見出し画像

豊かな人生100年時代で必要なのは貯金よりも筋肉の貯筋

最近、いろんな所で人生100年時代といわれるようになりました。
人生100年時代で必要なものに老後資金があります。
これはもちろん否定はしませんが、老後資金を潤沢に貯める事ができても
幸せな老後が保証されるわけではありません。

Apple社の創業者スティーブ・ジョブズの「最後の言葉」はとても有名です。要約すれば
「ビジネスの世界で成功し名誉と莫大な富を得たけれど、
 病床で死を待っている今の自分にはこれらは何の意味も無い。」

私は今、ジョブズの享年とおなじ56歳です。残りの人生を何を優先して生きて行くべきか、本当に考えさせられるジョブズの言葉です。

医療が進歩した今の時代、財力があれば最高の医療設備の環境で治療を受ける事ができるかもしれません。でも、病気になった時、医者は病気を治す手助けをするだけで病気の治すのはあくまでも本人の力(免疫力、自然治癒力、強い意志)です。

私の両親は、父は日本の高度成長期を支えた世代、母は専業主婦、それなりの退職金と厚生年金(今、母は遺族年金)で、経済的には恵まれた老後を送れている世代です。
父が元気な頃(75歳前後)は、
「あなた達(娘の姉や息子の私)の面倒にはならないから、安心しなさい」
と言っていました。もちろん、本心で言っていたと思います。
しかし、現実は本人達の思っていたようには行きませんでした。
 ”こんなはずじゃなかった” 事がいろいろ起こり始めたのです。

老化を例えて言うなら
「老化とは ”こんなはずじゃなかった” 事がいろいろ起こり始める事」
「老化とは、崖を転げ落ちようなもの」

つまり、長く生きていれば、想定外の事態がいろいろ事が起こってしまうもの。年老いてしまうと想定外の事態に自力で乗り切り事が困難になってくる。これが現実なのです。

想定外の事態とは、病気もあれば経済環境の急変、災害の被災、何があるかわからないから想定外の事態です。”こんなはずじゃなかった”と、口には出さなくても心の底でそう思っているお年寄りは大勢いるのではないでしょうか? そして”こんなはずじゃなかった”事はある日突然起こります。その日を堺に今までの生活が一変してしまうのです。

父は、若い頃から運動習慣もあり75歳位までは、速足でさくさく歩き回る元気な年寄りでした。しかしある時ノロウィルスに感染し、約1週間ほど寝込んだ事がありました。そのたった1週間で、足の筋肉が衰え、そこに膝の痛みが加わり、歩く速度が劇的に遅くなりました。
信号が青になって横断歩道を渡りはじめても、青のうちに渡りきるのがやっとという状態。まったく別人になってしまいました。
幸い車椅子のお世話にはなりませんでしたが、一度衰えた足が回復する事はありませんでした。

父が80歳の頃、実家を売り払い私と姉の住む近くの東京近郊のサービス付き高齢者住宅(民間の老人ホーム)へ転居しました。ここを終の棲家とする決心をしたのです。両親は自身の体の衰えを感じていた事もあり決断には迷いはありませんでした。
私は時々老人ホームへ伺いますが、実際に入居している多くのお年寄りやデイサービスの様子を見ていると、本当にさまざまな事を感じます。民間の老人ホームに入居している方は、一般的に見れば経済的にも恵まれた”勝ち組”といわれる方々だと思います。”下流老人”という言葉をよく聞くようになりましたが、彼らと比べれば老人ホームのご老人は豊かな老後を過ごせている方々だと傍目にはそう見えます。

多くの老人ホーム/デイサービスで力を入れて行われている支援サービスのひとつに「機能回復トレーニング」があります。簡単に言えば、「お年寄り向けの筋トレ」です。
筋トレといっても簡単な体操や散歩といった軽い運動ですが、このレベルでもお年寄りにとっては重要な筋トレです。寝たきりになってしまうか?、自分の足で動いて日常生活を過ごせるか?の大きな境目を決めてしまう筋トレです。

