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【小説】の連載が終わったので、宣伝とぼやきをつらつらと書いてみる。

 ということで、「あの海に落ちた月に触れる」の連載が終わりました。最後まで読んで下さった方、コメント下さった方、またこれから読もうと思っている方、皆様ありがとうございました。

 一応、この記事で知ったという方もいると思いますので、URLを貼らせてください。


 サムネイル?っぽい画像の女の子、ちょっと良いですよね。
 今回の連載は全10話だったんですが、その全てに女の子の写真を「みんなのフォトギャラリー」からお借りしました。

 そのフォトギャラリーの中に写真家の青山裕企の写真があって、え? これ使って良いんですか!?ってなって、所々使わせていただきました。
 熱心とまでは言えないのですが、僕は青山裕企の写真は昔から好きなんです。

 最初の出会いは「消失グラデーション」という小説の表紙でした。

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 見た瞬間、買うことを決めたので、完全なるジャケ買いですね。
 ちなみに「消失グラデーション」は第31回横溝正史ミステリ大賞の大賞を受賞していて、ミステリーとしてもむちゃくちゃ面白い作品でした。
 これこそ映像化が絶対に不可能な傑作という感じでした。

 それから時折、これは!となって調べると、青山裕企の写真だってことが続いたので、僕は彼の写真が好きなんだと思います。
 なので、青山裕企の写真を自分の小説のサムネイル的なところに表示できたことは、とても光栄なことでした。完全に無許可ですけども。

 今回は宣伝でもあるので、「あの海に落ちた月に触れる」のあらすじも紹介させてください。

 夏休みの宿題をやっていない中学三年の夏、矢山行人の幼馴染の西野秋穂が学校をずる休みし始める。お見舞いに行くと古いテレビゲームをやっていて「はじめちゃったから。最後までやってみる」とのことだった。
 手つかずの宿題を抱えた行人が頼ったのは、近所の空き地で隠れて煙草を吸っているクラスメイトの陽子だった。
まぁ、良いだろう。君の宿題を手伝っても良い
 と陽子は言い更に続ける。「その代わり、ぼくのお願いを聞いてもらうよ
 夏休みの宿題を終わらせる代わりに頼まれた陽子のお願いが、行人を一人の女の子と出会わせ、神様の場所へと導いていく。
ねぇ、行人くんは、未来予想図ってある?
僕の未来予想図は、好きな女を毎晩抱いて眠る、かな
うわぁ
おい、なんだ、うわぁって

 となるかな。
 もうホント、うわぁですよね。

 矢山行人くんは幼馴染の女の子、西野秋穂が世界で一番大切だと思いつつ、昔の約束などに囚われた結果、セックスの対象ではなく、あくまで守る対象としてだけ見てしまっている男の子なんですが。
 その上で「未来予想図は、好きな女を毎晩抱いて眠る」とか平気で言っちゃうんだから、「うわぁ」って言われるよね、そりゃあ。

 けど、男の子にはそういう好きな人を性の対象として見れない時期って確かにあるような気がするんです。というか、僕にもそういう時期は間違いなくありました。
 最近ツイッターとか見ていて「昔から、好きな男とだけはセックスできなかった。あんな、男だけが楽しくて、女には苦でしかない行為を求めてくるなんてこの人は私のこと好きじゃないんだ、って思ってしまって悲しいから」というのを見かけて、男女関係なく、そういう感覚はあるんだなぁと思います(いや、あって当然だと思うんだけど)。

 なんというか、そういう性に関する不安定な時期って確実にあって、そんな内容を書けないかな?と思って、「あの海に落ちた月に触れる」を書いていたような気もするんですけど、結構前なのであんまり覚えていないんですよね。

 ただ、冒頭の「彼女が十人いる男が最初に連絡をするのは十番目の女だ。」って言う暴論を気に入って書き始めたのだけ強く覚えています。
 ホントあやふやな裏話で申し訳ないです。笑

 ちなみに、僕はこの行人と秋穂の組み合わせを気に入っていて、掌編でも書いています。
 こちらです。

 読んで下さった方だとタイトルで分かっていただけれるかも知れませんが、主人公の視点が秋穂になっています。
 ついでに二人は高校生になっています。

「あの海に落ちた月に触れる」はちょっと長い、と思う方よろしければ、この掌編を読んでいただければ幸いです。
 高校生とちょっと成長していますが、「あの海に落ちた月に触れる」の前に読んでも問題ない内容になっています。

 あと、白状するとnoteの「あの海に落ちた月に触れる」連載終了に合わせて新しい掌編を掲載するつもりでいたんですが、全然完成していません。
 どこかのタイミングで必ず書くので、掲載したら読んでいただけたら嬉しいです。

 ちなみに冒頭が多少あったので、こちらに載せます。多分、変わるのでこんな空気かぁと思っていただければです。

 ○○○

【仮】神の子どもは「思い出」の中で服を着る。

「内臓って触られたこと、ある?」
 と言ってから陽子は煙草を咥えて火を点けた。

「普通、ないんじゃない? あっても手術とかで麻酔されてだろうし」
「そりゃあ、そーだよね。行人は内臓触れたら、どんな感じだと思う?」
「えー」言われて素直に考えてみる。「なんだろ、おえって感じかな?」
「あ、それ良いね」
「良いのか?」
「いや、分かんないけど」
「どういうこと」
「いや、私はぞわぞわすると思うんだよね。って言うか最近、内臓を触られたような気持ちになったことがあってさ」
「へぇ、内臓を触られるって、普通に生活しててあるもんなの?」
「いや、無いんだけど」

