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ならいごとの旅

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世界の小さな村を訪ね、保存食や手仕事など昔ながらの知恵を学ぶ旅の記録
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#旅

究極のslow food葛の根からの葛粉づくり

とろみつけに使われる葛粉、どうやって作られているか知っていますか?葛という植物はどこにでも生え、堤防や道端に育っているのを見かけたことはあると思います。でも、だれも、その根を掘り出し、葛粉をとろうと思う人はいません。 ものがない時代は、それが、大事な栄養源でした。わらびの根や、タピオカ、さらには毒のある彼岸花の根まで、人は食べてきたのです。その苦労を味わいながら、本葛の貴重さを知ろうというのが今回のワークショップ。吉野葛の本場、奈良県宇陀での大実験です。 本気の葛の根掘り

130年続く笠間藍染:新月の藍建てを訪ねる

以前、旅色プラスの連載で書かせてもらった笠間藍染の工房で藍建てを見学してきました。 こちらの工房は、少なくとも130年前から土間で藍を育てているという。4つの藍壺がワンセットになっていて、寒い時は中央の穴から籾殻を焚いてツボを常に温める。絶やすことなく続けて来た色だ。 そして、藍建をやるのは、昔から必ず新月の日と決まっている。最近では藍染の受注も減り、3−4ヶ月に一度、藍がなくなってきたら次をつくるのだそう。 こちらが徳島の蒅師、佐藤家から仕入れているという蒅。 初め

ならいごとの旅 in 台湾 (6)山に生きるルカイ族の民族植物と愛玉づくり

ルカイ族の集落で愛玉づくり数年前、台湾の屋台で初めて愛玉という植物のことを知り、なんとか現物と加工の様子を見たいと思っていましたがやっと実現しました。 愛玉のタネからペクチンを取り出し、ゼリー状に固めた物が屋台でもよく見られるオーギョーチ。 そしてこれがそのタネ。 愛玉の樹(学名:Ficus awkeotsang クワ科イチジク属)は、台湾の固有種で、主に南東部の山間地帯で育てられているようです。 屏東からバスで約1時間。今回おじゃましたのはルカイ族が多く居住する高雄

いまどきのチャイナ(4)「無用」のデザイン

ファッションブランド「無用」のショールームで働く友人の案内で文化創意圓77へ。 発起人はもともと高名なデザイナーであった馬可さん。ファッション業界に疑問を抱き、しばらく活動を休止して、農村を旅する。今や見捨て去られつつある「無用」のものを探しに。 北京のショールームは彼女のコレクションを集めた生活空間のミュージアム兼ショップになっていて、「無用」の手仕事が現代に蘇る。建物は「テーマ展示」「家」「真味 Real Food」と3つに別れ、「家」に展示される洋服や生活用品等、1点

いまどきのチャイナ(2)セキュリティチェック

これ、結構めんどくさいのですが、電車、地下鉄の全ての駅、バス乗り場に入るにも全部荷物チェックがあり、その度X線を通さないといけません。 地下鉄乗り場なんて、混んでるし、並んでるし。というわけで、これがめんどくさいからか、中国人は、カバンを持たず、手ぶらで携帯だけ持ってる人が多いのです。ほぼキャッシュレス生活で、財布もないから、手ぶらでいけるのでしょうか(?)。カバンがないと、セキュリティチェックのために列に並ばずにすみ、移動がとても快適です。 そして、高速バスや電車の駅で

ならいごとの旅 in 台湾(5)台湾茶を学べる素敵な農家たち

台湾の多様な茶のカタチには多様な楽しみ方アリ台湾の農家さんを訪ねていると聞かれるのは、「日本にいったらお抹茶の体験はあっても、煎茶の体験ができるところがない。日本人は抹茶しか飲まないのか?煎茶は楽しまないのか?」ということ。日本の茶道というと型となって伝わっているのですが、たしかに、抹茶以外の煎茶や玉露、かぶせ、碾茶など、多様な茶が味わえる茶館のような場所は少ないのではないでしょうか? 台湾では、茶芸館で茶を飲みながら寝転がってるひとがいたり、茶農家さんのところに遊びにいく

