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「続けるジム」に入会を決めた5つの条件:『行動を変えるデザイン』の学びメモ

こんにちは、永谷です。
『行動を変えるデザイン』という本が非常に学びになります。

記憶に定着させるために、この7月から始めたオンラインフィットネス「続けるジム」に入会を決めたフローを参照しながら、メモしてみます。

行動を変えるデザインとは?

まず、『行動を変えるデザイン』がどういう本かというと、行動経済学や心理学の知見を活用しながら、行動変容のプロセスをわかりやすく整理している本です。


行動変容、というと少し難しく聞こえますが、アプリやプロダクトデザインの事例も紹介しながら、人の習慣を変えるサービスのつくり方がまとまっています。

例えば下記のようなアプリが、サービスの事例として挙げられていました。


食事の記録をすると管理栄養士から
アドバイスが届くダイエットアプリ「あすけん

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クラウドで家計簿をつける
お金の見える化アプリ「Money Forward ME

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ここで突然ですが、コロナのせいで10kg太りました。


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Photo by i yunmai on Unsplash


4月上旬に緊急事態宣言が発令されたときから、6月上旬にかけて、10kg太っていたのです。期間にして、約二ヶ月。

まあコロナだけのせいにするのも良くないのですが、休みの日に外出することも減り、この時期にジムに通う気にもなれず、もうこれは「ぜんぶコロナのせいだ」と思ってもしかたがありません。
※むしろダイエットに成功した同僚もいますが、彼女は会社でも指折りのPMなので、例外とします


個人的な話になってしまいました。
『行動を変えるデザイン』の話に戻します。


コロナのせいにしたところで、体重は減るはずもなく、
*生活習慣を変えたいと関心はあるものの、特に何も実行できていませんでした。

*医療の分野で一般的な「トランセオレティカルモデル(行動変容ステージモデル)」では、6ヶ月以内に行動を変えようと思っているステージを「関心期」と呼ぶそうです


そんな折、SNSでこんな投稿を目にしました。


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「続けるジム」……。

このキーワードにピンと反応して、少々の逡巡を挟みながら、入会を決めました。今は家にいながら毎週二回、オンラインフィットネスをやっています。

「続けるジム」の特徴はこれから説明するとして、この「SNSで投稿を目にする」から「入会を決める」までの過程が、『行動を変えるデザイン』で紹介されているCREATEアクションファネルとピッタリはまっていると思い、自分の思考フローを思い出しながら整理してみます。

CREATEアクションファネルとは?

まず、CREATEアクションファネルとは、『行動を変えるデザイン』で紹介されている、行動にとりかかるための5つの前提条件を整理したフレームワークです。日常生活で、ある行動が実際に行われるようになるには、以下の5つの条件が必要だとしています。

=================================
1. ⚡️ Cue(キュー、合図):
行動を考え始めるきっかけとなるキューに反応すること

2. ❤️ Reaction(リアクション、反応):
直感的な心理が、行動についての思いつきに自動で反応すること

3. ⚖️ Evaluation(エバリュエーション、評価):
意識的な心理が、思いつきについて、特に費用対効果の観点から評価すること

4. 💪 Ability(アビリティ、能力):
行動するアビリティがあること、つまり、何をするのかわかっているか、必要なものが揃っているか、そして、成功できそうかを確認すること

5. 💨 Timing(タイミング、緊急性):
今行動するべきタイミングなのか、特に急ぎなのかを決めること
=================================

この5つの前提条件が整った時に、人は行動を実行できる(Execute)ということで、CREATEアクションファネルと呼んでいます。

あなたが献立アプリを「今すぐ使おう」と思うためには、いったい何が必要なのだろう。

1. キュー。まずはどうにか、アプリのことがあなたの頭をよぎらないといけない。あなたが考えるきっかけ(キュー)となること、例えば空腹を感じること、テレビで健康な食事の広告を見かけることなどが必要だ。

2. 反応。次にあなたは、アプリを使う思いつきに対して、瞬時に直感的な反応をする。アプリを使うのは楽しそう? この前使ったときはいい感じだった? 他の選択肢はどうだったっけ? という問いにパッと答える。

3. 評価。3番目に、費用対効果についてざっと考える。アプリを使うと何が得られるのだろう? どんな価値をアプリは用意してくれているんだろう? ソファーから立ち上がって料理を完成させる労力は果たして見合うのだろうか? という意識的な思考だ。

4. アビリティ。4番目に、今アプリを使えるのかを確認する。どこにスマホがあるかわかってる? ログインするためのユーザー名とパスワードはなんだったっけ? 実行する上での問題が片付いていないなら、それをまずは片付ける必要がある。その上で、初めてアプリを使うことができる。

5. タイミング。5番目に、いつ行動するのがよいのか判断する。今がいいのか、テレビ番組が終わってからのほうがよいのか? それは急ぎか? もっといいタイミングがあるか? アビリティの判断の前にすることもあるが、どちらにせよタイミングについて考えなければならない。

もしこれら5つが確認できたら、そのとき初めてあなたは行動を実行できる。

『行動を変えるデザイン』p80,p81から引用


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『行動を変えるデザイン』p97から引用


ポイントは、これら5つの条件が「同時に」揃わないと、人は行動せず離脱してしまうということです。

続けるジムとは?

