アジアの食卓取材うらばなしvol.1上海編
これまで食の記事をいろいろと書いてきたのですが、面白いのかわかんないけど、ちょっと取材の裏話でも。
まー、もともとバックパッカーあがりの添乗員なので、トラブルは日常茶飯事。インドで暴動に巻き込まれ間一髪でジャングルに逃げ込んだり、ブータンとアッサムの国境で軍に護送されたり、国際列車に乗り遅れてタクシーで追跡したり。人生はドラマでできてますよね。
何から書こうかしらって感じですが、バックパッカーデビューの地であり、思い出の上海から。
関空水没事件
福建省の発酵食の取材と、武夷山の茶農家へ滞在した帰り。時は2018年、25年ぶりの大型台風21号が関西に上陸した時に、関空が水没した。
ずっと武夷山の山中にいたので、そんな事実を知る由もなく、上海浦東国際空港へ到着してから目的地である関空が大変なことになってることを知る。
最初は「遅延」表示だったので、遅れてるんだなー、くらいにしか思ってなかったので、まさか3日も空港で足止めになるとは。
「日本のどこでもいいからあいてる席を探してください。」
チケットカウンターにて。「日本のどこか」リクエストをする人が続々と押し寄せていた。日本人向け難民カウンターでも作った方がいいくらい、日本人の行列ができていた。
LCCはカウンターがなく、国際電話をかけるも全然繋がらず。キャンセル補償もないので、自腹である。
ようやく見つけた大韓航空もソウル経由のフライトキャンセル。どこでもいいから日本に飛ぶチケットが欲しいのだが、さっきあった便も次の瞬間にはなくなり、直近だとビジネスクラスで12万ほどに。
「オカヤマ、アルヨ、明日つくyo」と言われ、発券してもらったところ、
「オカヤマ、取れたyo、オ、オキナワ・・?」
「なんでやねーん!オキナワやん!」
岡山=OKJ 沖縄=OKA なのだそう。危ないとこだった。ついつっこんでしまう関西人。こんな時にボケはいらないのだ。
「バンコク経由成田行きなら明日の便がありますけど、どうします?」
って、いやいや、上海からすぐ対岸なのに、なぜ8時間かけてバンコクに飛ばないといけないんですか?!ってありさま。
カウンターは大混乱なので、とりあえず、wifiのつながる宿で落ち着いて探そうと、宿に向かった。
宿で居合わせた遭難者とディナー行ったらドラマだった
上海空港近くで宿をとって向かうと、大学生の頃、はじめてのバックパッカーデビューで泊まった宿を思い出す。
当時は、インターネットの情報源といえば、「地球の歩き方」の掲示板しかなかった。そして、当時のバックパッカーは、船で上海へ渡り、深夜特急でマレー半島をめざすのだ。上海は、旅の始まりの地だった。
「上海で●日にあいてるので誰かご飯行きませんか?」
と書き込みしてる人がいて、「ちょうどその日上海にいます。中国初めてなのでいろいろ教えてくださーい」とコメントしてみたら怒られた。
「わたしはあなたのご意見番ではありません」と、一言ぴしゃり。
いまや、「いろいろ教えてください」メッセージをもらう側になったのだけど、確かに返事に困る。「いろいろ」ってなんだよ、とつっこみたくなる。
そんなこともあったよね、と思いつつ、ロビーで受付おわると、私のパスポート見たスタッフが「日本人ですか?」と声をかけてきた。
「いや、実は、英語も中国語も通じない日本人のお客さんがいて、ちょっと通訳してもらえませんか?」とのことで、話を聞いてみると、同じく、関空水没で帰れなくなった日本人たちだった。
「押金ヤージン」の意味がわかんないみたいだった。ロビーで保証金を預けるんだけど、普通日本人は宿でもの壊したりしないからわかんないよね。
「わー、日本語!!わたしたち、中国はただのトランジットで、こんなことになると思ってなくて、中国はなんか怖くて空港から出てたのも初めてで、右も左もわからないの!」
なるほど。中国に来たくて来たんじゃないならなおさら不安だろうな。成り行きで一緒にディナーに行くことに。
「実は、わたし、農家に嫁いだんだけど、探さないでくださいって、置き手紙してでてきちゃったの。」
そこから先がドラマだった。
「あはは。何の落ち度があって私が出て行ったのか、あの人は想像もつかないでしょうね。もう帰るつもりないの。さっぱりしたわぁ〜。」
え、いきなり重い話?とおもったら、ご本人は明るくてさっぱりされてて、素敵な方だったのでお話がとても楽しかった。飛行機がいつ取れるかわからない、憂鬱な上海空港閉じ込め事件が楽しい一夜になった。
その後、どうなったかはわからない。でも、ひとりひとり、人生にはドラマがあるなあと思う。うちは、テレビない歴10年で、「テレビなくて退屈じゃない?」とよく聞かれるけど、ぜんぜん退屈なんてしない。日常で出会う人たちとの会話、日常の風景、ぜんぶドラマだから。
⬇️ちなみに、今ハマってる漫画。死後に誰もが訪れるという「死役所」。1億2千万の人の数だけドラマがあるんだなあ、としみじみくる。
中国語で金縛り体験
その宿は、適当にとったので、いかにもな安宿だった。一人部屋ではあったけど。
テレビに出てきそうな「ヒュードロドロドロ〜」って音がどっからともなく聞こえた。疲れてたのでそのまま寝たら金縛りにあった。
一年に数回くらいだが、金縛りになると色々見えるタイプなのだ。日本では、子供達のかごめかごめの歌声が聞こえたり、女の人が窓から入ってきたりするが、なんと、それが今回初めて中国語だった!しかも、よくやってくる女子供ではなく、おっさんたちが騒いでる声だ。「なんでやねん!」と思わずつっこむ関西人。
それにしても幽霊が中国語でしゃべってるぞ、すごい!何言ってるんだろうと聞き耳立てる。金縛りは潜在意識だというが、中国人が出てくるなんてなかなか馴染んだもんじゃないか。と、我ながら感心しつつそのまま寝る。おっさんの声とともに。
朝、起きたら、おっさんはいなくなってたけど、「ヒュードロドロ」は依然として時々聞こえてきた。ね、日常はドラマでできてるでしょう?
つづく・・・(かも?)
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こんな感じでいつも旅してます。
コロナ後またやります。アジアの民族の食卓を訪ねる旅。
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