もう一歩、踏み込んでみようか (8)
加奈子が、見栄(寿の姉)からのメッセージをじっと見つめている。
「寿は血が繋がってるから、辛いね。」とポツリと言った。
そして、携帯を寿に渡した。
寿は、深く考えて(この↑)メッセ―ジを送った。
辛辣な内容であることも理解していた。
ある程度の反撃を覚悟していた。
そして、ある種の期待もしていた。
結果は、「渡りに船」といったところか。。。
相変わらず、自分のことだけしか考えられない人なんだ。と寿は想った。
この時、寿は、悔しさとか、呆れとか、何らかの意味を成す感情を持てないでいた。
加奈子は仕事、家事、そして、義母の転院の準備に忙しい。
「姉さん、ますます太るよ。そんなことしていたら。」
寿の脳裏に浮かぶ主婦としての見栄は、ソファに横たわり、駄菓子を抱えて、テレビを見ながら、友達と電話で話す、いつもの姿であった。
「この人と、血が繋がってるんだよな。」
学生時代から、何度も思ったことである。
「この人は、母が今、どうしているかも気にならないんだ。。。
これまで通り、自分は一人っ子だと思おう。
あはっ、子どもか!」
寿は笑った。
つづく
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