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発想を変えてDXに挑む

「改善」「拡張」を超えるゼロ発想を手に入れる

ドイツで地下鉄に乗ろうとして改札機がないのに驚きました。入り口から階段を下りたところに券売機はあるのですが、改札はなくそのままホームに行くことができます。話を聞くと、時々見回り員が来て、切符を持っていない人は罰金を徴収されるそうです。高額な改札機の導入や保守費用と、無賃乗車やキセルによるリスクマネーを天秤にかけて後者を選択したのでしょう。結果として顧客にとっても快適な体験を提供しています。改札機の性能を高めることに猛進しているとこの発想は生まれません。
デジタルの世界では、顧客を中心に据え、顧客にとっての体験を完璧なものにすることに力を注ぐことが求められます。従来の多くの企業でも「顧客第一」は重要戦略として謳われていますが、スローガンとして顧客第一を掲げることと、顧客体験を起点として商品やサービスをゼロから発想することには根本的な違いがあります。例えば、小売店における無人レジやレジなし店舗への取り組みを考えてみましょう。日本でもスーパーやコンビニで実証実験などが盛んに行われていますし、セルフレジなどはすでに実用化が進んでいます。国内におけるこれらの取り組みの多くは、小売業の人手不足という課題解決の手段であり、省力化を目指したものです。一方で、アマゾンが展開するレジなし店舗のAMAZON GOは、入店から商品選び、そして決済までの顧客の買い物体験をいかにシンプルで快適なものにするかに焦点が置かれています。根本的に発想が違うのです。

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日本企業のこれまでの強みを捨てる

日本の企業は、機能や性能を高めることに心血を注ぐ傾向が強いと思います。もちろん、機能や性能が大きな差別化要因となることはありますし、特に成熟した産業では顕著です。たとえば、冒頭であげた改札機を見ると日本の自動改札機の技術は機能や性能の面では世界屈指です。新幹線改札の自動改札機などは、紙の切符の場合、前後・裏表どの向きから切符を入れても、瞬時に認識して検札できます。また、紙の切符だけでなくICチップ搭載のカードやスマホにも対応しています。機能と性能は非常に優れているのです。工場の製造プロセスでも、経費の申請・承認でも、日本の企業は効率化するための改善においては超一流といえるのではないでしょうか。

しかし、新幹線の利用者である旅客は、JRの改札と、新幹線の専用改札の2つを通過しなければなりません。一方、韓国や欧州ではそもそも高速鉄道専用の改札機はありません。改札機も、製造プロセスも、申請・承認も、それをより良く改善するという発想の前に、そもそもそれ自体が必要なのかという問いかけが必要です。DXを推進するにあたっては、こうしたゼロベースの発想が求められます。

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外資系企業の情報システム部門などを経て1989年からデータクエスト(現ガートナー)でITアナリストとして国内外のITベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任、2019年2月に会長/エグゼクティブ・アナリストに就任 。

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