「機能回復トレーニング」は寝たきり防止の為には意味のあるトレーニングだと思います。しかし、介護認定、要支援認定されている高齢者用のトレーニングです。元気な高齢者が普通のジムで行う筋トレに比べれば格段に強度の弱い筋トレです。コスト(介護スタッフのサポート)がかかっている割にはこれがサルコペニア対策の切り札になるとは残念ながら思えないのが私の正直な感想です。

一般的に人の筋肉は30歳以降徐々に筋肉量が減り始め80歳では半分に減るといわれています。もちろん、筋トレなど何もしなかった場合で、適度な筋トレにより筋肉量の減少を抑える事はできます。
私は20歳代から筋トレを継続しているので、56歳になった今でも筋肉量は増え続けています。筋トレを開始する年齢に、手遅れはありません。しかし、開始する年齢は若かければ若いほど良いと言えます。

残念ながら筋トレの効果(筋肥大、筋力アップ)は、若いほど現れやすく
加齢に従い効果が出にくくなります。ホルモンの分泌、栄養の代謝、新陳代謝、筋サテライト細胞、オートファジー、などの様々な体の機能は若いほど活発で、加齢に従い衰えてくるのは仕方無い事です。そして怪我(関節、靭帯、腱を痛める)のリスクです。筋トレには年齢にかかわらず怪我のリスクが伴いますが、同じような怪我でも若い頃は早く回復しますが、高齢者になると回復に時間はかかります。高齢になり筋力や関節がすっかり弱くなってしまってから始める筋トレはリスクが大きくなります。一度怪我をしてしまうと回復を待っている間に筋肉がさらに萎縮してしまい寝たきりになってしまう人も少なくありません。「筋トレは諸刃の剣」なのです。

なので、筋トレを始めるのは元気な時に、できれば若い時に筋トレを始める事で最低でも若い頃の筋肉量の維持、そして可能な限りの筋肥大が、高齢者になった時のサルコペニア/ロコモの予防となる大きな筋肉の貯筋となるのです。

少し余談になりますが、
私の両親がサービス付き高齢者住に入居した時は、「健常者」としての入居しました。「健常者」つまり、健康で元気で時間もお金も十分あるのだから、自分で運動するなり、趣味に没頭するなり、理想的な老後の生活を楽しむ事ができる一番いい時です。というのは建前でしかありませんでした。
現実は、わかりやすく言えば 「ほったらかし」「放置」でした。
サービス付き高齢者住には「健常者」の他にも「要支援」「要介護」認定の
入居も多く施設のスタッフは当然「要支援」「要介護」の入居者のお世話や介護に大忙しなのです。結果的に「健常者」は「ほったらかし」になるのはやむを得ないのです。

現在の日本で取り組むべき重要な事は、将来認知症にならない為、要介護状態にならない為、「健常者」の高齢者に対してその予防策を施す事です。厚生労働省もそんな事はよくわかっている事です。
今の高齢化社会、介護現場のジレンマは、認知症予防、要介護予防が最重要課題なのにもかかわらず「健常者」はほったらかし、老化が進行して「要支援」「要介護」に認定されてはじめて国や介護施設から手厚いサポートをうける事ができるという矛盾です。

なので、「健常者」の高齢者は、自分でなんとかするしか無いのです。
しかし、「健常者」とはいえ高齢者になると、自分から新しい事にチャレンジできない。それが高齢者なのです。私の両親も地方から東京近郊の高齢者住宅に引っ越して来ても「さて、何をしたらいいのやら?」という感じでした。
比較的活動的だった父は自分で高齢者向けのジムに通い出したのですが、残念ながら長続きしませんでした。母は、楽天的なのんびりな性格が逆に災いしたのか認知症が進んでしまい、「健常者」から「要介護」認定を受けやっと施設の手厚いサービスを受けれるようになりました。母は物忘れは激しいのですが体は元気なので日常生活は自分の手足で不自由なくできています。しかし一緒に散歩をしていると確実に足腰が弱ってきていると感じます。

私が今通っているジムには、少数ですが80歳以上の元気な高齢者が居ます。同じ80歳でも、老人ホームの80歳とジムの常連の80歳では筋肉の貯筋残高には雲泥の差があります。自らの意欲で新しい事にチャレンジできる内に、できるだけ高齢者になる前に筋トレを初めて習慣化する事、これが非常に大切だと私は身を持って感じています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?