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男性もHPVワクチンを受けた方が良い理由

HPVは子宮頸癌の他にも、男性の陰茎癌や、男女問わず発症する中咽頭癌、尖圭コンジローマ等の原因になり得るということは案外知られていないように感じる。

しばしば「子宮頸癌の原因となるHPV」とセットで紹介されるのは、間違えてはいないが、「なら男性には関係ないか」という印象を与えかねない気がする。

今回は、1. HPVが男性も発症する病気の原因になること、2. HPVワクチンに関して、簡単に書いてみることにした。

1. HPVが男性も発症する病気の原因になるHPVとは「Human papillomavirus(ヒトパピローマウイルス)」の略で、子宮頸癌の原因になることはよく知られていると思う。

ただ、冒頭にも書いた通り、HPVは子宮頸癌だけでなく、陰茎癌、中咽頭癌、尖圭コンジローマ等の原因にもなる。


陰茎癌は名前の通り、陰茎にできる癌のこと。

先進国では稀とされているが、羞恥心から受診をためらい、初診の時点でかなり症状が悪化しているケースが多いという特徴がある。

病変の部位、浸潤度によっては陰茎全切断が必要なケースもある。


中咽頭癌は、咽頭(鼻の奥から食道までの飲食物と空気が通る部位)の真ん中辺りにできる癌である。

先日、お笑いコンビ「ペナルティ」のワッキーさんが中咽頭癌になったことがニュースになった

(※ 中咽頭癌の全てがHPVに起因するものではないし、HPVに感染すると、必ず中咽頭癌になるわけでもない。ワッキーさんの今回の中咽頭癌が HPVに起因するものかどうかもわかならい。)

尖圭コンジローマは性感染症で、性器や肛門周辺にニワトリのトサカ状のイボができる。完治が難しく、免疫力が下がった時などに何度も発症してしまう。

2. HPVワクチン接種に関してそんな様々な病気の原因となるHPVだが、ワクチンが存在する。

先日(2020年5月22日)、HPVワクチンの9価ワクチンが日本で承認されたことがニュースになった

まず、「9価」とはどういうことかを記す。

一口に「HPV」と言っても、100以上の種類がある。

それぞれの種類によって、引き起こす病気の種類やそのリスクが異なってくる。

「〇価」というのは、そのうちの何種類の感染を予防できるかということを示す。

つまり今回承認された「9価」というの9種類のHPVの感染を予防できるというもの。

これまで、日本で認められていたのは、「2価(サーバリックス)」と「4価(ガーダシル)」である。

「2価(サーバリックス)」はHPV16, 18型の感染を予防し、「4価(ガーダシル)」はサーバリックスの16, 18型に加え、6, 11型も予防する。

しかし、「4価(ガーダシル)」を接種しても、子宮頸癌の65%程度の発生抑制しか期待できない(子宮頸癌以外の病気に関しては、パーセンテージが示されたものは見つからなかった。HPV6, 11型は特に尖圭コンジローマの原因になり、4価はそれを予防することができるとのこと)。

今回日本で承認された「9価(ガーダシル9)」は「4価(ガーダシル)」の6, 11, 16, 18型に加え、31, 33, 45, 52, 58型も予防する。

これにより、子宮頸癌の90%程度の発生抑制が期待できる。

ただ、「自分は別になっても良い。病気になりたくない人だけがワクチンを打てば良いのでは?」と考える人もいるかもしれないので、集団免疫についても書いてみる。

ワクチンを接種しても100%感染しないわけではないというのは、上で書いた通りだが、中にはワクチンを接種することができない人もいる。

経済的に困窮している人、情報にアクセスすることができない人、アレルギーがある人などなど。

そのような人の為にも、接種できる人は積極的に接種した方が良い。

ワクチンを接種できる人が接種することで、ウイルスの感染率も下がり、ワクチンを接種していない人の感染率も下がることになる(これは「集団免疫効果」と呼ばれる)。


そうは言ってもそれなりに値段が張るので、ハードルが高いというのも事実である。

(13~16歳の女性は国が定期予防接種の対象にしているので無料だが、それ以外の人の場合は、自費診療となる。)

HPVのワクチンは間隔を空けて3回接種することになる。

3回合計で、2価が4.8万円、4価が5.3万円、9価が10万円ほどかかる。


自分も4価を2020年1月と3月に接種しており、7月に3回目を接種することになっている。

2020年1月時点では、9価は日本で承認されていなかったことと、輸入ワクチンを接種することもできたが、費用の面からもとりあえず4価を接種することにした。

近いうちに9価も接種するつもりでいる。

様々な事情で現時点での接種は難しいという人は、下記のサイトでオンライン署名するだけでも意味があると思う。

『子宮頸がんは予防できる』という情報が届けられていない日本の女性を救いたい!

これは、産婦人科専門医・医学博士の稲葉可奈子さんが、厚生労働大臣および各自治体首長へ次の5点を求めるというもの(以下抜粋)。

① HPVワクチンの『有効性とリスクについての公平な正しい情報』と『対象者は無料接種できる』という案内をきちんと送ってください。

② 予防接種の案内が届かなったがために定期接種対象期間を過ぎてしまった人は5~6万円全額自己負担となります。そんな『はざまの世代』へも助成をしてください。

③ 厚生労働省、各自治体ホームページのHPVワクチンについての説明はとても否定的な印象を与える記載になっています。情報を求めている人に、有効性とリスクについて正しく情報が伝わるような公平な説明に改善してください。

④ 日本におけるHPVワクチンの有効性や副反応の発生状況などを正確に把握するために、子宮頸がん検診の問診票に『HPVワクチン接種歴』の項目を設けて、接種歴を把握できるシステムを作ってください。

⑤ 定期接種対象者自身が『HPVワクチン』と『HPV関連疾患』について理解できるよう、中学校の副読本にその内容を入れてください。

HPVに限らず、予防できる病気は予防した方が良いと思う。

病気になってから治療するよりも予防医療に力を入れた方がトータルでかかる費用は抑えられ、尚且つQOLも下げずに済む。

予防医療としてできることは枚挙にいとまがないが、上記のオンライン署名をはじめ、小さなことからでも確実に始めていくことが大切だと思う。

(参考URL一覧)
http://www.twmu.ac.jp/KC/Urology/disease/cancer/penis/ 

https://ganjoho.jp/public/cancer/mesopharynx/index.html 

https://news.yahoo.co.jp/articles/614ac03495ebd7e1fe6a3d9c7ed7fbb3f0503b5a 

https://www.std-lab.jp/stddatabase/hpv.php 

https://www.mami-ladysclinic.jp/hpv9/ 

※ ブログはフォーマルなものではないので、引用の形式やリンク先の情報の信憑性等に関してはご容赦いただきたい。


上記の内容は、2020年06月21日に、別のブログサイト(削除済み)に書いた内容。

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