ブランディング-3

「絵」と「額縁」

絵を鑑賞する際、額縁を気にするひとはあまり多くないと思います。主役は絵であり、額縁はそれを引き立てるために存在するものだからです。そんな一般には目立たない脇役と考えられている額縁ですが、額縁を正しくデザインをするには、絵を正しく理解していることが求められます。

イメージしてみましょう。左の写真は有名な印象派ルノワールの絵画です。この絵画が、もし白くつるりとした額縁に入っていたら。途端に、街の喫茶店で見かけた安っぽいポスターのようになってしまいます。
印象派の時代から続く老舗美術商で鑑定をしてきたアートディーラーの知人から、印象派はルイ様式の額縁と決まっており、額縁一つで真贋を見抜くことができるという話を以前聞きました。調べてみると確かにこんな記事も書かれています。
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ルイ様式の額縁は絵と密接に関係するため、美術館では「正しい額縁に絵画を飾る」ことを試みているとのこと。「額縁は絵の展示に不可欠なものですが、とりわけ1900年以前に描かれた絵画は額縁1つで絵画の視覚的なインパクトを変えてしまうため、非常に重要なものとなってきます」とJ・ポール・ゲティ美術館のダビデ・ガスパロットさんは語りました。
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額縁とは目立たない脇役でしょうか。そうともいえません。絵より存在感がある額縁も存在します。右の写真は拙宅にある芹沢銈介さんが法然を描いた版画です。民芸の主要な活動者で型絵染で著名な彼の小品は、三倍以上にずいぶんと大きく立体的で、手描き文様の施された朱と金で彩られた手作りの額縁に収められています。洋とも和風とも異なる不思議な雰囲気をもつ額縁は、見事に芹沢さんの版画と調和しており、存在感がありながら、版画が主役であるという本分もわきまえています。額縁職人の芹沢作品に対する敬意と熱意が強く感じられます。額縁職人の正しい審美眼を感じました。

額縁は英語でFRAMEといわれます。そして、オランダ発の世界的な建築インテリアの空間デザイン雑誌の名前もFRAMEです。カメラで写真を撮るときの絵の切り取り方(FRAMING)が由来かと思いますが、見方を変えれば、住む人、使う人のライフスタイルを主役とする額縁(FRAME)ということもできるかもしれません。

私たちSTARの名刺は、中央が空白であり、額縁をイメージしてデザインされていると昨日お伝えしました。住宅一つとってみてもSTARでは、和、ログハウス、カルフォルニアスタイル、そしてモダンなハイデザインにいたるまで、様々なデザインスタイルがあります。それは誤解を恐れずに言えば、デザインは出来て当然。大切なのはどんなデザインをすべきか?(それによりクライアントの魅力を引き立て課題解決を導けるのか?)その美しい回答を見つけることであり、それが私たちの役目であると考えています。

それは、ブランディングとよばれることかもしれません。

次回は服のデザインを例にしてお話してみたいと思います。

STAR
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