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桐島さとし
2024年5月25日 06:11
タマキは学校から帰ると、いつものように近くの森の中にある山桜のゲンさんの根元に座っていた。三月に入り、草木は芽吹き始めていたが、まだ日は低く、森にはひんやりとした空気が立ち込めていた。体育座りのまま膝に顔をうずめていると、腕や額に自分の体温を感じた。中学に入学して一年が経とうとしている。友達はできなかったが、ゲンさんが話し相手になってくれることで、心は癒されていた。 数日前に母が急に入院したが、父
2024年3月8日 23:01
コツコツコツ。何かを叩くような音でタマキは目が覚めた。その音はまだ半分眠りの中にいた時にも聞こえていた気がする。何かがどうやら窓ガラスを叩いているようだ。中学生の男子にしては簡素な部屋には初冬の柔らかな朝日が差し込んでいて、すでに日が昇っていることがタマキには分かった。昨晩から冷え込んでいる。タマキは音の正体を確認したい気持ちと、まだ布団の中にいたい気持ちを天秤にかけていた。意を決して布団から起