【珈琲と文学】太宰治『津軽』
本日の文学案内は、
太宰治『津軽』
です。
あらすじ
解説
1944年に刊行された太宰治の紀行文風小説。
第二次世界大戦の末期。
戦争の中で、“死”を強く意識した太宰は、故郷の青森・津軽への旅へと出発します。
旅の中で彼は、旧友や生家の家族、育ての親との再会を果たしていきます。
彼らとの懐かしく楽しい交流を通して、津軽の人々の温かい人情を再認識すると同時に、自己の存在を見つめ直すことにも繋がったこの旅は、太宰治の人生において重要な出来事となりました。
『津軽』は、紀行文と捉えられることもありますが、これは太宰治の眼を通して人々を見つめ、そして描いた「自伝的小説」としての傑作だと言えます。
感想
『人間失格』や『斜陽』など、人間の陰の部分や退廃をテーマにした作品で知られ、私生活でも幾度となく女を泣かせ、薬物に溺れ、病気を患い、心中未遂を繰り返し、最後には愛人と一緒に自殺を果たすという、文学界きっての破滅の男・太宰治。
作風も暗く、破滅的なイメージが強い太宰治ですが、この『津軽』は少しちがいます。
旅路を綴る筆致は明るく、作品全体がやさしい雰囲気を纏っているのです。
しかし、そもそも太宰治は、みんなが言うほど絶望的な人間ではなく、明るいユーモアを持ち合わせている作家だと僕は思います。
実際、太宰には『畜犬談』や『パンドラの匣』、『グッドバイ』など、明るい系の名作が多々あります。
“恥の多い生涯を送ってきました”
という文言から始まる『人間失格』においても、滑稽なまでの鬱屈と堕落とを描いたという点で、僕は太宰のユーモラスを感じてしまうのです。
そう、太宰治はFunnyな作家…!
その上で『津軽』を読んでみれば、この凱旋紀行が明るく、和やかなものになるのも至極自然なことなんだと気がつくと思うのです。
最後の、育ての親・タケとの再会はとてもあたたく、愛に満ちたシーンで、太宰がいかに人との繋がりを大事にしていたかが伺えます。
太宰治のルーツを知ることのできる作品として、
非常に面白い作品です。
ある程度代表作を読んでから手に取ってみると、よりその深さを味わえるかもしれません。
珈琲案内
◎パプアニューギニア 中煎り
オーストラリアの北に浮かぶ自然豊かな島国、
パプアニューギニア。
ここで栽培される豆の特徴は、
華やかで明るい、フルーティな酸味です。
酸味が苦手な方でも美味しく飲めるような、優しい味わいを持っているんです。
中煎りでは、その酸味の良さを打ち消すことなく、しっかりしたコクが感じられ、より美味しさが増すと僕は思っています。
太宰治の明るい一面がよく表れている『津軽』にぴったりかと思います。
そして、本州の最北である、寒い寒い津軽の旅のお供に、このパプアニューギニアの珈琲を飲むのもまた一興かなと思い、選んでみました!!
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