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目から鱗のハウツー営業㉜【[提案力vs仲良くなる事]の議論は何故終わらないのか?】

営業職にとっての最大の武器は何だと思いますか?
現在では、
【お客様の課題を解決する力、提案力である】
という意見が最も多く見られます。
対して、
【お客様と仲良くなれること、コミュニケーション能力、人柄である】
という意見も未だ根強く残っており、この両者の意見は真逆の考え方として捉えられていますね。
 
皆さん、明けましておめでとうございます。
本年もこの【目から鱗のハウツー営業】シリーズと弊所サトミ営業相談所をよろしくお願いいたします。
 
さて今回は新年最初の回でもありますし、皆さんと頭の体操をしてみたいと思います。
 
冒頭でも述べましたが、
多くの営業職が抱いている素朴な疑問に
【営業職に必要なのは
提案力なのか、或いはお客様と仲良くなれることなのか?】
というモノがあります。
 
(提案力:顧客が抱える課題を抽出・把握し、自社商品による解決方法を考え、それを分かりやすく伝える力』と定義します。)
 
今回はこの問いの答えに直接迫るのではなく、
『何故この対立が生まれるのか?
そして何故その議論に未だ決着がつかないのか?』
について考察し、皆さんと頭の体操をしてみたいと思います。

メーカー営業時代の話:Aさんからの質問


私がメーカーの営業職だった時の話です。
私が担当する代理店の営業マンAさんにこんなことを相談されました。
Aさん「川端さん、ウチの営業部長が
とにかく営業マンは提案力だ。
 お客様の課題を解決しろ。
 お客様に刺さる提案をしろ。

 それが全てだ。』と言うんです。
 
でも、かつてのカリスマ営業マンでもあった社長は
真逆の考え方を私たちに指導してくるんです。
結局営業は人間関係だよ。
お客様と仲良くならないと何も始まらない。
まずは世間話をして、趣味の話をして、
たまには飲みに行ったり、ゴルフに行ったり・・・
そうやってじっくり人間関係を作っていれば、
自ずとチャンスは巡ってくる。
それが営業だぞ。
」なんて言うんです。
 
部長と正反対過ぎて、正直困っているんです。
部長は『まあ社長は昔の人だからな。今の営業はそれじゃ売れないんだよ」と遠回しにスルーすればいいって感じなんです。

川端さんは凄まじい提案力を持っているのに、
持論としてはどちらかと言うと社長寄りですよね?
だから不思議なんです。
一体正しいのはどっちなんですかね?」
 
さて、皆さんはどのように思いますか?
今回はこの質問に対する私の回答は述べません。
 
今回私が考察するのはあくまで
『何故この対立が生まれるのか?
或いは何故その議論に未だ決着がつかないのか?』です。
 

営業部長談話


その後、部長にもそれとなくその考えを聞いてみました。
部長「最強の提案力を持つ川端さんなら分かってくれると思いますけど、
社長の考えは正直古いと思います。
いや、これは社長にも直接言っていることですから、悪口じゃないですよ。

昔は義理人情の営業が通用していた時代だったと思うんです。
だから雑談で盛り上がって、ゴルフ行って、お酒を飲みに行って
仲良くなれたら注文が転がり込んできた。
でも、今のお客様は違います
よ。
 
正直私も若い頃は社長と同意見だったんです。
でももっと成長したかったから、ビジネス書やマーケティング本などをとにかく読んで勉強したんです。
すると、やっぱりどのマーケターや優秀な営業マンも
【お客様の課題をいかに解決するのか】に力点を置いてるんです。
だから課長になってプレイイングマネージャーになってからは、
とにかくお客様の課題を解決することに集中したんです。
要するに、努力して営業手法を改めたんです。
それで契約も順調に獲得できた。部長にもなれた。
社長だってそれを知っているはずなのに・・・
 
今のお客様は我々営業職に自分たちの課題を解決することを求めています。
お客様の課題を解決できる提案をする、
その提案力で勝負するのが今の営業のやり方なんです。
そうした中で結果として仲良くなることはあるでしょうが、
必須事項なんかじゃないし、
それを目標とするのはもっとおかしい。
お客様の課題を解決することによって初めて契約が近づいてくるんです。
まさにウィンウィンです。
今のビジネスの常識ですよ」
 
部長の発言は現在の管理職としてはスタンダードなモノです。
普段からビジネス書を読み込み、ビジネスの研鑽に熱心な方ほどこうした持論になります。
公平に言うならば、一方で社長のような意見を持っている方もやはり一定数います。
 
では、部長が言うように昔と今という時代の変化による違いなのでしょうか?
つまり、時代とともにお客様に変化が見られ、お客様が営業職に求めることも、営業職のあるべき姿も変わったのでしょうか?
 