 そりゃあ、そうだよな、と内心ぼやきつつ僕は煙草の煙を空中に吐き出す。陽子は気にせず、続ける。
「最近、付き合う?って空気の男の子がいてさ、なんて言うか人生経験として、付き合ってみようかなって思ったんだよね」
「ふーん。陽子ってクラスでもまぁまぁ人気だよな」
「告られたことはないけどね。それこそ、秋穂の方がモテててるんじゃない」
「知らね」
 短く言って、煙草を携帯灰皿に押し込む。

 くふふ、と陽子は笑ってから、「その付き合う?って空気の男の子と二人きりになってさ、突然、喋らなくなったのよ」と言う。
「ほうほう」
「で、あー、キスされる空気かなぁって。まぁいいかなぁ、顔は嫌いじゃないし、って思ってたら服の中に手を入れられたのね」
「んん?」
「よく分かんないけど、胸を触りたかったみたいなんだよね」
「キスよりも前に?」
「まぁ、多分」
「変な奴」
「同意」
 と陽子は言って、「携帯灰皿忘れたから、吸い殻入れさせてくんない?」と言う。良いよ、と携帯灰皿を開いて、差し出す。ありがと、と陽子が吸い殻を入れる。

 僕たちは中学時代から一緒に煙草を吸っている三本の木がある空き地にいて、相変わらず陽子が左の木に背を預けていて、僕は真ん中の木の根元に荷物を置いてる。
 陽子がスクールバッグから缶チューハイを取り出した。「ちょっとぬるくなってるかもだけど、いる?」と言う。
「いる」と言って、巨峰の缶チューハイを受けとってから、「って言うか、最初に出してくれたら、これ飲み干してから煙草吸えば携帯灰皿要らなかったのでは?」
「そーだけど、アルコールよりも前にニコチンを摂取したかったんだよね」
「まぁ、その気持ちは分かるけど」
 陽子は桃の缶チューハイのプルタブを開ける。

「つーか、今更だけど、校の制服で煙草吸って酒を飲むって、おかしくね?」
「秋穂がいたら怒られるだろうね」
「見つからないことを願うわ」
「うはは、その時は一緒に怒られてあげる」と笑ってから、陽子は続ける。
「でね、顔は嫌いじゃなかった付き合う?って空気の男の子に突然、服の中に手を突っ込まれて、身体を雑にまさぐられるとさ、ぞわぞわってしちゃって、突き飛ばしちゃったんだよ」
「まぁ、そーなるか」と頷きつつ、僕もプルタブを開けて、巨峰の缶チューハイに口をつける。少しぬるいが飲めないほどではなかった。

「身体触られるのが普通に嫌って言うのは、まぁあるじゃん」
「あるだろうね」
「けど、それよりも服の中に手を突っ込まれたことが私は嫌だったんだよ」
「ん?」
「なんて言うかさ、服って私を守ってくれてるものじゃん。外側って言うかさ。服を着てるから安心できる部分って確実にあるのね」
「まぁ、お風呂で着替えを持って行かずに入っちゃった後の、ほぼ裸で部屋まで戻る時の心許なさってあるよな」
「分かる分かる!結局、私達って肌を外に晒すことに慣れてない訳じゃない。で、そーなると、服が私達にとって第二の肌になっている訳だよね」
「んー、まぁ服を着て外に出ることには抵抗ないわな。罰ゲームみたいなダサい服じゃなければ、だけど」
 陽子が缶チューハイを一気に煽る。

「なんて言うのかな、動物で言う毛皮が人間の服みたいなところがあると思っていて、つまり服なしでは成立しないのが人間な訳じゃない」
「どんな天変地異が起っても人間が素っ裸で生きる未来って想像しにくいよな。何とか部族もパンツっぽいのとか、スカートっぽいものは履いてるし」
「だからさ、その第二の肌を突然めくったり、中に手を入れられると内臓を触られたような危機感みたいなものを感じて、ぞわぞわってしちゃうんだと思うんだよね」
「なるほどね」

 頷いて、改めて陽子を見る。明るい茶色に染めた髪。着崩した制服と短くしたスカート丈。手首に巻いたシュシュ。薄く施された化粧。
 更に平気で煙草を吸って、酒も飲む。
 見事なまでの一軍女子な風貌なのに服は第二の肌で、めくったり、中に入れられるとぞわぞわする、なんて話をしてる。彼氏の一人や二人いてもおかしくないだろうに、中身は中学時代とあまり変わっていない。

「って、私ばっかり話ちゃったけど。今日、呼び出したの行人じゃん。どーしたの?」
「あぁ。あのさ、お願いがあんだよね」
「なに? 夏休みの課題でも手伝ってほしいの?」
 そういえば中学時代、夏休みの課題を手伝ってもらったことがあった。
「今、十一月だぞ。さすがに二ヶ月遅いだろ」
「まぁね。じゃあ、なに?」
「陽子、俺と付き合ってくんない?」
 アイラブユー。
 愛の告白。
 しかも、それは初めてのもので、それを陽子にするなんて中学時代の僕から考えると信じられなかった。人生いろいろあるものだ。

 ○○○

 改めて読んで思ったんですが、これ掌編のテンポ感なのかな? 完全に100枚くらいの短編の読み味な気がするなぁ。
 とりあえず、言いたいことは服って第二の肌って感じしません?でした。

 こんな感じの会話をダラダラしているのが「あの海に落ちた月に触れる」でもあるので、良ければ読んでみていただければ幸いです。

 よろしくお願いします。

サポートいただけたら、夢かな?と思うくらい嬉しいです。