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幾人もの妹がそこに眼鏡を失くすと、風の中に非在があふれて言い訳は、夜の机の上だと嘘の辻褄があわない。図鑑でうぐいすの種類を、調べたくなる静寂に満ちた近眼の街並み。急に、通り雨が寂しくなる。出席簿が、瑞々しい朝、はす向かいの家、と説明する気恥ずかしさを、身体に取り入れたばかりです。

左利きで民主主義を話す人がいる。それだけで詩になる。どこか都市の街路樹のにおいがしていた。きっと身体に空を飼っている。そうして空耳で、空腹が満たしていた。他人の死に、薄い関心をよせて、背くらべにも、付き合ってくれた。病気をして都会に触れました、という便箋の簡素さに、躊躇わされた。

代名詞の、悪意は、仮名遣いの、旧い宗派だ。結晶が、次女に、鯨類の、合言葉を、逆巻くなら、詠嘆に、時計を、見つめるオルガンの、逆で、アルファベットの、哺乳類が、握力の、踏切を、思うときは、朗読の、股関節が、眼科を、無視する。可能な、毛穴から、内税を、ゆるしていくから蟹は、排泄する。

曖昧と、友人になれた。
木が間に立って、その根元に、輪郭を置き忘れてから 叙情が乾燥しないように、葉の擦れるところで、記憶の温度を残している 散文に含まれる他人の、微かな霊魂の、その弾力に触れるとわかる、 実は何度も死んでいて、捌かれた肉体から、曖昧が、思念を繋ぎ止めてくれている。

手紙から、指の気配を探す。書き手の骨の欠片を感じた散文が、生活を赦してくれるようにみえた。植物は暗喩の、最後の隠し子だった。木々が燃やされるとその遺伝子は、祈りのような灰にかわる。記憶にない離島では、画家が描くことのない焼畑のにおいに、歯痛をこらえる表情で皆、絶え間なく欲情する。

憎む、という感情は、水に浮く。だから船は、誰かの復讐にむかってすすむ。雨上がりよりも遠いところにある船酔いの、激しい美しさをどう散文に、したためられるか。嘔吐には、小さな嘘をつく悪意さえも、忘れさせるチカラがあった。横揺れの重力が、日記を許さないから、文字に耳打ちしてみたくなる。


人々の、記憶が薄れて、泥棒は成長した。習いたての漢字にふる送り仮名を、思い出せなかったこと。いつから散文を、したためられなくなったのか。すべてがまだ喪中なのに、空腹だけは、安定した暴力だった。書き慣れない漢字の書き順の、そのもどかしさに、少年の物語は、枯渇していった。いずれ描かれる小説の冒頭にわたしたちは皆、骨の息を吐きだすことになるのに。




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