 

整理しましょう。


営業力=契約・売上を獲得できる力と定義するなら
1⃣営業力=提案力(課題を解決する力、プレゼン能力・営業テクニック)
2⃣営業力=人間関係構築力(お客様と仲良くなれること、それを可能にするコミュニケーション能力・人柄)
1⃣2⃣のいずれかが正しいのかを部長は解説しています。
 
繰り返しになりますが、部長は
1⃣:現在の営業職が求められるスタイル
2⃣:かつての時代の営業職のスタイル
と位置づけていて、故に現在では正解は1⃣であると結論付けています。
 
多くのビジネスパーソン、営業系の発信者に見られる意見ですが、よく考えればいくつか疑問を抱きませんか?
 

疑問❶とその考察


部長と社長の意見の相違は元を辿れば、
「営業職としての二人の契約獲得要因の履歴の違い
」です。
 
部長は自身がお客様の課題を解決した事によって契約を獲得できたと感じ、
社長は自身がお客様と仲良くなれたことで契約を獲得できたと感じているから
このような意見の相違が生まれている訳です。
 
勿論、これは部長・社長間に限って生まれた珍しい現象ではありません。
営業の世界ではそこかしこで生まれている現象です。
 
営業という仕事を同じようにしているのに
真逆に見える手法を取りながら、時代が変わったとはいえ共に結果を出すことが何故出来たのか?

 
一つの仮説として、
部長には提案力を求めるお客様との出会いが多く、
社長には仲良くなることを求めるお客様との出会いが多かった、
という可能性が挙げられます。
 
確かに営業職自身が重要視していることが違えば、
それを評価するお客様の割合、つまり契約者に占める割合が高いことは
十分有り得ます。
しかし、仮にそうであれば部長が言うように、
1⃣が正解で2⃣は不正解と言うのは無理があります。
どちらでも結果を出せるからどちらでもよい、という結論にしかならないはずです。

そうでなければ、部長の指摘通り
時代の移り変わりとともに、お客様が営業職に求めていることが変化したという理由しか考えられません。
この点は、この後考察します。
 

疑問❷


部長が言うように
かつてはそれでよかったのならば、
逆に、現在において社長は営業職として結果を残せないのでしょうか?
 
私は社長が一人の営業職として
現在においても結果を残せる可能性は十分あると思います。
何故なら、現在においても社長と同じ価値観・スタイルを貫いている営業職が一定数結果を残しているからです。

この時点で、
【時代とともにお客様が営業職に求めているモノが変わってきた】
という意見は
【一見もっともらしく聞こえるがほとんど根拠がないこと】
のように見えます。
 
 

ここまでのまとめ


これらが
『営業職に必要なのは
提案力なのか、或いはお客様の懐に入り込み仲良くなれることなのか?』
の議論に決着がつかない理由です。
いずれか一方がその他一方を圧倒するほど、両者の手法による結果の差が生まれていない
というシンプルな理由です。
 

 
もし部長が言うように
1⃣が正しく、2⃣がビジネスの変化に取り残された時代の遺物ならば
こうした二項対立にはとっくに終止符が打たれているでしょう。
つまり、2⃣のようなスタイルを貫く営業職が
1⃣のスタイルで営業活動を展開するライバル企業の営業職に
駆逐される展開がそこかしこで起きるはずです。

そうした事が起きれば、営業職は生き残りの為に
誰に強制されるでも教えられることもなく、
自発的にこぞって1⃣のスタイルに移行するはずです。
勝負の世界では当然の行為です。

結果として、こうした議論自体が自然と消滅するのではないでしょうか?
残念ながら、どの現象も未だ見られません。
 
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ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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