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海水浴場開設と海岸管理の構造の話<前編>

三浦市の海水浴場開設中止のニュース

最近、三浦市の海水浴場が開設されないというニュースが報じられました。
原因については運営費、人手不足のようですが、海水浴場の運営とはどのようなものなのか、少し触れてみます。

理由は採算と人材不足
海水浴場が閉鎖される理由として、採算が合わないことと人材不足が主な原因となることが多いです。今回の三浦市の記事の中でもこのように書かれています。

運営費の確保に欠かせない海の家の設置希望者がいなかった。海水浴場の設置者である「三浦海岸海水浴場運営委員会」も5月に解散しており、再開への道のりは険しそうだ。

神奈川新聞 | 2024年6月4日(火)

海水浴場を開設する大きな理由としては、夏の短期間で大きな収益を上げることができるからです。
しかし、近年の「海離れ」や夏休み期間の短縮、余暇の過ごし方の変化により、来客数が減少し、収益が減っています。
また、高齢化やアルバイト人材の確保が難しくなっていることも、大きな要因です。

海水浴場を設置する人がいないと海水浴場って開設されないんですね、海はそこにあるのに。
では、海岸を管理しているのは誰なのでしょうか?

複雑な海岸管理の権限

こんな記事も見つけました

海岸は建設省・運輸省・農林水産省など国の所有となっているが、管理は県に任されている。 一方、港湾や漁港、海水浴場の管理は、各々の委託管理者あるいは開設者に任されている。しかし海岸清掃の責任者は関係市町村である。このように管理諸機関が複層して硬直化しているため、責任の所在が明確でなく、実際にはほとんど管理されていないというのが実状である。結果として、海岸にはゴミが多く残されたままとなっている。

松下政経塾| 1997年3月29日


建設省?と思って日付を見ると、1997年の記事でした。
この状況は、四半世紀経っても変わらず続いています。

そもそも、海水浴場の開設とはなんなんでしょう。
多くの場合、海岸は都道府県(以下、県)の土木セクション(観光ではない)が管理しており、海水浴場の開設は市町村が、県から海岸を「借りる」形で行われます。

土木視点での管理は主に、飛砂、海岸侵食、崖崩れ等の対策に予算が使われます。
一方で観光対策としては集客が目的ですので、景観保護や関連施設の管理といったことを行います。

それぞれ、仕事内容が違うんですよね。
この点でミスマッチが生じており、県と市町村との一元的な体制が取れていません。

自治体が借り受けた海岸は、地域の海の家の事業者団体や漁協、観光協会などが主体となって海水浴場を開設します、これらの団体を一般に海水浴場開設者と呼びます。
公園管理に見られるような指定管理者制度に似ていますが、事業者それぞれが占有料や協力金を開設者としての組合組織に支払う場合もあります。

海水浴場開設者は、海岸管理を行う代わりに海岸、浜地で商売を行うことを認められるというケースが多いかと思います。

海水浴場を開設することで、それぞれどのようなメリットがあるのか

開設者のメリット

海水浴場を開設することで、事業者団体や漁協、観光協会、近隣の事業者は大きな収益を得ることができます。夏の2ヶ月間でまるまる1年間の収益を上げることも珍しくありません。しかし、来客数や収益の減少、人材不足により開設しない選択をする地域も増えています。

市町村のメリット

市町村にとっては、地域産業としての発展や短期雇用の創出が期待できます。また、管理権限を開設者に移行することで、実質的な管理を任せることができ、行政コストを削減することができます。

しかし、開設されない場合は、管理が県まで戻るので、観光や産業ではなく土木的な視点から管理されます。土木的な管理とは、護岸工事や離岸堤の設置といった海岸保全、災害対策です。もちろんコンクリート製の人工物に頼らない方法もあると、、信じたいです。

海岸は夏期には利益も生むけど、それ以外の季節は人の立ち入り制限をした方が管理コストがかからず、リスクも負わない安全策、というのが実際なのではないでしょうか。

<長くなったので、前後編に分けます。>


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