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【詩めくり】を紹介します

谷川俊太郎先生の『詩めくり』の紹介です。365日分あり、1ページ1遍の詩が欠かれている本です。文字通り日めくりカレンダーならぬ、詩めくりカレンダーというわけです。

内容が素晴らしいので、紹介したくなりました。
もっとも、好みは人それぞれですけれど。

詩めくりを読む

1984年に世に出たということは、36年前に出版された書籍というわけです。
文庫化は違う出版社…という情報は、作品を楽しむのに必要ありません。読む、妄想する、味わう、楽しむ。必要なものは身体ひとつです。

好きな一遍

あくまで自分の好みです。

三月二十二日

都市には名もない坂と名のある坂があるが
その上に降る雨は句会等の場合を除き
ただの雨である

あなたには、なにが思い浮かびましたか?

僕は雨の坂から始まる物語が、浮かびました。
傘もささず後を追う女性とか、急に坂の向こうから現れるヘッドライト、主人公を襲う車とか。まあいろいろです。

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面白い

いろいろなパターンがあります。

六月二五日

朕のかつての理想はどこへいったのか
と皇帝は叫んだ
臣民の三十六パーセントは泣き
三十二パーセントはあざ笑い
三十パーセントは無表情だった
残り二パーセントは統計上の誤差である

おもわす計算しましせんでしたか?「統計上の誤差」ってなんだか変な感じで、おっかしいです。叫ぶ皇帝と歴史の本と、いるはずのない数えた人を想像してしまいました。

意味するもの

セットでどうぞ。

一月九日

溶けかかった角砂糖と書いてあれば
きみは溶けかかった角砂糖を思い描くのか
このなまけものめ
十二月十日

題名のつけられない絵を画きたいが
得体のしれぬものにすら
得体のしれぬものという名があるのは困る
ということについて思い悩んだ画家が
何人かはいたはずである

あなたは、溶けかかった角砂糖を思い浮かべませんでしたか?僕は思いっきり思い浮かべて叱られました。言葉のちからって面白いですね。この2編は、言語的表象の特徴について…って、説明はいりませんでしたね。

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クリエイティビティを高める

ビジネス書や物語ではなく、文章自体の意味を考えさせるものを読むと創造性が高まるそうです。その点詩集ならば、まさにうってつけです。もっとも、この本は作者が「1行でも小説が書ける」という着想から書いたものとのこと。詩とはまた違う創造性が育ちそうです。

この本は日めくりなので、毎日読みたいところです。習慣化するほどのものではないかもしれません。とはいえ、何日が前のものを読むのは、ちょっとだけ切ないものです。毎日向かうデスクの上や、枕元に置いておくのがおすすめです。

僕は読書ルームに置いて読むことにしています。
もっとも、好みは人それぞれですけれど
(It's the second time.)

(谷川俊太郎『詩めくり』ちくま文庫、2009年)

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