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ベンチャーファイナンスを理解する!ストックオプションとは?

はじめに

 みなさんは「ストックオプション」についてどのくらい知っていますか?ストックオプションとは、ざっくり言うと「将来、ある一定の安い価格で自社の株式を購入することができる権利(新株予約権)」のことです。現在は未上場で、上場を目指している企業が使う資本政策の一つです。ストックオプションの制度はアメリカのベンチャー企業などがよく採用しており、近年では日本の企業でも採用するケースが増えてきていると言われています。本日はそんなストックオプションについてわかりやすく解説します。ベンチャー企業や未上場企業にお勤めの方、ベンチャーファイナンスを勉強したい方は必見です!

ストックオプションとは

 上記で述べた通り、ストックオプションは新株予約権(これから発行する新しい株式を買うことができる権利)です。
 普通、上場企業の株式を買いたい時には、証券会社などを通じて株式市場で注文します。もちろん、株式市場では株式の値段はその時々の需要と供給によって値段が変わります(この変化していく値段のことを時価と言います)。自分が欲しい株式が高いと思うなら安くなるまで待たなくてはなりませんし、自分が売りたい株式が安いと思うなら高くなるまで待たなければなりません。あるいは、もしかすると、自分が思うように値段が変わらないかもしれません。
 これに対して、新株予約権を持っていると、時価がいくらであろうと予め決められた値段(権利行使価格と言います)で買うことができます。もし権利行使価格より時価が高い時に権利を行使してその株を買い、同時に売ればその差額分(キャピタルゲインと言います)儲かるのです。

どういう風に使うのか

例. 権利行使価格が500円の新株予約権を100個持っている場合

自社がマザーズに上場した
→時価が1株あたり1,000円になった
→権利を行使する
→500円 × 100株 = 50,000円分の自社の株式を買うことになる
→時価が1,000円のうちに売る
→1,000円 × 100株 = 100,000円の売却益を得る
→100,000円(売った値段)- 50,000円(買った値段) = 50,000円のキャピタルゲインを得る

※実際には税金などがあるのでその分が減ります。

ストックオプションのメリット

 では、なぜ企業はストックオプションという制度を採用するのでしょうか。それは、従業員のインセンティブになるからです。インセンティブは、従業員の仕事に対するモチベーションをアップさせたり、優秀な人材に在籍し続けてもらいやすくします。特に、未上場のベンチャー企業では多くの場合、事業収益をさらなる事業拡大のために投資に回さなければならず、その企業が儲かっても従業員にはなかなか還元されにくいなどの苦労があります。しかし、ストックオプションであれば、企業自体のお金をほとんど使わずに株式市場という企業外部からのお金で従業員に報いることができます。まさに最強の成功報酬とも言えます。
 また、ストックオプションは従業員だけでなく、外部から優秀な人材、特に経営陣クラスの人材を招き入れる時にも使われます。

ストックオプションのデメリット

 ストックオプションのデメリットは、その特徴によるものです。すなわち「上場しなければ意味がない」ということです。ストックオプションは自分の企業が上場して初めて行使することができるため、もし上場に失敗またはいつまで経っても上場できないとなれば、株価も何もないため、持っている意味がなくなってしまします。
 また、あまりにも莫大な個数を持っていると、転職する際にはそれを捨てなければならないことが多く、そのような場合もそれまでもらった分、買った分が無駄になってしまうことが考えられます。
 もしストックオプションを持つときは、自社がきちんと計画通りに上場できそうか見極めることが重要です。また、転職を考えている方も転職の時期と上場の時期を考えなければなりません。

どうもらえるのか、どう買えるのか

 まだ上場していないけどこれから上場したいと考えている企業において、ストックオプション制度を採用しており、その企業の従業員であれば買うことができます。入社〜ヶ月後から〜千円で1個買える、などの社内制度があったり、重要なポストに昇進した時(部長や執行役員など)に賞与としてもらえることがあります。
 ただ、ストックオプションはある程度弾力的に設計することができ、その設計の仕方は様々です。したがって、企業によって細かい制度が異なるため、ご自分が勤めている企業がどのようなストックオプション制度になっているか気になる方は、担当の方(人事や財務関連の部署、より経営に近い部署など)に聞いてみると良いかと思います。

さいごに

 ストックオプションは投資的な側面がある以上、買う場合にはある程度のリスクが存在します。その前提となる、企業が上場できるか否かについては様々な要因が関係し、時には運も必要であることもあります。しかし、ストックオプションを持っておくことで、自分の仕事のモチベーションを上げたり、晴れて上場した際にはその喜びや達成感をより大きなものにしてくれます。もし、あなたの企業がストックオプション制度を採用している場合は調べてみると面白いかもしれません。
 ただし、筆者は特定の金融商品を勧めたり、投資に関するアドバイスを行う資格等持っていませんので、ここでは知識を共有するに留めます。買うべきかどうかの判断はあくまでご自分で行なってください!より良いご判断を心より願っております!