほどの「くっつくタネ」とは異なり、鳥や獣などの動物に食べられ、体の中に入った状態で運ばれていきます。運ばれ方はそれぞれですが、植物は動物をうまく利用しているのですね。

これから秋から冬にかけては、キャンパス内の豊富な木の実を求めてやってくる野鳥やエゾリスの姿が見やすくなります。うまく写真が撮れたら、またご紹介します。


※「大学の森」は自然林です。散策の際には次の点に注意しましょう。

  • マダニ、ハチ、ウルシ等の動植物に注意してください。マダニに咬まれないよう、長袖・長ズボン、足を完全に覆う靴、帽子、手袋を着用するなど、肌の露出を少なくしましょう。

  • 頭上からの落枝に気を付けてください。風の強い日は特に注意しましょう。

  • 安全と植生保護のため、散策路以外の場所にむやみに立ち入らないようにしましょう。

※参考文献
「新北海道の花」梅沢俊(北海道大学図書刊行会 2007)
「増補新装版 北海道樹木図鑑」佐藤孝夫(亜璃西社 2020)
「新版北海道の樹」辻井達一、梅沢俊、佐藤孝夫(北海道大学図書刊行会1992)
「日本の野生生物 草本Ⅱ 離弁花類」佐竹義輔、大井次三郎、北村四郎、亘理俊次、富成忠夫(平凡社1982)
「日本の野生生物 草本Ⅲ 合弁花類」佐竹義輔、大井次三郎、北村四郎、亘理俊次、富成忠夫(平凡社1981)

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