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【ネタバレ有】映画『ニモーナ』レビュー&考察

2023年に公開された映画『ニモーナ』。魅力的な世界観とキャラクターたちにやられた方も多いでしょう。新しいものと古いものの共存、反発、生き方! 
あの世界で生きている魅力的な「ニモーナ」のレビュー(少しだけ考察)をしていきます! 

※ネタバレ有りのレビューです。

【レビュー①】校長室のニモーナ

校長室でニモーナはアンブロレーシャスに変身して殺されるフリをしました。その時の、この町のミニチュアの壁を壊し、グロレスの像に手を伸ばし……。この先の運命を示すかのような演出が素敵です。

【レビュー②】ニモーナは「ニモーナ」


画像出典:映画『ニモーナ』公式サイト(Netflix)

ニモーナはどの姿になっていても素敵。コミックの髪型の解釈もおしゃれでクールです。彼女がサメになってもゴリラになっても鳥や狼になっても、どんな動物になっても「ニモーナ」だと分かるキャラデザインが魅力的。
サメのダンスなんて可愛すぎてクラクラしてしまいます。
ニモーナの「本当の姿」は人間の女の子ではありません。いえ、どれも「本当の姿」だと言っても良いでしょう。人間の女の子、クジラ、サイ……どれもこれも「ニモーナ」なのです。どれが「本当」とかではなく、どれもが「ニモーナ」。だから、どの姿でも一目で「ニモーナ」だと分からなければいけません
だからこそ、どの姿に変身だと一目で分かるキュートなデザインが素敵です! 

【レビュー③】嘘の話の中の本当の話


画像出典:映画『ニモーナ』公式サイト(Netflix)

物語冒頭の語り部、ニモーナがバリスターに話す過去。それぞれ、本当の過去のエピソードは違っていました。しかし、それぞれ嘘だけでもないのも上手いところ。影にいたニモーナをグロレスがひっぱって来てくれたのが、「暗闇から来たモンスター」。鳥や鹿、魚、いろんな動物を追いかけて過ごしていた孤独な少女の回想は、姿は違っていても「本当」のことでした。

【レビュー④】ニモーナの本音

ニモーナが「雇ってよ!」とバリスターに言い寄るシーン、「復讐する!? みんなが忘れた頃に行動する!?」と案を出しながら「それとも……ただの話し相手になる?」とつぶやきます。最後のその言葉にニモーナの本音が込められているのも素敵でした。何か言い訳を持ってバリスターのところへやってきましたが、本当のところは「みんなの敵になった。ただ1人きりのこの人なら、私と話してくれるかもしれない」という気持ちだったのかもしれません。
彼女の臆病さや悲しさ、素直になれない部分が見え隠れする前半のニモーナも可愛いです。

【レビュー⑤】理解すること、理解してもらうためにすること


画像出典:映画『ニモーナ』公式サイト(Netflix)

ニモーナは「ニモーナ」であってカテゴラズする必要はない、過去がなんであれ目の前のニモーナが「ニモーナ」であることには違いない。バリスターがそう理解して、それ以上問わないのも素敵でした。

とは言え、現実では相手から理解してほしいなら、相手が納得する基準で話す必要があります……。本作でも、「話さなかったから」こそ、終盤の大変な事件が起こりました。
話してもらえなくてもその人が「その人」であることを理解すること、自分が「自分」であることを理解してもらうためには話すことが必要だということ。
マイノリティであれ、マジョリティであれ、「お互いの」歩み寄りが必要である、というところもリアルに感じました。

【考察】受け継がれること


画像出典:映画『ニモーナ』公式サイト(Netflix)

ニモーナ、グロレス、アングロレーシャスの3人は似ている人物だと思っています。

どうやって周りや相手と付き合うのか、どうやって仲間になるのか、どうやって生きていくのか。そして、何が良いことで、何が悪いものなのか……。私たちは家族や周りの人(同じ種類の仲間)を見てそれを学んでいきます
差別もそうやって受け継がれる一面もあるでしょう……。

ニモーナは元々引っ込み思案な性格だったようです。自分以外の生き物を知らず、どういった生き方をすれば良いのか? 手本にできる仲間もおらず……そんな時に、ニモーナは活発なグロレスと出会います。グロレスと出会い、グロレスから生き方を学び、彼女のような行動的な人物になっていきます。現在のニモーナの元になったのはグロレスだと言っても良いでしょう。ころころと表情を変えて、感情豊かなところも彼女譲りなのかも。

グロレスの子孫アンブロレーシャスも、実はそんな人物です。騎士として冷静な素振りをしていますが、校長に「なんでも言って」と言われた時の彼の脳内! 何でもかんでも口にしてパニック! な脳内が垣間見えました。ニモーナを「悪い奴」だと疑ってしまうのもグロレス譲り、ということなのかもしれません。

アングロレーシャスはグロレスと、そしてニモーナにも似ているのです。
「腕を切り落とすのは愛のジェスチャーじゃない!」なんて独特の言い回しをニモーナとアングロレーシャスの2人がしているのも印象的。

そういえば、バリスターがニモーナを褒めた時の「あの子は優しくて賢くて洗練されている」という言葉、アングロレーシャスにも当てはまるのも興味深いです。

普通とは違う1人ぼっちの子を好きになったグロレス
普通とは違う1人ぼっちの庶民の子を好きになったアンブロレーシャス
普通とは違う1人ぼっちのはみ出し者を好きになったニモーナ

ニモーナとアンブロレーシャスは似ている。だから2人してバリスターのことが好きだし、バリスターは2人の前向きで感情豊かなところを好きになったのかもしれません。

大人から子どもへ、差別も受け継がれてしまうけれど
同じように、好みや絆も受け継いで行けるのかもしれません。

まとめ

明るいだけじゃない世界だけど、暗いだけでもない。楽しいだけじゃないけれど、くじけるばかりでもない。
この世界とニモーナの強さと可愛さにやられてしまいました。
これからも暴れてくれそうなニモーナをもっともっと観たいです……!

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