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アジア民族の食卓誌 #11 タイの納豆トァナオ作り

ネパールのキネマ、中国の豆豉、ラオスのトゥアナオ・・・納豆は、日本の食べ物というイメージがありますが、世界には実に多様な納豆があるのです。ところかわれば納豆は調味料だったり、せんべい状にして焼いて食べるおかずだったり、乾燥していたり。カレーに入れられたりこうやってみると、納豆の定義がわからなくなってきます。

季節の手仕事講座、5月のテーマは野草納豆ということで、納豆を一緒に仕込みます。

アジアの照葉樹林文化と発酵食

稲作が伝わる以前、ネパール、ブータン、雲南、中国南部、日本へと、照葉樹林の広がる温帯地帯に共通する文化があったという「照葉樹林文化論」を提唱されたのは中尾佐助さん。

赤を神聖視する呪い、焼畑と穀霊信仰、製茶、絹、漆、野草の利用法、発酵食、そして、集落の成り立ち、妻問い歌や数々の迷信、アジアの村には、共通する文化がありました。納豆はその一つ。


糸引き納豆、塩蔵納豆(日本で言う濱納豆や大徳寺納豆)、異なる納豆分布をマッピングしていくと、地域性が見えて来ます。

中尾先生は、「ナットウの大三角形」:「大豆」「植物」「菌」の植物文化複合が納豆の特徴であるとされています。

古枯菌をなにで培養するか、その地域にあるものを使います。
日本は藁につく菌を使いますが、バナナの葉だったり、シダの一種だったり。素材の香りがそれぞれに独特で、その地の気候や植生が味や香りに表現されるのです。

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参考資料:
佐々木高明「照葉樹林文化とは何か―東アジアの森が生み出した文明」
横山智「納豆の起源」
NHK納豆の起源を探るhttp://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/209349.html

タイ北部の村へ発酵食品を訪ねて

チェンマイ郊外のエコビレッジ、punpun organic farmでは、パーマカルチャーやセルフビルド、水利やエネルギー、ヨガやスピリチュアルなワークショップまで、常にいろんな国からいろんな人がやってきて、知恵や技術を学べる場となっています。私が滞在してたときにも、約80名のビジターが滞在していて、セルフビルドを学ぶグループや、オーガニックシャンプー、self-reliance, 植物エキスの抽出等学ぶワークショップが日々行われていました。

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ボランティアのほとんどが欧米人ではなく、都会からやってきたタイの若者たちだったのが印象的でした。タイはもはや先進国からの開発支援を受ける途上国ではなくて、都市に住む若者たち自身が農村でボランティア支援をしているのです。

「バンコクの生活では誰が育てたのかわからない食物を消費する一方。自分で食べる物は自分で作れるようになりたい。」と、タイ人ワークショップの参加者たちは口をそろえる。

この農場では、ボランティア滞在者たちが学びながら自主的に農業や建築などの仕事をしていました。料理チームでは、つねに保存食をつくったり、たべものを採集したり、カフェで販売する食品加工をしたり、チームに入ればなにかしら学ぶことができます。

とれすぎたバナナでどぶろくを仕込んでいるところ。バナナの原種にはタネがあります。

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お茶の発酵食品、ミアン。

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チーズづくり。

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中でも興味深かったのが、このせんべいのような納豆でした。これは、納豆を潰して乾燥させたもので、溶いて味噌スープのように使ったり、カレーに入れたり、調味料として使われていました。

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納豆の分類

アジアの納豆の多くは、粒のままではなく、挽き割りにしてせんべい状にのばしたり、味噌玉のように丸めたりして天日乾燥させるところも多いようです。
そして、豆以外にも、唐辛子やご当地スパイスを加える納豆も。
多様な納豆の形の中でも、糸ひき納豆は独特のようです。

<豆の形態>
①粒状納豆 →乾燥、糸引き
②干し納豆
③挽き割り →せんべい状納豆(トゥアナオ)・味噌状納豆

<菌>
①納豆菌  →糸ひき納豆・五斗納豆  
②麹菌   →塩辛納豆(豆豉)、唐納豆(大徳寺納豆、浜納豆)
③テンペ菌 

<スターター>
藁、イチジク、シダ、チーク、バナナ

<地理分布>
ラオス、タイ・・・トゥアナオ
ミャンマー・・・ペーボゥ
インド・・・ザーチェイ、フクマタ、アクニ、ベカン、リビジッペン、グレップチュール、キネマ
ブータン・・・リビイッパ、キネマ
ネパール・・・キネマ
中国・・・豆豉(乾燥塩辛納豆)
韓国・・・清麹醤

納豆の作り方

<用意するもの>
豆:あずき、だいず、インゲン、ひよこ豆(たいがいの豆ならなんでもOK。たかきびでもできました)
新聞紙
藁(笹、マコモ、イチジクの葉、ハーブ、シダなど)
ほっかいろ、または、湯たんぽ
保温バッグ

① 一晩浸水する(2倍の重量になったらOK)
② ダイズを親指でつぶせるくらいまで煮る(圧力鍋で20分程度)
  藁や植物を使う場合は、煮沸しておく。
③ 納豆菌(市販の納豆でもOK)とまぜる
④ 約40度で24時間保温する(ヨーグルティア、カイロ、湯たんぽ、こたつ、電気毛布など)
⑤ 保温容器から出して一晩冷蔵庫で寝かせてから食べた方がおいしい

<ポイント>
※藁づとの周りを新聞紙で包む。タッパーに入れる場合は空気穴を開けておく。
※納豆菌はタンパク質が好き。タンパク質を食べてネバネバ成分を作り出す温度が40度前後。

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トァナオはこれをすり鉢ですって、カラカラに乾燥させて保存します。

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2日目。だんだん茶色になってきました。

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さらに干してカラカラにしていきます。

毎年募集していた民族の食卓を訪ねる旅ですが、最近はすっかり外国へ行けなくなってしまいました。当面は国内でも楽しめるよう合宿やオンラインワークショップなど企画していきたいなあと思います。コロナ後はまたぜひ一緒に生産者を訪ねてみましょう!

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