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【聞いてみた企画 Vol.1】和装履物「辻屋本店」インタビュー!日本独自の履物文化とは?


こんにちは。着物コーディネーターさとです。

今回から新企画を始めてみました。
題して「聞いてみたシリーズ」
(ひねりゼロのタイトルです…)
私の独断と偏見で、着物や伝統産業分野などで活躍される方に、
気になる事をアレコレお伺いします。

今回インタビューさせた頂いたのは、
浅草の老舗和装履物店、辻屋本店。創業は大正元年だそうです。

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浅草のシンボル、浅草寺から程近くです。

インタビュー!和装とはまったく別の歴史・文化を持つ和装履物

今回お話を伺ったのは、辻屋の店主、富田里枝さん。

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「履物には、着物とは全然別の歴史があるんですよ」と富田さん。
今回は富田さんに「日本の履物文化について」インタビューしてみました。

さと:実は、履物の普及や発展について、少し調べてみたのですが、詳しいことがよく分かりませんでした…

富田さん:そうなんです。資料がとっても少ないんですよ。

  

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さと:履物文化は独特、との事ですが、どのように培われたんでしょうか?

富田さん:安い履物として庶民に浸透していたのが藁草履(わらぞうり)や草鞋(わらじ)ですね。藁草履は「二束三文」の由来でもあります。
昔は都心部でも、少し外れると田園地帯です。どこにでも材料(藁)があったので、自作したり、売ったりしていたのだと思います。

さと:(内職ってヤツだ…)

富田さん:下駄は江戸時代のかなり後期になってから、お洒落として色々な種類のものが作られました。塗りや蒔絵、畳表などですね。

さと:(現代とあんまりラインナップが変わらないぞ…!)

富田さん:そこから先は下駄は実用・お洒落と両方で使用されました。
歯のある履物(高下駄)は、道路が舗装されていなくて、埋立地だった江戸でのライフスタイルに合っていたのでしょうね。

さと:江戸時代の道路事情の話はよく聞きますね!

富田さん:明治になって機械が導入され、広島の松永で量産タイプの下駄が製造されて、シェアを伸ばします。
元々は各地で下駄屋が、その土地の木材を切って製造していたと思われるのですが、安価な下駄が全国流通する営業展開に変化したんです。
松永の下駄のシェア率は60~70%くらいだったんですよ

さと:すごい。結構な高シェア率だったんですね!

富田さん:でしょう?でも、次第に靴の文化になって、日常的に履く安価な量産の下駄も衰退します。
高級品の桐下駄などしか残らなかったんです。

さと:なるほど、高級品しか存在しなくなってしまったんですね…

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和装履物の現状について

さと:それを踏まえると、下駄って意外に安いですよね。

富田さん:そうなんです。人件費などを踏まえると安いですよね。
全部国産で手作りですし、靴で同じ事をしたら10万円くらいになりますよね。
和装履物は、切ったり縫ったりが全て手作業なのが当たり前なので…

さと:た、大変ですね…草履は特に、素材もデザインもスタイリッシュになってきたので、製造方法も工業化されていると思っていました。

富田さん:いえいえ、そんな事ないんです。作り手も専門店も減ってきています。

さと:では今の商品展開や流通システムが維持できるのって…

富田さん:実はかなり危機的状況で、メーカーも職人もどんどん辞めているのが現状です。

さと:衰退産業なのは着物だけではなかったんですね…
その事実を、私を含めてたくさんの人が知らなかったと思います。

和装履物のTPOについて

さと:今日は履物のTPOについてもお伺いしようと思っていたのですが、
先程お話いただいたように、桐下駄=気合の入った履物だったのなら、下駄が必ずしもカジュアルだとは限らない…ですし、
畳表の下駄って礼装に合わせる場合もありますし、ケースバイケースですよね…?

富田さん:そうですね。
それに、着物もですが、絶対ルールを守らなきゃいけない場面ってすごく限られていますよね~

さと:人生の節目のイベントくらいですし、そういう機会に新調するのであれば、目的も明確ですしね!
相談に乗っていただけるのも、実店舗のいいところですよね。
 

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和装履物の文化のインタビューでは、下駄の話がメインになってしまいましたが、辻屋さんでは草履もたくさん取り扱われています。
「どんな風に履きたいか」も合わせてご相談すると、よりスムーズだと思います。
富田さん、貴重なお話をありがとうございました!

実際に下駄をオーダーしてみる

下駄のカスタムオーダーってすごく簡単なんですよ~と富田さん。
今回は、実際に私が下駄をオーダーしてみました。
  

①台を選ぶ

 まず下駄の底、土台の部分を選びます。
「下駄」と聞くとド定番の歯が2本の下駄を思い浮かべる方が多いかもしれないですが、
意外に色々な形があるんですよ~!

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私は草履と同じ形の「舟形」を選びました。

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この台、白い塗料が塗られていて、
普通の白木の下駄より汚れに強いんです。
私はズボラなので嬉しい仕様です…♪
うっすら透けている木目も上品で素敵です。

通販サイトでもご覧いただけますよ。


②鼻緒を選ぶ


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次に鼻緒=ストラップの部分を選びます。
箱にギッシリ…!すごく悩みました。

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鼻緒の素材は絹やコットンです。
私は汚れたときのお手入れがしやすいコットンの鼻緒を重宝していますが、
絹の鼻緒もエレガントで素敵でした!

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**③待つ
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ついに職人さんの出番です。
辻屋さんでは常駐の職人さんがいて、鼻緒をその場で挿げていただけます。
自分の下駄が出来上がる工程が見られるのも楽しいです♪


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鼻緒を挿げてくださったのは辻屋さんの職人、小林さん。
年季の入った道具もカッコ良いですよね。

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鼻緒のきつさもチェックして貰えます。
私はきつめ派ですが、リクエストすると調節していただけますよ。

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ハイ、できあがり。

鼻緒と台を決めてからの所要時間はわずか15分程度。
履物のオーダーと聞くとなんだかとても上級者向けに思えますよね。
私は最初全く知らずに、おっかなびっくりお店に入ったのですが、
余りにもスピーディーに仕上がるので驚きました。


ちなみに、店頭にはカラフルな仕立て上がり品もあります。

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履物の文化って世界各地で独特ですが、
日本の下駄と同じような形のサンダルっぽい履物って、他国でもあまり見かけない気がします。 
「身に付ける」という事は、大義名分としてではない文化、様式の伝承なのかもしれない、と、
富田さんのお話を伺って感じました。


(写真:伴貞良