ならいごとの旅 in 台湾(4)ふくろうの森と藍文化の復興

「1匹のふくろうのためにここに森を買いました。」 卓也小屋は苗栗三義の山奥にひっそりと佇むこの世界から忘れられた山荘。 三義駅からは公共交通がなく、タクシーで山を登ること20 分。そこには堆肥を使った有機農業、大陸から伝わる客家の藍染めの服作り、多くの生命を育む水源、自然生態と調和した暮らしがありました。温かく、懐かしい伝統的な農村を彷彿とさせる桃源郷が広がります。 鄭オーナー夫妻が一匹のフクロウに出会い定住することになったというこの土地は、実はふくろうだけでなく、鷲やか

ならいごとの旅 in 台湾(3)畑の中心で食卓を囲むひとびと

台湾で4年半前に始まった生産者とつながる畑の食卓イベントを主催するグループ「稻田裡的餐桌計劃-幸福果食」を訪ねて来ました。 幸福果食は4人のスタッフとボランティア(ここでは、「夢行者(夢を実践する者)」というそう)運営する農業支援の会社。 4年半を通じた活動で、台湾中の約300の農家とつながり、毎週どこかの農家のところでイベントを開催しています。 私が今回参加したのはそのイベントの一つでもあり、4年半前のイベントのはじまりとなった記念すべき地での晩餐会。 中山休閒農場に

ならいごとの旅 in 台湾(1)薬草を学ぶ旅

アジアの農村で自然とともに暮らす知恵の聞き書きをしています。 前回記事では中国の発酵やお茶をテーマに書きましたが、多民族国家台湾の民俗文化も実に多様で面白いです。 原住民の暮らしと薬草薬草王国台湾でも特に薬草を生産しているのが台東。 原住民族が多い東は在来種の宝庫だったりします。 こちらの薬草園では、有機認証を取得している農園で200種類の薬草を生産し、商品加工をしたり、体験教育をしたりしていますが、とくに印象的だったのが、薬草バイキング! ここで提供されている薬草カ

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岩茶のふるさと武夷山を尋ねて

【中国フードツアー#05】武夷岩茶を学ぶ壁のない"暮らしのミュージアム"

たまに同行者募集してます食の旅。発酵食品や農家、陶芸家、尺八の演奏者など訪ね、茶園に泊まり込み、村の人たちと語り合い、飲み明かし(茶を)、全国から集う中国の茶業関係者たちとともに岩茶の合宿クラスを受ける。そして、岩茶のふるさとと言われる武夷山の岩山に登ってきました。 壁のない暮らしのミュージアム"無壁博物館"の活動大紅包評茶会での金賞農家でもあり、「壁のない暮らしのミュージアム」を提唱するメンバーでもある応紅さんの農場で3 日間滞在し、岩茶について学んできました。 「壁の

【中国フードツアー#04】福建客家土楼で学ぶ食の知恵

たまに同行者募集している食をめぐる旅。客家土楼編です。 参加を検討してくれていた方はこれまでにもあったのですが、なかなか都合が合わず、今回は初めて日本から同行者が来てくれました!! 客家の保存食が面白い。台湾に通っているときから、本場の客家の食のことを聞きたくてようやく実現。土楼に泊まり、糯米の酒を作ってる酒坊を訪問してきました。 土楼はアパートだと思っていたけど、むしろ街でした。 最大600人住んでいる土楼もあって、長がいる。みんな一族なのだ。 4階建になっていて、

中国で金縛りにあったら中国語だった件

中国で金縛りにあった。 関空閉鎖による帰国難民問題でぐったりして考える余裕もなく空港近くの安宿を適当にとった。 するとですよ。テレビに出てきそうな「ヒュードロドロドロ〜」って音がどっからともなく聞こえた。窓がなく真っ暗で、天井にはヒビが入っていた。疲れてたので、部屋を変えてもらう気力もなく、そのまま寝たら金縛りにあった。 一年に数回くらいなのですが、金縛りになると色々見えるタイプなのだ。日本では、子供達のかごめかごめの歌声が聞こえたり、女の人が窓から入ってきたりするわけ

【中国フードツアー#03】お茶に酔う!馬連道究極のお茶ツアー

3000軒のお茶関係店舗が連なる「馬連道茶城」 朝から約6時間、ふらふらになりながら15種類の茶を飲み続けるという究極のお茶ツアーに参加してきました。 茶馬古道が茶を運んだ道なら、「馬連道」は全国の茶が集まる集結地。いわば、「茶の築地市場」だ。約3000件の茶問屋、茶菓子、茶道具、パッケージ屋さんまで、茶に関するあらゆる店がずらりと並ぶ路地は圧巻。 もちろん、一人でも回ることはできますが、つてが無いと、もはやどこに入って良いかわからない。しかも、5階建ての同じような問屋の