次に、「続けるジム」について。まだ正式リリースはされていないβ版ではありますが、「習慣にコミットする」オンラインフィットネスで、次のような特徴があります。

・オンラインのワークアウトであること
・コミュニティによる運営体制をとっていること
・達成すると料金が安くなること
・オンラインだけでなくオフラインのトレーニンググッズや道具が届くこと


個人的に面白いなと思ったのは、決められたワークアウト目標を達成すると、次月の月額料金が安くなること。「続ける」ための具体的な工夫が、システムとして一貫構築されているところに好感を持ったのと、プラットフォームを運営する立場として純粋な興味もありました。

CREATEアクションファネルの適用

ここで、自分の思考フローを思い出しながら、CREATEアクションファネルに基づいて「SNSで投稿を目にする」から「入会を決める」までの過程を整理してみます。

1. ⚡️ Cue(キュー、合図):
 1.1 - 外部要因:
  SNSの投稿を目にした
 1.2 - 内部要因:
  コロナ太りでダイエットの「関心期」にいた

2. ❤️ Reaction(リアクション、反応):
 2.1 - 直感的な感覚:
  「続けるジム」というキーワードにピンと来た。(これまでの経験から、短期的なダイエットの成功よりも、運動習慣を「続ける」ことが最も難しいと感じていた)
 2.2 - 代替案の連想:
  ジムやプールに通うことは、コロナが落ち着くまでは難しい
 2.3 - 心理的な信用:
  「続けるジム」代表の星野さんがQWSメンバーとして活動していて、以前からバディトレの仕組みに興味を持っていたこともあり、個人的な信用値の蓄積があった

3. ⚖️ Evaluatin(エバリュエーション、評価):
 3.1 - メリットの強調:
  疲れにくいカラダになる習慣形成によって、ビジネスマンとしてのパフォーマンスも上がる(過去に糖質制限ダイエットで集中力が下がったと感じた経験があった)
 3.2 - コストの削減:
  最安で月額2,800円(β版価格)。トレーニングや日課を続けることによって、翌月の月会費が安くなる仕組み。飲み会行くより安い。

4. 💪 Ability(アビリティ、能力):
 4.1 - アクションプラン:
  「自宅でZOOMにログイン」するだけでいいので手軽
 4.2 - リソース:
  各回のワークアウトが「25分」なので、仕事のスケジュールにも支障なさそう
 4.3 - スキル:
  学生時代のスポーツ経験から運動スキルに対する抵抗なし
 4.4 - うまくいく確信(self-efficacy):
  ダイエット自体の成功体験は何度かあり

5. 💨 Timing(タイミング、緊急性):
 5.1 - 外からの緊急性:
  β版なので「人数限定」
 5.2 - 内からの緊急性:
  生活習慣の乱れから「最近、仕事のパフォーマンスが下がっている」と感じていた
 5.3 - 具体性:
  7/1開始。緊急事態宣言期間中の仕事のバタバタも落ち着いて、新しいことを始められるタイミング
 5.4 - 一貫性:
  自宅勤務が始まった頃に、ダイエットすると宣言していた(が、案の定、続かなかった…)

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この頃はまだガンバっていた…。


大事なのは、分析から改善案につなげること

上記のように整理してみると、各ステージにおける要因は個人的な経験によるものが多く、非常に属人的であることがわかります。重要なのは、行動を変えるのに普遍的な処方箋を求めるのではなく、アクションファネルによってどこで人々が離脱しているのか理解を深め、分析をしていくことです。チームで仕事をしている場合は、これらの情報を可視化することによってディスカッションが促され、改善案に取り組みやすくなるかもしれません。

何がユーザーを足止めしてしまうのか?
 
 ユーザーがとりうる行動が通過するCREATEアクションファネルとその5つの段階について、別の見方で考えてみよう。何がユーザーの行動を阻んでいるのだろうか。ユーザーが直面する認識の上での、そして、実践する上での障壁にはどのようなものがあるのだろうか。

キューの問題
 ユーザーが行動をすることを忘れてしまっているか、あまり注意を向けていない。環境に行動を思い出させるものが何もない。

直感的な反応の問題
 ユーザーはプロダクトやプロダクトの開発元を信用していない。行動に馴染みがなく、違和感がある。

意識的な評価の問題
 ユーザーにはまだ十分に動機がない。行動するためのコストが高すぎる。

アビリティの問題
 ユーザーはどうやって実際にやっていいかわからない。あるいは、やるのに必要なものを持ち合わせていない。失敗を恐れている。

不十分な緊急性の問題
 ユーザーは行動を別の日まで先延ばしにするが、その日は決して訪れることがない。もしくは他の急ぎの事柄が妨害している。

 (CREATEアクションファネルのように)行動するのに何が必要なのかという視点と、今すぐ行動するのに何が障壁となっているかという視点のどちらから見ても、行動がうまくいくためには、同様の因子が必要なことがわかるだろう。

『行動を変えるデザイン』p103から引用


以上、「続けるジム」に入会するまでの過程をCREATEアクションファネルによって整理してみました。ここまで整理するだけでも、非常に学びになるのですが、なんと『行動を変えるデザイン』は全部で16章あります。

CREATEアクションファネルが説明されているのは第2章で、まだ人々の意思決定メカニズムを「理解」しただけにすぎません。ここから行動変容のための戦略を立て、改善していくまでの体系的な知見がまとめられています。

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『行動を変えるデザイン』p24から引用


具体的なプロダクトの改善ループ方法などもまとまっているので、全体を通して非常に学びになります。デスクの目につくところに置いて、辞書的に活用するのも良さそうです。


また本書の中でも言及がありますが、他にも習慣形成にまつわるサービスデザインに関する本では、以下もお勧めです。


「続けるジム」が気になった方は、こちらが参考になるかも?






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