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外国文学と「翻訳」の密接なる関係。 #外国文学のススメ
子供の頃に読んでいた外国文学作品を、ふと大人になってから読み返したくなり書店で購入。ワクワクしながら自宅に戻り読み始めてみると「あれ? 何かちょっと違う」と、感じたことはありませんか?
それはおそらく翻訳(邦訳)をしている方が、別の人であることが理由だと思います。翻訳する方が変わると、作品の雰囲気も大きく変わるからです。たとえば、前回紹介した「宝島」という作品を取り上げて、紹介してみたいと思います。
死人の箱にゃ 十五人
よい こら ほい!
飲もうよ ラムがひとびんだ
近藤健 訳
「死人箱にゃあ十五人――
よいこらさあ、それからラムが一罎と!」
佐々木直次郎 訳
死人の箱に十五人ーーとくらあ
ほーれ、それからラム酒が一本よう!
金原瑞人 訳
こちらは、宝島に登場する「船乗りの歌」です。今回は3名の翻訳作品を並べてみましたが、それぞれ個性があり、微妙に言葉遣いが異なっていることがお分かりいただけると思います。
物語は「たくさんの言葉」で構成されています。それぞれ一つ一つは微妙な違いかもしれませんが、それが積み重なっていくと大きな世界観が形成されていきます。それは私たちが想像しているよりも「読書体験」に大きな影響を与えると、私は個人的に考えています。
ちなみに私が、子供の頃に読んだ「宝島」は、近藤健訳だったので、これが一番しっくりきます。「死人の箱」という衝撃的な言葉のあとに続く「よい こら ほい!」という、どこかユーモラスでリズミカルな掛け声。この組み合わせが印象的で、子供のころの私は頭の中で何度も繰り返したことを覚えています。
もしかすると、子供のころに読んだ「宝島」が「近藤健訳」でなければ、あれほど夢中になれなかったのではないか? と感じたりもします。(もちろん、あくまでも「私にとって」という個人的な体験によるもので、それぞれの翻訳にそれぞれの魅力と素晴らしさが備わっていることは、いうまでもありません)
外国文学作品を翻訳作品で読むということは、原作と翻訳の両者よって作り上げられた世界観を楽しむ、ということだと私は考えています。お気に入りの海外文学作品があり、複数の翻訳作品が出版されているのであれば、一つ一つ読んでみてそれぞれの違いを確認してみるのも、海外文学作品を翻訳で読むときの、楽しみ方の1つかもしれません。
そして、原文にも挑戦してみると「なるほど、この部分はこのように訳したのか。すごいな。さすがだなぁ」と、翻訳家の凄さを実感することができて、奥深さと面白さを感じることができるのでおすすめです。そして「よし、自分ならこのように訳す!」などと、偉大なる先輩方の訳に挑戦してみるのも一興でしょう。たいていは、自分の力量不足に気がついてプロの仕事の凄みに圧倒されておわるのですけれどもね。
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