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"大きい会社"ほど水難事故防止対策に出資するべき理由があるかも

*2024.6.27の追記箇所があります

「日本財団 海のそなえプロジェクト」の調査

先日、日本財団の水難事故に関する調査のサマリーが公開されました。

非常に有益なデータが集約されています。
一方で、国内でデータソースが一元化されていないという課題点も指摘されてます。

現状、日本の水難事故に関するデータは、警察庁、海上保安庁、日本ライフセービング協会(JLA)などがそれぞれ異なる調査を行っているため、データの文脈や対象範囲を理解することが重要ですね。

せっかくなので、データを一部使って次の仮説を検証したいと思います。

【仮説】

"大きい会社"ほど従業員が水難事故に遭う可能性が高く、水難事故防止対策に出資することは経営面でもポジティブに働く。

なにしろ従業員数が多いですからね、どの程度影響があるのでしょうか、
検証していきたいと思います。

各機関の調査結果から

警察庁の統計によると、水難者数は約1600人、死者・行方不明者数は約800人
海上保安庁の調査では、マリンレジャーに伴う事故は年間約820人、死者・行方不明者は約240人

「日本財団 海のそなえプロジェクト」

一方、JLAの調査によると、全国約200のライフセーバーが配置された海水浴場では2000件の救助事案に対して15件の救急事案、4件のCPR事例*は全体の0.2%で、非常に少ないです。
調査期間が7月から8月に限定されているため、同等の比較はできませんが、ライフセーバーの配置は実際に効果があると言えそうです。
[*心肺蘇生法を行なった事例、蘇生事案を含む]

陽気な画像でバランスをとる

水難事故の死亡率の高さ

海上保安庁の調査をもとにすると水難事故の死亡・行方不明率は、約29%です。
警察庁のデータでは約44%で、これは山岳遭難の約9%と比較すると非常に高いです。

水難事故は、溺れたり流された場合の救助の困難さ、捜索の難しさが大きな要因となっていると推測されます。

"大きい会社"の従業員が水難事故に遭う確率

大規模な企業は多くの従業員を抱えています。例えば、従業員が10万人規模の企業において、マリンレジャーに興味がある従業員が一定割合いると仮定すると、その企業の従業員が水難事故に遭遇するリスクも無視できないものとなります。以下に具体的な推定を示します。

日本全国の就業者人口6747万人(総務省統計局:令和5年)のうち、年間の水難事故による死者・行方不明者数が800人であることを考慮すると、死亡・行方不明事故の発生率は約0.012%となります。

10万人規模の会社では、水難事故による死者・行方不明者が出る確率は概ね以下のように計算できる気がします。

死亡・行方不明事故発生率 × 従業員数 0.012% × 10万人 = 12人

この推定に基づくと、10万人規模の会社では年間に約12人が水難事故で死亡または行方不明になる可能性があると考えられます。

夏休み、楽しみですよね

経済的損失の推定

ざっくりアバウトですが、
従業員の年収が500万円、採用・研修コストが年収の1.5倍、生産性損失が年収の0.5倍と仮定すると、経済的損失は2500万円となります。

ライフセーバーの配置が効果がありそう、投資対効果は?

ライフセーバーの配置がわりと効果がありそうなので、少し具体的に検討します。
例えば、1箇所あたり1000万円でライフセーバーを配置したとします。投資コストは1000万円になります。

前述の警察庁のデータによると、年間の水難事故による死者・行方不明者数は約800人です。
また、全国の約1000箇所の海水浴場のうち、ライフセーバーが配置されていない箇所は約800箇所です。なんか都合のいい数字。

ライフセーバーの配置によって死亡率を44%から0.2%まで下げることができれば、死亡率を約99.5%下げたことになりますが、これはさすがに楽観的すぎる仮定です。
実際の効果を見積もるために、死亡率の減少率を50%と仮定し、死者・行方不明者数も半減するとします。

ライフセーバーの配置コスト
1箇所あたり1000万円でライフセーバーを配置とする
800箇所に配置する総投資コストは 1000万円 × 800箇所 = 80億円

効果の見積もり
死亡率の仮定:ライフセーバーの配置により、死亡率が50%減少すると仮定
現状の死者・行方不明者数:800人
対策後の死者・行方不明者数:400人(50%減少)
1箇所あたり:1人 × 50% = 0.5人

2024.6.27修正

この場合の0.5と1は大きな違いです。

次に、経済的損失を以下のように計算します

▼1人あたりの経済的損失を2500万円と仮定:
(賃金損失、採用・研修コスト、生産性損失の合計)
防止策による経済的損失の減少額:
(1人 - 0.5人) × 2500万円 = 1250万円

▼投資対効果の算出:
1箇所あたりの経済的損失の減少額: 1250万円
全体の経済的損失の減少額: 100億円

1箇所あたりの投資コスト: 1000万円
全体の総投資コスト: 80億円
投資対効果 1250万円 ÷ 1000万円=
100億円 ÷ 80億円 = 1.25

2024.6.27修正

ライフセーバーの配置による防止策は、少なくとも投資コストの1.25倍の効果がありそうです。*

仮説で考えていたよりは、だいぶインパクトが弱い数字になってしまいました。100倍くらいになるかと思った。。

途中からそんな予感はしていた

*補足と追記
①800人の死者・行方不明者全員が海水浴場で発生しているわけではないが、海水浴場での事故が一部を占めている可能性が高く、ライフセーバーが配置されていない海水浴場での事故リスクが高いと推定しています。
②上記の検証はフェルミ推定として行っています。
③2024.6.27に見直し、修正しました。

2024.6.27追記

何が言いたいのか

企業は、CSR活動や、社会貢献の文脈による支援をしており、それ自体は素晴らしい企業方針ではあります。とてもありがたい。
しかし、企業イメージが上がった、ユーザー数、売上が伸びたというKPIは、水難事故防止対策としては、少し遠回りな気がしています。
国政としても、80億で100億の経済的損失が防げれば、政策として悪くないのではないでしょうか?

水難事故発生確率と経済的損失という面から、水難事故防止対策への投資をしても、損にはなりません!
という結論を出したかったお話でした。

怖がらず、海で遊んでね

今年の夏は暑そうですね、海を楽しみましょう!
おわり

もちろん、寄付、協働、パートナーシップ、皆様のご協力お待ちしております。
いつもありがとうございます。

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