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14.加納くん

加納くんのプレーはいつも見る人に勇気を与えてくれる。
どんな不利といえる状況を自らの力で覆し勝利してきた。
そんな加納くんのプレーを見てると、僕は心が沸いてくる。

そもそも、エペは全身どこを突いても良しとされてるので、世界的に見て体格が大きい選手が有利とされている。
その点、加納くんは173cmと小柄で、体格としてはお世辞にも恵まれてるとは言えないだろう。
だが、これまで幾度となく自分より大きな相手に勝ってきた。
スピードを活かして相手の懐に入り、突く。
文字にすると簡単に見えるかもしれないが、その為には相手とのタイミングを計り、相手の剣を払い等々、色々な要素をクリアしないといけない。

オリンピック前の日田での事前合宿中、
試合形式の練習日。
僕は加納くんと試合をした。
1セット3分、3セットの15本勝負。
2セットが終わり11-9と僕がリードをしていた。同時得点もあるので圧倒的に僕が有利ではある。
だが3セット目、最後の3分間、13-15で僕は負けた。
試合をする前、僕は自分が取るいつもの距離やタイミングを変えて加納くんに対して挑むことにした。
試合が始まり、作戦としては成功し、リードも奪っていた。
しかし、3セット目、作戦としては成功していたのに負けてしまったのだ。
理由はわかってる。
勝利に対する気持ちの差だ。
どんな状況においても加納くんは決して受け身にならない。諦めない。
常に前にプレッシャーをかけ、僕が甘く前に入った所を、気持ちの入った突きでさらに前へと押し返してくる。
気がつくと僕は受け身の状態。
そして負けた。

その時に僕は対戦しながらも、
加納くんの姿を見て感動めいたものさえ感じてた。
どんな状況からも必ず勝利を掴もうとする加納くんの姿は、まさに漫画に出てくる主人公だった。

オリンピックでの対フランス戦
43-44で、あと1点をフランスに取られたら日本の負けの状況。
その状況でも加納くんならやってくれると僕は思っていたし、知っていた。
おそらくエペジーーンならみんな知っていた。
加納くんが、勝利をもたらす主人公だという事を。

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