マガジンのカバー画像

つまり、佐藤の本棚。

127
今まで読んできた本にまつわる「記憶」の記録です。
運営しているクリエイター

#日本文学

佐藤の本棚99冊目 「鼻 芥川龍之介」

こんにちは、コピーライターの佐藤(さったか)です。100冊を目指して更新してきた「佐藤の本棚」も99冊目となりました。目標まであと1冊。だいぶ前から「100冊目はあれにしよう」と考えていたので、あとは迷いなくゴールに駆け込むだけです。 ひとまずこの「佐藤の本棚」は、100冊で終了する予定ですが、最後に何か「特別企画」のようなものをやってみようかな、とも考えています。いや、特別なことをせずに、なんとなくゴールしてなんとなく消え去っていくのが「自分らしい」のかな。リクエストなど

古本をめぐる冒険 太宰治「パンドラの匣」

太宰治といえば「人間失格」や「斜陽」を思い浮かべる人も多いかと思います。自分の場合は以上の作品に加えて「パンドラの匣」が頭に浮かびます。その理由は、本作品が地元の河北新報で連載されていた作品ということで、それとなく身近に感じるからでしょう。 そんなわけで「パンドラの匣」は河北新報版で読みたいもの。装丁も美しくモダンで所有する楽しみも感じる一冊です。 今回紹介している「パンドラの函(河北新報版)」は復刻版なのですが、奥付けもちゃんと再現されています。「太宰」の判子が、いい感

同じ星 太宰治 【読書日記 九十七冊目】

こんにちは、コピーライターの佐藤(さったか)です。私ごとで恐縮ですが、今月は私の誕生月になります。すべての人に必ず存在する誕生日ですが(当然ですね)この年齢になってくると「え?もう誕生日になるの? オレって何歳?」と、時間の流れる早さについていけず、自分の年齢さえも曖昧になっていきます。 先日、免許の更新に行ってきたのですが……、と長くなりそうなので、この話題は別のところで書いてみたいと思います。さて、そんなわけで今回は「誕生日」にちなんだ内容の作品「太宰治 同じ星」を読ん

古本を巡る冒険 夏目漱石「切抜帖より」

本棚の中から、装丁が魅力的な書籍を紹介。今回は夏目漱石「切抜帖より(復刻版)」です。ご覧の通り、とてもシンプルな装丁です。上品な佇まいで、それだけでも魅力を感じますが、今回特筆したいのはこのサイズ。 大きさを表すために、近くにあったマッキー(極細)を置いてみました。おおむねイメージしていただけたでしょうか? 片手で持ちやすそうなコンパクトなサイズをしていますね。角の丸みも絶妙です。 実際に持ってみました。やはり片手で開く時にちょうどよいサイズです。表紙も厚みがあるので

古本をめぐる冒険 佐藤春夫「殉情詩集」

古本屋で「佐藤春夫 殉情詩集」の復刻版を見つけた。レトロかわいいデザインです。アンカットも油紙も、きれいに保存されていました。

読書の記憶(八十二冊目) 横光利一「頭ならびに腹」

こんにちは。コピーライターの佐藤(さったか。)です。今年は猛暑でした。夜も暑かったので「下手に走って体調を崩してはいけない」と、ジョギングを二ヶ月ほど休んだところ、体重が一ヶ月で一キロずつ増加。合計で二キロ増えました。九月になって、だいぶ涼しくなってきたので、一ヶ月で二キロ減を目指しジョギングを再開したいと思います。 さて、今まで読んできた本を並べていく「佐藤の本棚」も82冊目。目標の100冊までのこり18冊。今回は「横光利一 頭ならびに腹」を読んで考えたことを、書いてみま

古本をめぐる冒険 宮沢賢治「グスコーブドリの伝記」

本棚の中から、装丁が魅力的な書籍を紹介。今回は「宮沢賢治 グスコードブリの伝記」の復刻版です。装丁と挿絵を手がけたのは、画家の横井弘三氏。 あとがきに、横井弘三氏の文章が収録されている。その中には、横井氏が汽車で上野から12時間かけて花巻まで取材に行ったこと。現地では盛んに取材をし、語り合い、スケッチをしたこと。帰ってから昼も夜も描き続けたことが記されている。そして、 「わけても、「グスコー・ブドリ」と「北守将軍」と「雁の童子」の原色畫には、力のあらん限りを尽くしまし

