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履歴書に書いていない私を書いてみる。

先日、ポートフォリにこれまでのライターと編集者の「仕事紹介」をさせてもらった。自分の携わってきた仕事を棚卸しする機会となり、なんだか少し前に進めた気がしている。

ポートフォリオは、「仕事の面」から見たこれまでの私なわけだが、もちろん、私のすべてではない。
ライター塾の同期で、ライターの先輩がこんなnoteを書いていた。「人は、履歴書に載らない事柄でできている 〜不要不急なものたち〜」
「おお、たしかに!」と。履歴書に書く内容はある程度の定型にはめているようなところがある。そして、需要に自分を寄せていくような雰囲気も感じる。丘村さんのこの視点を読んで、見えていない可能性を見出せるように「履歴書にない私」を棚卸しをしてみようと思う。

◆物語の創造との出会い。

我が家は眠る前の読み聞かせが日課だった。しかし、ただ読み聞かせるだけではなくて、「物語のつづき」について私にバトンをパスをするのだ。
「はい、お話は終わり。つづきを話して〜」
そう言われるのは、読み聞かせ以上に私の楽しみだった。例えば、最初の頃は「桃太郎」で、桃の次にメロンが流れてきて、スイカが流れてきて、ブドウが流れてきて……といった終わりのない好きな果物紹介の物語(笑)
「ごんぎつね」のような悲しすぎる物語の時には、ハッピーエンドに上書きする。
物語の型に慣れてくると、「いかにして父母の予想を裏切る展開にするか」に集中するようになった。物語を創るたのしみを教えてくれたことが、両親への最大の感謝かもしれない。

◆文字を覚えたら小説を書いていた

小学校低学年、文字を覚えるとすぐに小説を書いていた。いや、小説というにはあまりにアレだが。折り紙の裏に、すべてひらがなで、「ゴジラのその後」のストーリーを書いていた。(折り紙の使い方を間違えている。)
夏休みの宿題で、小説を書いたこともあった。その時は、夏休みに父親の田舎に行ったら古びたタンスがあり、そこに入ったら父親の子どもの頃にワープするというものだった。
いろいろな現実的な記憶は抜け落ちているのに、不思議なもので自分の書いたものは覚えている。自分の脳を動かして作ったものは、記憶を漉したかのように残るものなのだと思う。

◆異常な甘党

小さい頃、ほとんどのものが食べられなかった。魚介類、肉類、麺類、全部ダメだった。食べられるものがあまりに少ないから、いつもフリカケがお守りだった。どんな食事場面でも、白米+フリカケがあれば乗り切れる。
そんな私を心底心配したのが母だった。一生懸命いろいろなものを食べさせようとしたが、頑として食べない。当時の私は、食べ物を信頼できないので、「食べてみたら美味しかった」みたいなこともない。それ以前の問題なのだ。
そんな私だったから、拒食症になるのではないかと母は心配していた。でもある日、保育園にお迎えに行くと、おやつで出されていたチョココロネをすごい勢いで食べていた。それを見て、拒食症への不安は吹っ飛んだそうだ。あ、好きなものがこれだけ食べるのねー……。
ちなみに、一番好きな食べ物は落雁なんだけれど、あの造形美とご当地の砂糖の特徴をまとめた写真集とか作ってみたい。(需要ある?)

◆激しくバレーボールをしていました

最近お会いする人には文化系と思われるのですが、大学まではしゃかりきにスポーツをしていた。小学校の頃から始めたバレーボールは、高校時代激しさのピークを迎え、合宿所から学校に通うような生活をしていた。「部活が休めない」という理由で、高校3年間は皆勤でした。
合宿所からの生活の時には、朝練して(ちょっと授業)、昼練して(ちょっと授業)、放課後練習して、大量に食べなければいけない夕食を経て、夜練をした。顧問の先生が切れると、深夜0時まで練習となった。
ちなみに、小学校から大学までのバレーボール経験が生きた仕事があった。ライター駆け出しの頃に、『月間バレーボール』で何ページかを担当したのだ。ずーっと体育館に張り付いて試合を見続けて、メモを取り続ける、まさに体育会系の仕事だった。

◆「もうオレンジの服は買うな」と言われたことがある

私はオレンジ色が大好きで。制服から解き放たれた大学時代、買う洋服はすべてオレンジ色だった。林家ペーパーのオレンジバージョン。ちょっと、何かのネジが取れていたのかもしれない。
そんな時、友達の彼氏から「もうお前、オレンジの服買わないほうがいいんじゃない?」と真剣に言われた。「え?」と驚いた私は、言っている意味がよく理解できなかった。
今でもオレンジ色が大好きだし、洋服は概ねビタミンカラーを選びがちだ。パキッとしたオレンジ色や黄色は、あんまり人が選ばない色らしくてセールで残りがち。ブルーオーシャンだな、ぐへへと思う。が、その昔「もうオレンジの服は買うな」と言われたことをいつもちょこっとだけ思い出して、全身オレンジになりすぎていないかちょっとだけ不安になる。(なっていたら、教えて。)

◆お酒が好きになって食べるのが好きになった

先ほど、ほとんどのものをたべられなかったと書いたが、今では困らないくらいいろいろなものが食べられるようになった。「いろいろなものを食べるのは素敵なことなのだ!」と気づいたのは、大学に入ってからだ。
仲間たちとお酒を飲みながら、食べ物をつまむのは楽しかった。楽しかったら、美味しく感じた。(今はご時世的に問題があるけれど、)大皿でちょこちょこつまめるスタイルは「食べ切らなければいけない」というプレッシャーもない。しかも、みんながおいしそうに食べていたら、ちょっと手を伸ばしてみたくなる。強要されても絶対に食べない頑固な子どもは、そんなふうに変わっていった。そんなわけで、お酒を飲むとともに食事の幅も広がっていった。(だから、今食らべれないものが多くて悩んでいる子もきっと何かの拍子に大丈夫なると思う。焦らずいこう。)

◆47都道府県を(仕事で)制覇した!

