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【神経集中治療のキホン】脳の酸素需給バランスの仕組と二次性脳損傷の回避について

神経集中治療(Neurocritical Care)、とても興味深い分野です!

皆様いかがお過ごしでしょうか?
 
私は一時帰国中です。更新が少し遅くなりました。
 
前回は、二次性脳損傷を中心に解説しましたが、今回は脳の酸素需給バランスの仕組みから、どの様に二次性脳損傷を回避するのかを、少し専門的に、かつ簡単に解説します。
 
 
当然ですが、二次性脳損傷を回避するためには、脳で起こっていることを的確に把握する必要があります。
 
集中治療室では心臓や肺の状態はよく観察されていますが、それに比べると脳のモニタリングは少ないと感じたことはないでしょうか?
 
脳がブラックボックスになってしまっていることがよくあります。
また、モニターを装着していても、解釈が難しいこともあります。
神経集中治療の第一歩は“脳をブラックボックスにしない‼︎”です。


でも、あまり難しく考えない方がいいですね。
 
前回解説した様な、二次性脳損傷に関する細かい知識も大事ですが、臨床ではマクロな視点でみた脳保護、つまり酸素需給バランスの確保をどの様に行うかが大切だと、私は考えます。
 
そこで、出てくるのが、この式です。

少し難しいですが、極論で簡単に考えてみましょう。

これはSjO2はCBFとCMRO2の比で成り立つと言うことを示しています。


 
SjO2 (jugular venous oxygen saturation)は脳の酸素需給バランスの結果を表していると考えてください。

酸素がたっぷり入った動脈血が脳に入って、脳で酸素が消費されて、最終的に静脈血となって出ていきますが、その静脈血にどれだけの酸素があるかどうかということを表しています。
 

それを理解した上で、CBF( Cerebral blood flow )が脳へ供給される、酸素が入った動脈血だと理解してください。

最後に、CMRO2(cerebral metabolic rate of oxygen)は消費される酸素の量です。
 
シンプルですよ。
 
CBFが低下したらSjO2が下がる。
CMRO2が上がれば、SjO2が下がる。
脳の酸素需給バランスが崩れて二次性脳損傷が起きてしまう。
 
と考えればいいのです。
 
そして、
このCBFが確保できているのか?

CMRO2が上昇していないのか?

をモニタリングして把握していくことが重要です。
 

これらのモニタリングの具体的な数値やトレンドを使用して実臨床に活かせることが普遍的に可能であればとても良いのですが、残念ながらまだ研究段階です。
 
ただ、間接的には、CBFの確保は”脳疾患の種類に応じた”適切なバイタルサインの確保によって達成でき、近赤外分光法や脳波などを用いて推測することが可能です。
 
CMRO2については、脳波で"発作が起こっていないか”、全身のシバリングが起こっていないか、発熱が起こっていないかというところを考え、それを治療することで、過剰な上昇は抑えられるはずです。
 
もちろん、SjO2の値を測定し、異常値が確認できれば、ますますCBFやCMRO2への介入が必要ということがわかりますので、SjO2を測定している施設は米国にはありますね!
 
これらの具体的な介入方法は今後解説しますので、ご興味のある方は、楽しみにしてください!

https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758118927/
にも少し書いています。
 
では、そろそろ、日本に着きそうですので、今回はこの辺にしておきます。

ではまた!


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