「東京からですが、拝観させていただけますか」と言えません
コロナ禍が始まって、仏像拝観が思うようにできなくなってしまった。緊急事態宣言発令後しばらくは「電車に乗らない」「人に会わない(予約拝観なし。御朱印拝受しない)」というマイルールで、近場のお寺をまわってきた。6月末頃からおそるおそる予約拝観や遠征を始めようと思っていた矢先、7月に入ってから都内の新規感染者数が右肩上がりで増え続けてしまっている。
正直つらい。そろそろ予約拝観を再開したいのだが、「東京からですが、拝観させていただけますか」と言えなくなってしまった。
1) 予約拝観とは
私の仏像拝観は、予約拝観がメイン。自治体の文化財サイトなどを調べて、お会いしたい仏像をピックアップし、地図で移動経路も調べたうえで、お寺様にお電話する。「東京の〇〇と申します。初めてお電話いたします。私、仏像が大好きで、、、」とまずは簡単に自己紹介。そのうえで、「△△寺様の阿弥陀如来様を拝観させていただけませんでしょうか」とお願いする。
地域により温度差はあるが、秘仏である場合や日程が合わない場合を除き、あまりお断りされることはない。むしろ、「東京の人が関心をもってわざわざ訪ねてくださった」と言っていただけることが多い。
拝観者である私も、観光寺院を参拝する気軽さとは異なり、かなりの注意と敬意を払ってお参りさせていただいている。
そうした努力を惜しまないのは、ひとえに、仏像にお会いしたいからだ。写真で見るだけでは話にならないのだ。実際に間近で拝観することでしかわからないものがある。それが仏像拝観なのである。
さらに、予約拝観では、お寺様や奥様、世話役の方々とお話をする。それが本当に楽しいのだ。予約拝観については、よい思い出しかない。
2) 東京から予約拝観をお願いできない!
しかし、コロナ禍が始まって、予約拝観ができなくなってしまった。東京都内の新規感染者数が7月に入って3桁になり、100人台から200人台、そして、300台へと、増え続けている。
”ウィズコロナ”の時代(←この言い方好きではないが)には、自分は無症状の感染者かもしれないという意識をもって行動すべきだと思っている。大切な行動指針だとは思うのだが、それを仏像拝観にあてはめてしまうと、まったく身動きが取れなくなってしまう。
特に、予約拝観は難しくなる。私がお会いするのは、仏像だけではないからだ。訪問した先のご住職や奥様、地元の世話役様とお会いしなければ、拝観はできない。皆様よい人ばかりだ。仏像を通して私に感動を与えてくださる人々を万が一感染させてしまったら。。。そう考えてしまうと、私は、本当に動けなくなる。
まして今の段階で、東京から地方のお寺や収蔵庫の拝観をお願いするなど、私にはできない。
愛があるから、愛のために、お会いできなくなってしまうというこの矛盾。つらい。つらい。つらい。
いつになったら、堂々と言えるのだろう。「東京からですが、拝観させていただけますか」と。
【仏像案内】
写真の石仏は、永泉寺(東京都八王子市)の山門近くに安置される不動明王像。天明8年(1788)の作。眼力強め。これは予約なしで拝観可能。永泉寺は幕末から明治にかけて生糸で栄えた鑓水商人の菩提寺である。近くには、鑓水商人の寄進した鑓水諏訪神社(拝殿などが市有形文化財)や、絹の道資料館も。文中の写真は永泉寺近くに残る、絹の道。都内とは思えない田舎道だ。お近くの方はお散歩にぜひ。
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