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「組織をよくすること」を諦めたくない全ての方へ

久しぶりに編集を担当した本が発売を迎えることになりました。

『組織が変われない3つの理由
〜「元気」と「成果」を同時に実現する組織のつくり方〜』


「組織をよくしたい」と願うすべての方のための本

この本は「組織をよくしたい」と願う、全ての方のための本です。
社長、役員、管理職、ベテラン、若手……その立場に限らず、多くの方は
「自分たちの組織をよくしたい」
と願っているはずです。

だけど、その願いを実現するのって、簡単ではありません。

・外部コンサル会社に依頼し、新たな制度・戦略を構築したものの現場で実行されない
・組織開発に取り組みチームワークは向上したが、肝心の「業績」に変化は見られない
・大きな予算を投じてビジョン、ミッション、バリューを制定し、社内にアピールしているけれど、メンバーの行動は変わらない

などなど、考え得ることに取り組んでみたものの手応えが感じられない方も多いのでは? もしくは、色々なことに取り組んではみたものの、なかなかうまくいかなくて「もう疲れてしまったよ……」という方もいるかもしれません。

うまくいくことばかりではないけれど、
モヤモヤすることも多いけれど、
どれだけ疲れ果ててしまっても、
やっぱり、「組織」をあきらめたくない

この本を読んでいただきたいのは、そんな想いを持つ方々です。

じゃあ、どうしてそこまでお勧めできるのか。
私の「推しポイント」は、次の2つです。

①今の「組織開発」を、含んで超える視点&技がある

私がビジネス書をつくるようになったのは2011年。
この10年少しのあいだで、組織における「人間観」は大きく変化しました。

組織のメンバーは、誰もが生産性を高めるために努力をするべきだ(それができない人は、その組織を去ることになっても仕方がない)。
組織において、人は取り換え可能な部品である。

このような、まるで人を「機械」のようにみなす人間観は時代遅れだと、もう誰もが気づいています。

だからこそ、組織のハード面(制度、しくみ、構造)だけではなくてソフト面(関係性、文化、価値観)にも力を入れていく必要がある。
そんな必要性から、再び注目されるようになったのが「組織開発」でした。

私も、こんな本の編集に携わりました。

ただ……ここからは毒を吐きます。

私の体感として、2020年前後から「組織開発コンサルタント」を名乗る方が増えた気がしています。

「注目される=ニーズが高まる=仕事にする人が増える」

ということなのでしょう。
ニーズ(必要性)を読み、対応するのは、大切なことです。そして、多くの方は、真摯に「組織開発」に取り組んでおられます。

ただ、その一方で、組織開発が注目されすぎてしまった結果、少し歪んだ形で捉えられているようにも思うのです。

組織開発は、エンゲージメント向上に繋がります。
組織開発は、関係性をよくし、同じバリュー(価値観)に基づき、よい距離感覚でビジョンに向かっていくために役に立ちます。

ですが、そもそも組織は、どうして存在するのか
そこには必ず「ビジョン」「ミッション」の実現があるはずです。
そして、エンゲージメント向上も、関係性も、価値観も、組織開発も、すべてはそのための手段のはずでした。

でも、組織開発が注目され過ぎてしまった結果「組織開発をすること」が目的になっているケースに出会うようになりました。

元々の組織開発は、そうではなかったはずなのに……

そんな違和感を抱いているなかで出会ったのが本書の企画でした。

著者の西田徹さん、山碕学さん、そして監修の松村憲さんとの最初のMTGで聞いた次の言葉、

これからの組織開発は「総合格闘技型」であるべきだと思うんです

私は、この考え方に射抜かれたのでした。

本書ではそんな「総合格闘技型の組織開発」

「戦略的組織開発」

と呼んでいます。

有名コンサルティング企業等が元々やっていた「戦略アプローチ」と、この数年でかなり普及した「組織開発アプローチ」。これら2つの目的、良識・メリットを含みながら、それぞれの限界を超えていく。インテグラル(統合的)な組織開発を提案してくれるのが、本書の最初の特徴です。

『組織が変われない3つの理由』P29より

しかも、それが机上の空論じゃないんです。
著者のお二人の豊富な実践と学びが土台にあるからこそ、理論的背景をもちつつ、すぐに使える「処方箋」「技」にまで落とし込まれている。
これは本当にすごいことです。

「ここまで教えていいんですか?」と思うほどに、すぐに取り入れられる技を紹介しているので、私も早速、マネさせてもらっています。

②「”ガチ対話”とは、結局何をすればいいか」がわかる

そしてもう一つの推しポイント。
それは「ガチ対話」を掘り下げている点です。

組織開発やチームビルディング等を通じて、人の内面・関係性に踏み込んでいくと、必ずと言っていいほど「対立」「葛藤」が見えていきます。
お互いに本音で向き合うからこそ「対立」「葛藤」が起きるとも言えるし、元々あった「対立」「葛藤」が、やっと明るみになった……など、色んなケースがある思います。

いずれにしても「組織開発」と「対立」「葛藤」は、切っても切り離せないわけです。

「対立」「葛藤」は「力」になる。
「対立」「葛藤」にこそ、組織を成長させる「希望の源泉」が隠れている。

多くの方は、そう直感的に気づいています。

じゃあ「対立」「葛藤」に対してどうアプローチすればいいか

そこで「対話」——組織開発の言葉を借りるならば「ガチ対話」——が必要になるわけですが、この言葉って、ある種の「思考停止ワード」になりつつある気がします。

「対話」が大切なことはわかっているし、社内でも「対話」が推奨されている。でも「実際にどうやって行うか」……という話になると、どうも口ごもることが多いような気がするのです。

