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あのわたあめが恋しい

「陽光に照らされたまぶしいまぶしい真っ白の入道雲なんて、わたあめになってしまえばいいのです」


どうしようもないほどの熱を帯びた空気に、揺らぐ景色。

からだを突き刺すような陽射し。

大きく膨らんだ雲が迫りくる。
日の光を反射させながら、こちらへこちらへと迫りくる。

目を細め、入道雲を睨みつけた。
(眩しさのせいで目が開かなかっただけかもしれないけれど)

「陽光に照らされたまぶしいまぶしい真っ白の入道雲なんて、わたあめになってしまえばいいのです」

苦手な夏は、こうして悪態をつく。

無実の太陽に、無実の雲に、自分が暑さで溶けて消えてしまう前に一矢報いてやろうと、悪態をつく。

「わたあめになって」

念じても夏の雲はわたあめにはならず、その結集が嘘のように、
良い風が吹く秋の日にはうろこ状に散り散りになり、晴れた冬の日には姿を消す。

どこまでも澄んで、どこまでも高い、まっさらな青。

「少し雲があるくらいが好きです」

どの口が言うか。理不尽にも程がある。

自分から突き放すようなことを言っておきながら、季節がふたつ変わった今になって、あのわたあめが恋しくなったなんて。

口が裂けても言えない。

あのわたあめに一日だけでもいいから戻ってきてほしいと思っていることは、ここだけの秘密。

会いたいのは、ここだけの秘密。

照らしてほしいのも、あたためてほしいのも。
ぜんぶぜんぶ、ここだけの秘密。

あなたが恋しい。

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