趣味=旅。それは、出張族で無心で全国に出張していたことが大きい。雑誌の編集者をしていた時、そしてライターになってからも、47都道府県に取材に行っている。ちなみに、最後に残った1県は高知県だった。学校取材も多く、それがどういうことを意味するかというと、観光では行けないような奥地にも行けるということ。日本の学校は本当にありとあらゆるところにある! つまり、ありとあらゆるところに行ける!
しかも、私は運転をしないので(運転しないゆえのゴールド免許)、いかに公共交通機関を駆使するかを試行錯誤する。電車好きなので、それもまた楽し。電車を待っていると、地元のおじいちゃんおばあちゃんとも仲良くなるし。
「女性のための出張うんちゃら」とかの企画もできると思うんだけれど、どうかな。

◆短歌が好きなん。

短歌が好きです。最初に短歌の魅力を知ったのは『ショートソング』という小説だった。

<結果より過程が大切「カルピス」と「冷めてしまったホットカルピス」>枡野浩一
そんな短歌をよんで、「えー! 現代短歌っておもしろいね」と思ったのだ。おもしろさに出会ってから細々と趣味を続けている。先日、『ダヴィンチ』に投句したら、大好きな歌人・穂村弘さんに取り上げていただき歓呼の声をあげた。

<吸盤のひだにかすかなウゴキあり海賊のふね沈めた記憶>

ずっと歌会に紛れ込みたいと思いながら実現していないので、今年こそご縁があるといいな。

◆書店でのアルバイト

大学院時代のアルバイト先は書店だった。しかも、新規オープンの書店だったから私は立ち上げメンバーで結構融通が効いて棚を作ることができた。私はコミック担当だったので、ゴリゴリに自分の好みのコミックを全巻揃えたりした(笑)
本好きだから、書店で働くようになったわけだが、お客さんがいない時に本が読めるかなぁなんてのは絶対に叶わないとすぐに悟った。バックヤードは、常に返品本で溢れてくつろげるスペースなんぞない。
お客さんがいなくても、やることは山盛り。特に、休日の児童書のコーナーは1時間で荒野と化しているので、「そろそろか」と察知して黙々と片付けるのが上達した。あと、雑誌への紐掛けとコミックへのビニールかけのスキルがかなり上達したのだけれど、どこかで生かすシーンはないだろうか。

◆メンマが好きすぎる。

書店アルバイトのことを書いていて思い出したが、当時一緒に働いていた学生バイトの友達でタマという子がいた。タマは北里大学でリハビリを学んでいたからか、私の欠落した数字処理能力を粘り強くサポートしてくれた。端的にいうと、レジ締めがいつも合わない私を助けてくれた。
そのタマには仲の良いお兄ちゃんがいて、よく2人でブックカバーを折りながらお兄ちゃんの話をしてくれた。そのお兄ちゃんは、メンマ工場に勤めていて、私は「メンマ工場!!!」と胸キュンした。
当時の私はメンマを七味とあえたら無限にビールが飲めるという境地に達していて、そんなメンマを作っているお兄さんてなんてステキなのっ!と惚れ込んだのだ。
結局タマのお兄さんに会うことは叶わなかったけれど、いまでもメンマ工場でメンマを大人買いする夢はついえていない。

◆社会人最初のキャリア「書店営業」

私の最初のキャリアは出版社での書店営業だった。書店でアルバイトもしていたので、なんとなくサイクルもわかり、この時間は行っても書店員さんに話を聞いてもらえないなぁという時間帯には、ケーキセットを2回転したりしていた。(おい。)
書店員さんはやはり本が好きだから書店で働いている人がほとんどで、訪問するたびにオススメの書籍や漫画を教えてくれた。私も伝えなければいけないと思いが強まり、「あの人はこの本好きそうだな」「この人はこちらのジャンルだな」と思い読書ストックをした。
紹介された本はその書店で購入していくので、営業時代はぜんっぜんお金が貯まらなかった。(あ、お金が貯まらないのは今もか。)財布はすっからになったが、ここで出会えた書籍は今も連れ添っているものが多く、本好きの人が「佐藤に合いそう」と思って勧めてくれたものに狂いはないんだなと改めて思う。
あっ。あと、今弊社で出版業をスタートしたので(1年に1冊目安!)、この時の知識が生きている。書籍を作るときにも、この本だったらあの書店さんが強そうだなとか、棚や平積にしてもらうイメージをしながら作れる。
「おまえ、キャラ的に営業な」と配属された時は、自分の性格を恨んだけれど、今となってはこの書店営業時代の経験は結構ありがたいものだったんだなと思う。


どうしよう……。ここまで書いても、ぜんぜん履歴書以外の自分を綴り終わる気配がない(笑)自分の棚卸しをしてみると、結構あるんだな。また少し日をおいてやってみようと思う。
私のことだけでなく、人を多面的に見ることはおもしろい。相手を多面的に見ることで、「好き」が生まれる気がする。他の人たちの履歴書に載らない「私」もぜひ読んでみたい。

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