読書の記憶(八十一冊目) 「時間 横光利一」

こんにちは。コピーライターの佐藤(さったか。)です。私が今まで読んできた本を並べる「佐藤の本棚」も81冊目。目標の100冊まで、のこり19冊。だいぶゴールが近づいてきました。このペースで、80台を一気に駆け抜けていきたいです。 今回は横光利一の「時間」を読んでいて、思い出したことを書いてみました。小学生の頃に子供会で行った「バケツリレー」の記憶の記録です。 八十一冊目 「時間 横光利一」小学生の頃の話。子供会の行事の準備で、バケツリレーをすることになった。子供たちが一列に

読書の記憶(八十冊目) 「奥の細道 松尾芭蕉」

こんにちは。コピーライターの佐藤(さったか。)です。私が今まで読んできた本を並べる「佐藤の本棚」も80冊目。「胸突き八丁」という言葉がありますが、ゴールの100冊まで、ここからが勝負どころかな? 兎にも角にも、せっかくここまで登ってきたので、頂上を目指してみようと思います。 今回は、松尾芭蕉の俳句にまつわる記憶の記録を書いてみました。中学生の時に、野外活動でオリエンテーリングに参加した時の話です。 八十冊目「奥の細道 松尾芭蕉」中学校の野外活動に参加した時の話。スケジュー

読書の記憶 七十三冊目 「猫の事務所 宮沢賢治」

小学四年生の時の話。国語の時間だった。担任のS先生が、教科書に掲載されている小説の一段落を読み上げた。そしてその中の一文を黒板に書くと「ここで作者は何を表現したかったと思いますか?」と、僕たちに質問をした。 何人かが答えた後、僕も指名された。僕は「作者は『動物達が踊っているように見えた』と言いたかったのだと思います」と答えた。先生は「あー、そう。次、〇〇さん」というように、特に良いとも悪いともなく授業は進み、次に当てられた生徒が答えたところで、その日の国語の授業は終わりにな

読書の記憶 七十二冊目 「注文の多い料理店 新刊案内 宮沢賢治」

「犬が走って、こちらへやってきた」 今あなたの頭の中には「犬」の姿が思い浮かんだことだろう。それは自分の家で飼っている犬であったり、友人や知人の犬、もしくは歩いてる途中に見かけた散歩中の犬、今までに様々なところで出会ってきた犬が、思い浮かんだと思う。 さらに、犬が好きな人ならば「かわいい」「楽しそう」「きっと耳を寝かせながら、跳ねるようにして、一生懸命にこっちに向かっているんだろうな」などと、楽しい感情がわきあがっているだろう。 続きを読む(無料)↓ 佐藤の本棚は、1

読書の記憶 七十冊目「雨の上高地 寺田寅彦」

「はじめて来たのに、なぜか懐かしい風景」などというと、観光案内のキャッチコピーみたいだけれども、僕にもそのような気分になった風景がいくつかある。 その一つが長野県の上高地である。大正池でバスを降り、ポクポクと足音を鳴らしながら木道を歩いていく。やがて視界が開け目の前に広がる河原へと降り、しゃがんで梓川の水に手を浸した時、僕の頭の中に浮かんだ言葉は「また、ここに来たぞ!」だった。 つづきを読む(無料)読書の記憶 七十冊目「雨の上高地 寺田寅彦」 佐藤のtwitter↓

読書の記憶 六十八冊目「漱石先生臨終記 内田百間」

前回、私が進学塾の先生をしていた、ということを書いた。書き終えてから、あらためてその当時のことを思い返してみると、授業していた時の事よりも生徒と雑談をしていた記憶の方が多いことに気がついた。 授業が終わると、たいてい何名かの生徒が私の机の横に来て何やかやと話をしていった。わからないところを質問に来る生徒もいないわけではなかったけれども、ほとんどの生徒が意味のないような雑談をして帰っていくのだった。 続きを読む(無料)「漱石先生臨終記 内田百間」

読書の記憶 六十七冊目「夏目漱石先生の追憶 寺田寅彦」

大学を卒業してから初めてついた職業が「進学塾の先生」だった。碌に研修も指導も受けずに教壇に立たされ、生徒の前で授業をしたのだった。特に教師の仕事がしたかった、と言うわけでもない。教育の仕事に興味があったというわけでもない。そもそも自分が何かを教えるとか、先生として生徒の前に立つということに相応しい人間であるようにも思えなかった。 それでも気がつくと、長いこと教育の仕事を続けてきた。単純に考えて数百人以上の生徒の前に立ち、数千時間ほど授業をしてきたと思う。たぶん、なんだかんだ