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忘れない夏~流産のキオク②


さて前回の「忘れない夏~流産のキオク①」に続いて、心の整理と私と同じように頑張ったお母さんの悲しみが、少しでも和らぐように書こうと思う。

3人目の妊娠と同時に始まったつわりも、ややピークを抜け出し心音も聞いて、幸せを噛みしめた日から2週間。
少し大きく成長しているであろう我が子を見るため、ちょうど学童がお休みだった長女と妊婦健診へ行った。
そう、新しい親子手帳をもって。

つわりも続いているし、腹痛も出血もないし、何の疑いもなく私は健診台へ上がった。

エコーの画面には小さな赤ちゃんが映った。
と同時に私は頭が真っ白になった。
先生が口を開く前に私には分かってしまった。

2ミリほどしか大きくなっていない・・・
心臓が動いていない。
心音も聞こえない。

赤ちゃんの成長を励みに、どうにか耐え続けたつわりは何だったのか。
2週間前はあんなに力強く心臓が動いていたよ?
何が起こったの?

先生が丁寧に言葉を選んでくれて状況を説明してくれるも、
全く知らない言語で話されているかのような感覚。
言葉が耳に入ってこないとはこういうことなんだ。

後ろに座っていた長女を見ると、目に涙をいっぱい溜め、必死に耐えていた。

「ごめんね、赤ちゃんダメだった。」

年齢が高くなると、流産の確率が高くなることは頭では分かっていた。
たとえ1/100、1/50、1/10であったとしても、その一人になる可能性は誰にでもあることも分かっていた。
みんな言わないだけで、、、とか言うけれど、その一人になったことを受け入れなければならない現実はそう簡単ではなく、言葉にはならないほど残酷だった。
しかも一瞬にして、そして突然に。

待合は残酷な場所だった。
マタニティマーク、膨らんだお腹、院内に流れるオルゴールの音、、、
みんながうらやましかった。

私もさっきまでは、同じようにここにいたのに。
一瞬で天国から地獄に突き落とされるとはこのことだ。

長女にはものすごいショックを与えてしまって、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
でも、正直一人じゃなくて心強かった。

「お母さん、赤ちゃんはダメだったけど、お母さんが無事だったらそれでいい。」
帰り際、これからお母さんはどうなるのかという不安で押しつぶされそうな長女は声を絞ってこう言ってくれた。

「ごめんね、ありがとう。」
私も声にならない声で答えた。

ぎゅっとつないだ手は、前よりも少し大きく、温かかった。

・・・つづく・・・


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