実際に「対話の場」をうまくマネージしている方は、いらっしゃいます。
ただ、多くの場合、コンサルタント、コーチの「職人芸」になっていて、マネできる「型」にはなっていないように感じます。

でも、実は、この「対立」「葛藤」を扱うのに長けた知見があります。それが「プロセスワーク」「プロセス指向心理学」です。

と、前置きが長くなりましたが、この本の2つ目の特徴は、これ。

対話・葛藤を力に変える知恵をもつ
「プロセスワーク」「プロセス指向心理学」
を組織開発に応用している

プロセスワークの知見を組織開発、特に「対話」の場に取り入れることで、「本当のガチ対話」をしていくための手がかりを掴めるようになります。

組織が変われない3つの理由』P83より

「プロセスワーク」は、近ごろこれらの本の翻訳出版で、再び注目を集めています。

プロセスワーク、プロセス指向心理学って、とても深い知恵に根差していながら、活用範囲が広い「統合的心理学」です。
でも、一つ致命的な弱点があるんです。
それが「わかりづらい」こと

「プロセスワーク」「プロセス指向心理学」とは、ユング心理学の専門家だったアーノルド・ミンデル氏が、物理学やシャーマニズム、道教(タオイズム)など、さまざまな叡智をまとめ、対人支援やファシリテーションに応用した実践心理学です。

……と書いてはみたものの、おそらく多くの方の頭に「?」が浮かんだのではないかと思います。

実は、私は、3年かけて「プロセスワーク」を学んできました。
とても大切な智慧と出会えた実感はあります。対話やファシリテーションのスキルは磨かれたと思います。そして、この智慧を多くの方と分かち合いたいと、強く願っています(私たちのところに留めておくのは勿体無い!)

ただ、いざ言葉で分かち合おうとすると「何て説明すればいいのだろうか…」と困ってしまいます。

その点、この本はすごい。
おそらく、現時点で、世界で一番わかりやすいと言っても過言ではない「プロセスワークの入門書」としても読める!特に、巻末の付録「プロセスワークとは」は秀逸です。

「ガチ対話」のやり方に迷いがある方はもちろんのこと、プロセスワークの関心を寄せている方にとっても、興味深く読める本に仕上がっています。

人・組織への深い洞察に裏付けられた本

「本の魅力」≒「著者の魅力」です。

じゃあ、この本の魅力(著者の魅力)とは何か。
それは「人・組織に対する洞察の深さ」です。
言い換えると「人・組織に、どれだけ真摯に向き合ってきたか」

メインで執筆された西田さんは、リクルートで「組織開発」に取り組み、その後はボストン・コンサルティングでがっつり「戦略アプローチ」にも取り組んで来られました。だけど「組織開発だけ」でも、「戦略アプローチだけ」でも、組織は変わらない(変われない)……そんな経験をなさってきたそうです。
もう一人の著者である山碕さんも、同様の場面に立ち会ってきたそうです。

表紙のコピーになっている
「こんなに頑張っているのに、なぜ私たちは変われないのか?」

これは、著者のお二人が、過去、痛感してきた想いなのではないでしょうか。

この問いと向き合い続けるって、かなりしんどく、大変なことです。
だけど、それでも逃げることなく、真摯に向き合ってきたからこそ見えてきた世界があるのでしょう。

本書で紹介している「3つの理由」、そしてその背景にある理論・処方箋は、お二人のこれまでの奮闘の経験・歴史の上に成り立っているものです。

そんなお二人の智慧の結晶は、

「こんなに頑張っているのに、なぜ私たちは変われないのか?」

そして、

それでも、組織を良くすることをあきらめたくない

と、今まさに感じている方が、潜在的に必要としているものであることは間違いありません。

本書を通じて、その智慧が引き継がれ、一人でも多くの方、そして一つでも多くの組織が、望む未来に向けて、力強く歩いて行けるようになりますように!

おまけ|2年半ぶりの新刊です

末筆で余談までに。
実はこの本は、2年半ぶりの新刊となります。

がっつり企画・編集に携わったのは、かれこれ2021年6月以来。
復帰作がいきなり、460ページ超のしっかりとしたビジネス書になるとは思いませんでしたが……(おかげさまで、一気に勘が戻りました)

本書は、私が編集者としての表向きの仕事を休んでいた期間があったからこそ生まれた1冊です。

本をつくっていない時期に、何をやっていたのか?

ヘナも売っているし、修行もやっているのですが、
実は「組織開発」や「ガチ対話」の支援にも取り組んでいました。

そうなんです。
私自身が、実務者で、この本の「読者」でもあるわけです。
「編集者は最初の読者」と言われているけれど、名実共にそうなりました。

人・組織と真摯に向き合うって、楽しさも、しんどさもあります。
ですが、何より味わい深くて、おかげさまで多くを学び、濃密な経験をさせてもらっています。

本書では、そんな実務に携わったからこそ見えた悩みに、たっぷり答えてもらいました。

あと、実務者になってつくづく思うのだけど、本はコスパがいい!!!
これだけ役にたつ知識・ノウハウが、1回の飲み代より安く学べるなんて、本の相場は相対的に安すぎるとさえ思います。

というわけで「2600円+税」とは思えないほどの智慧が詰まった1冊に仕上がりました。ぜひお読みください。
そして、それぞれの現場・組織で活かしていってください。

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