名前を木に彫る | 夜のおとなの木工教室 ・ 表札編#1
「あゆさん〜!このあときこりやさん行けるかい?」とひかりん(同居人)からLINEが来て、慌てて西条から豊栄へ車を走らせる。そうだった、今日はきこりやさんで看板づくりだ!!!
きこりやさんは東広島市福富町にある木工店だ。3月に引っ越した豊栄のシェアハウスに表札がないね、と話になって「自分たちで作れないかな〜」と隣町のきこりやさんにひかりんが相談してくれた。
夜の時間でもいつでもいいよ〜。きこりやのおじさんは「夜のおとなの木工教室」といって木を選ぶところから、名前を彫って、色付けしてなど全ての工程を教えてくれて、自分たちの手でやらせてくれる。木工店さんには塗料屋さんも来ていて、「色が決まってたら塗っててやるぞ〜」と言ってくれたのに対して、きこりやのおじさんが「自分でやるのが楽しいんよね」。そうなんです。家の表札なんて作ったことないですから。
この真ん中の金属が高速で回転して木を削る。電動の彫刻刀みたいな感じで、木をすぐに彫ることができる。木を彫ったのは小学生の図工で版画をしたとき以来。
鉛筆で下書きをして、早速彫る。あとで彫り終わった写真を見たら分かると思うけれど、「佐藤」という漢字がなかなか複雑でうっかりしたらブサイクな文字になってしまいそうだった。集中、集中。湿度も相まって、じんわり汗をかいた。
そういえば黒瀬にある陶芸家のおじさんが手を使って何かを作るのは、とてもリフレッシュになるぞ〜と前に教えてくれた。下書きに沿って、はみ出さないように。綺麗なカーブを描けるように。自分の見ているものと手の力加減に注意を絞って、それ以外のことが頭から離れていく。木の匂いに包まれて、最高のリフレッシュかもしれない。
夜のおとなの木工教室は4時間くらいだったが、そのうち1時間くらいはきこりやのおじさんがとってくれた出前のカツ丼を食べて、コーヒーを飲みながらおしゃべりをした。「まぁまぁ、疲れるし、カツ丼冷めないうちに食べようや。」早く終わらせることを目的にしない、お腹の空き具合と疲れ具合で時間を管理する。山での暮らしは急ぎすぎない。急いで畑仕事をすると体がついていかない。スケジュール帳に書いてあるタスクたちは横線ですぐに消しちゃいたくなるけれど、看板づくりの道のりは長いぞ。
とりあえずこの日は、彫る作業を終わらせて終了。住んでいる私たちの名前と、シェアハウスの名前。静岡でシェアハウスを始めた友達が居場所に名前をつけているのを見て、私たちも名前があったらいいね、と話していた。
豊栄町にある一戸建ての家は、玄関が広くて、一階には大きな和室が2つ。食器もお布団もたくさんあって人を招きやすい。大学生の友達が何人か来てくれて、ほとんどの人が「田舎のおばあちゃんの家みたい〜」「実家やん」と言ってくれる。それがけっこう嬉しくて、しっくり来ていて。
Jicca(ジッカ)という名前をつけました。実家には大事な理由がなくても帰れるように、気軽に人が来れる場所になってくれたらいいな。
さぁ、居場所に名前がついた!ただの友達グループに名前がついただけで、生まれるあの結束感というか、「私たち」感。暮らしだって、ただ生活していても暮らしには変わりないのだけど、「私たちの目指したい暮らし」を共有するのも日々にエネルギーが湧いてくる。暮らしを楽しむ仲間、大切にしないと、だ。
世間の状況が悪化すればするほど、時間に余裕が生まれる。人との予定を組むことが難しい今、自分で自分の時間を考えることが必要になっている。自分が必要だと思っていたけれど、案外なくなっても日常が変わらなかった予定たちが浮き彫りになった。選んでいるようで選ばされている。いま自分がどんな時間を過ごしたいのか?
佐藤、ちゃんと彫れました。次回の看板づくりは色付け!お楽しみに〜🌱
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