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コッペパンのいい話

この間、懐かしい話を思い出したので、ここに書き留めておこうと思う……。


もうずいぶん前の話。

わたしの母は高校三年生の時に亡くなった。その後わたしは高校を卒業して、広告代理店に就職した。企画制作の仕事だった。職場の人は高卒で入社したわたしをとても可愛がってくれてとても優しくしてくれた。わたしは出勤前に家族の朝ごはんと学生の妹のと自分のお昼のお弁当を作ることがほぼ日課となっていた。一方父も、父の会社では「奥さんが早くに亡くなって大変だね。可哀想に……。」と会社の人達が父にとても優しくしてくれていた。

ある日、父が会社から沢山のコッペパンをもらってきた。コッペパンと言っても縦に切れ目があって、そこにクリームが挟んであるパンだった。味はメロンクリームやホイップクリーム、チョコクリームなど。会社で扱われているパンなのでパンの包装はいたってシンプルだった。このいただいたパンは、毎朝食事の支度をしているわたしにとってとても助かるパンだった。
父が「会社で売ってるパン屋さんが、大変だろうから、余ったパンだけど全部あげるから持って帰っていいよって言われたんだ」と言っていた。わたしは、コッペパンのことをとても助かると言って、朝食べたり、就職した会社に持って行ったり、とても助かっているという事を父にパン屋さんに伝えてもらった。そうしたら、継続的にたくさんのパンをもらってくることになった。

わたしはたくさんパンをいただいて、食べきれない時が多々あった。わたしは余ったパンを職場に持って行って、いただいたパンなので無料ですと、自分のデスクの片隅に置き、職場の人に食べてもらっていた。
わたしのデスクの隣には、社内で唯一の大きなコピー機があった。他の階の職場の人もこのコピー機を利用していたので、コピーするついでにパンをもらってくれた。そのうち、父の会社からいただいたコッペパンは社内で話題になり、皆んなに食べてもらっていた。

ある時、わたしの職場の隣の課の課長さんが、「皆んなパンを無料で食べているなんて甘えすぎだ。」そう言って、コッペパン専用の貯金箱みたいな、お金を入れる缶のケースで作ってくれて毎日持ってくるパンの横に置いてくれた。まぁ、なんとお優し方。けれど、パンは父の職場のパン屋さんのご好意でお金も払わずいただいてる食べ物なので、大変恐縮していた。

それからというもの、皆がパンを買う時、貯金箱に小銭を入れてみんな払ってくれた。わたしはとても有り難いなと思う反面、お金をいただくことに悪いなぁと思っていた。

ある時思った。
職場の人達がコッペパンを買う時に、
貯金箱に入れてくれたお金を寄付する為に持っていこう!そう思った。
ハウジングセンターに夏にあるチャリティー募金に、持っていこうと決めたのであった。

そして幾日か経って、貯金箱いっぱいに貯まったお金を
チャリティー募金をしてきた。みんなの好意が詰まったお金だった。きっと職場の人達も、パン屋の人達もきっと喜んでくれている……、そう思った。

またこのお金で誰か救われるなら、すごく良い事だと思う。いい事だ、いい事だな……。


おしまい。


最後まで読んでくださってありがとうございます




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