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あなたは人がいちばん言われたくないことを言う。

言語化というものを言語化してみる。:1


小学生の頃、先生に「あなたは人がいちばん言われたくないことを言う」とよく怒られました。本人にそんな悪気はなくて何か感覚的に「ここツッコんでくれ」って言われてるみたいな、相手の弱点が光って見えるゲーム画面みたいな感覚がありました。ここが急所だ、ここを攻撃してくれって言われてるような感じです。で、それを口に出さないと気が済まないみたいな子供でした。まあ客観的に見れば嫌なガキですよね。それってほぼほぼ相手の失敗や欠点なのでそりゃ怒られます。

今考えてみると、これって相手の特徴を言語化してたように思います。モヤっとした何かを一言で表現する。いろんな要素をまとめるんじゃなくて余計なものを切り捨てて強い何かだけを残す。人の印象を言うなら「背が高くて顔が丸くて早口だ」じゃなくて「早口の人」って言った方がいい。たぶんそれを選んで他を捨てる感覚です。なんかうまく言えませんが、いろいろある中から本質だけを掴む感じ。

日常は言語化でできている。

人は普通に生きてる中で知らず知らずに「言語化」を行なっています。言語化なんて言うと特別なことみたいですが「言葉にする」という行為なので当たり前です。これがないとコミュニケーションを取るのはかなり難しい。
日々の仕事の中でも言語化って重要です。もちろん全てではありませんが、これが上手だと仕事が劇的に捗ります。なんつっても時間が短縮できる。モヤモヤしたものを実況中継したところで伝わるのはそのモヤモヤ感だけです。

たとえばCM作りってそれが端的に現れる仕事だったりします。なんつっても15秒とか30秒しかないですから。伝えたいことは山のようにあるけど現実的に入んない。入んないものはしょうがないです。で、どうするかですが、普通はそれをまとめて入れようとします。全部大切なんだから。
だけど入んないです。なので、何かを捨てることになる。そこでやっちゃうのが、AもBも大切だけどAの方が優先順位が上だからAだけ言ってBを捨てると言う作業。これはB派の人からしたら不満が残る。じゃあBだけ残すか。今度はA派の人が許してくれない。

そんなん不可能じゃん。って話ですが、だったらAでもBでもないCにするしかないです。つまりAもBも捨てます。Cはどこから持ってくるか。**CはAとBの「感覚」を両方感じさせる別の言葉です。**それを創造します。
胡散臭い感じしますよね。その通りです。CはAもBも満たしていません。Cは何も説明していない。だけどわかる。なんか伝えたいモヤモヤしたものをわかった気にさせるものです。というかそういうものでしかない。

たとえばJR東海の京都キャンペーンという素晴らしい仕事がありますが、有名な「そうだ京都行こう。」という言葉は京都の何も説明してないです。説明は映像が担っている。それは感覚的なものです。そこにこのコピーが乗ることで結果的に伝えたいことが伝えられる構造です。

言葉ってやつはコミュニケーションの一番有効な手段ですが、実はすごく不自由なツールでもあります。言おうとすると言い切れない。恋人に自分の気持ちを伝えようとする時、どうしても正確に伝えられない。どんなに言葉を尽くしても結局言い切れてない気がしてしまう。完全ということはあり得ない。だったら説明はやめて「月が綺麗ですね」と言えばいい。(…意味不明)

言語化はモヤモヤをカタチにする作業ですが「要約」ではないんです。

感覚の一番尖ったカケラをポンと置いてわかった気にさせる。理解ではなくてわかった感覚を作る。
これって別にCMだけの話じゃないです。上手な言語化ができると「それってこういうことでしょ」ができる人になる。
相手が悩みを持っている。そのとき**「それってこういうことでしょ」って的確に言えたら、たぶん90%くらいその悩みに答えたことになる。**悩んでいてそれをひと言で言えないってことは、その悩みの本質というか核心みたいなことをその人自身がわかってないということなんで。
どんな仕事でも人と関わる以上すべてはコミュニケーションなので、そう考えるとこのスキルは有効です。(ただし全能ではない)
僕が曲がりなりにも長く仕事ができていたのは、たぶん子供のときに得意だった「人の嫌がることを一言で言う能力」が活かされてたからだと思っています。なのでお宅のお子さんがそういう子供だったら「それって才能」って褒めてあげてください。ではでは(それが結論か?)

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