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タイの高校生向け日本語教材「あきこと友だち」

「あきこと友だち」とは

「あきこと友だち」(以下「あきこ」)はバンコクの国際交流基金が作成した、タイの高校で一番使われていると言っても過言ではない日本語の文法と漢字がメインの教科書である。

2016年に改訂版が出て、語彙や内容が見直され、イラストも新しくなった。
(あまりにもあきこの顔が変わってしまったので、学生たちは「先生!あきこが整形しました!」と騒いでいた笑)

こちらがあきこの衝撃のビフォーアフター笑

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全6冊(CD付き)で、副教材の問題集も3冊出ている。

私の学校では私が文法指導担当なので、私がメインで「あきこ」を使っている。高校1年生で「あきこ」1と2、2年生で3と4、3年生で5、6を勉強する。

「あきこ」の構成

全29課
文法構造シラバス

課の構成は以下のようになっている。

とびら(どんな勉強をするか、何ができるようになるか確認するページ)
どんなばめん?(CDを聞いて内容を把握)
れんしゅう(文法の練習問題)
話してみましょう(会話のロールカード、トピックなど)
読んでみましょう(読解問題)
書いてみましょう(文型を使ってまとまった文を書く)
聞いてみましょう(聴解問題)
まんがでまとめ(課の文法を使ったまんが)
Can-do Check(何ができるようになったか、自己採点するページ)
文法(タイ語で文法解説をしてあるページ)
ことば(新出単語)
漢字(新出漢字)
ミニ情報(文化解説)

てんこ盛りなのでもちろん授業内で全部扱ってる時間はない。

「あきこ」の好きなところ

タイの学生に馴染みのある語彙や場面設定
食べ物ならトムヤムクンやソムタム、場所ならバンコクやチェンマイ、プーケット、乗り物ならトゥクトゥクやバイクタクシーなどタイの語彙がたくさん出てくる。

ちなみに「仏教」は1課、「お寺」は4課で出てくる語彙。さすがタイ!

登場人物はタイの高校に留学している「あきこ」と、ホームステイ先のタイ人一家や学校の友だち。タイの学生にとっては「みんなの日本語」のミラーさんやタワポンさんより身近で親しみが持てる。

「どんなばめん?」と「まんがでまとめ」
「どんなばめん?」と「まんがでまとめ」は改訂版から新しく作られたページ。

「どんなばめん?」は文型がどんな場面で使われているかを導入するためのリスニング。例えば「あきこ」は10課で「〜てください」が出てくるが、「て形」が未習でもキーワードさえ聴ければ答えられるようになっている。私はこのページを導入に使うことが多い。

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「まんがでまとめ」は課の文型や漢字を使ったまんがで、学生たちは割と気に入っている様子。課の最後に、勉強した文型を確認しながらみんなで読んだり、役を割り当てて読んだりしている。

内容はそんなにおもしろいわけではないが、自分の力で日本語のまんがが読めることは、学生たちにとっていい自信になると思う。

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時々、こんなオチのある話もあり。

資料が充実している
タイ人のノンネイティブ教師が文法を教えることが大半のため、教科書は問題の指示文も全てタイ語で書いてあるが、バンコクの国際交流基金のHPで、問題文の日本語訳やイラスト集も無料でダウンロードできる。

「あきこ」の問題点

内容が多い
特に高2で学習する「あきこ」3、4は2冊で10課〜21課まで計12課あり、これを1年間でやるのはけっこう大変。ここ2、3年はICT教材のおかげで効率よく進められるようになったが、以前は放課後も補習してやっと内容が終わるような感じだった。文法も難しくなるし、漢字も多いので、どうしても詰め込み授業になりがち。

「あきこ」を勉強しても大学入試の内容に届かない
先の内容と矛盾するが、タイにもセンター試験的なものがあり、日本語コースの学生は第二外国語の科目として日本語を受験する。その問題がかなりクセが強く、「あきこ」にない文法や漢字(しかもルビなし)が混ざっていたり、おや?と首をかしげてしまうような問題も多々あり、「あきこ」だけ勉強しても、全く歯が立たない。

正確に言えばこれは「あきこ」の問題ではなく、入試を作成する側の問題だ。個人的には入試を変える必要があると思っているが、改正される様子は今のところない。(小声)

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(過去問から抜粋)
高校生がいつ使う??みたいな文やら

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文化や日本事情に関する問題も毎年数問出る。

数年前は、お風呂のお湯の温度は何度か?みたいな問題があったらしいが、そんなの人それぞれだろ・・・(白目)

このセンター試験的なものの第二外国語は、日本語の他にも中国語、ドイツ語、フランス語、スペイン語などがあるらしい。それらの難易度と比べて、日本語がずば抜けて難しいなんてことはないのだろうか。データがないのでなんとも言えないが、もしそうだとしたら日本語を受験する学生は気の毒だ。

おわりに

タイに来るまで「タイ人の」「高校生向けの」みたいな、使用者が限定される教科書はほぼ使ったことがなかったが、教える相手が全員「タイ人の高校生」なので、やはり使いやすくて、よくできたいい教科書だと思う。こんなにいい教科書があるところに、タイの日本語教育の歴史や熱意を感じている。

「あきこ」の他にもタイで使われているタイ・オリジナルの本や、私が教えるときに使っている教材やサイトなど、また別にnoteを書いてみたいと思っている。





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