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カップヌードルの真実

noteフレンド新行内紀子さんとのコラボマガジン「プリン屋さんとフランスかぶれ」用に書いたエッセイです。今回の共通テーマは『故郷』で~す。

ふるさとの味といえば日清カップヌードル。それから日清焼きそばUFO。そして日清どん兵衛。

「ほかにもあっただろうが」

と、ふるさとのお袋さんに突っこまれそうなセレクトだがこれは本当だ。

実家の和室の押し入れを開けると見つかる巨大な段ボール箱。そこに雑然と詰め込まれた日清のカップラーメンたちは私が生まれた時からあまりにも当たり前にそこにありすぎて、だれの家にもあるのかと思ってたくらい。もうそこにときめきはない。

私にとっては当たり前でも遊びに来る友人にとってはてんこ盛りのカップ麺の中から好きなやつを選べる巨大な箱は夢のような光景らしく、とてもときめかれた。

食べ盛りの兄の友人たちは大喜びで、とくにUFOが大人気だったのが印象に残っている。私はインスタントなのに水切りしなくてはならないのが腑に落ちずあまり選ばなかった。

種明かしをすれば親戚に日清食品の関連会社にお勤めしている人がいて、容器がつぶれたり賞味期限が迫ったもう売れない商品をこっそり送ってくれている、という仕掛けだ。だからピカピカの新品はうちの押し入れにはなかった。2軍、3軍たちの控室なのである。

インスタント食品。ああいうのはたまに食べるから特別感があっておいしいのであり、いつでも食べられるとなればそうおいしくはない。

━━と思っていた。

と、思っていたが違った。本当においしくなかったのだ。

大人になってから自分のお金で買ったカップヌードルは押し入れのと同一人物とは思えないおいしさだった。自分のお金うんぬんは関係ない。

カップ麺と言えど、出来立てのほうが断然おいしいのである。

・・・・・・

さらにスキー場で仲間とともに食べたカップヌードルは言語に絶するおいしさだった。

押し入れから取り出して実家の畳で一人すするぼこぼこのカップヌードルと、雪山で食べる値段が2倍ぐらいするカップヌードルはもっと別人だった。「カップヌードル押し入れ味」と「カップヌードル青春スキー味」のように違う名称にしたほうがいいくらい違う。でもなんだか3回に1回は押し入れ味のほうを選んでしまいそう。

そんな経験を経て、私は食品会社に就職しこのエピソードをもとに数々の大ヒット商品を生み出して天才クリエイターと呼ばれるようになった(うそ。こういうの言ってみたくて)。

食品会社に就職することも天才クリエイターとしてブレイクすることもなく主婦の私とカップ麺は「たまに食べるとおいしいよね」程度の関係を揺るぎなく粛々と保ち、隔月刊のペースで無性にカップヌードルを食べたくなり買って食べる。ノーマル、シーフード、チリトマトが好みだが、まずい水しか出ない安い船の上ではカレーヌードルがおすすめだ。船の自販機ではまさかのカレーヌードルが一番に売り切れるから先に買っておいたほうがいい。カレーヌードル以外は何味であろうと「カップヌードル 安い船のまずい水味」になる。ちょっと映画のタイトルみたいになった。

あと迷って選びきれなくて2種類買っていっぺんに2個食べるとだいたい後悔する。ああいうのは1個食べるからいいのだ。カップ麺で満腹にしてはいけない。消化するのに疲れるから。年か。

ふるさとの話を書くつもりが「作文・私とカップ麺」になってしまった。まあいいだろう。

だって、ふるさとというものはカップ麺のようなものだから━━


え?


おしまいです。

できればまた近いうちにお会いしましょう。


▼これまでの紀子さんとのコラボ記事はここで読めますのでぜひ☆


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