レールに乗ってどこまでも

汽笛が鳴って僕を乗せた列車は走り出した。


春から新生活が始まる。
大学生としてまた新しい一歩を踏み出す。
人生の中でも大きな出来事だが、僕は乗り気でない。


僕はお笑い芸人を目指していた。

昔から親は厳しかった。

TVも見せてくれなければ、習い事に好きでもないプールや、そろばんなどを習わせられていわゆるエリートの道は親は歩ませようとしていた。
昔から厳しかったこともあり、TVも自由に見せてはくれず、NHKだけ唯一許可されていた。そこで見たコント番組をきっかけに衝撃受けた。

それからというものの親の目に隠れてバラエティ番組を見る日々を重ねて、僕のお笑い芸人になりたい気持ちは強くなった。

そして高校3年の春、勇気を出して僕は親にその心の奥の気持ちをストレートにぶつけたが猛烈な反対。

もちろんそうだ。
収入も安定しないそんな職業を親が認めてくれるはずがなかった。

さらには
「お前には笑いのセンスがない。」
「お前で笑ったことなど一度もない。」

など親もストレートな言葉で僕のハートを粉々に粉砕した。

その行為も実り、僕は東京の有名大学に進学することを決めた。
しかし、僕の心にはまだ僅かながらお笑いに対する火がまだうっすら灯っていた。
大学に入っても、落研に入ることもできる。
職業にしなくても遊びでやればいいと。
そんなことを考えている時、大きな音がした。
そして身体が一瞬宙に浮き、気がついたときには地面に叩きつけられていた。


列車は脱線して事故ったようだ。


僕は地面に叩きつけられたときに、頭も強くぶつけたのであろうか。
僕にはもう笑いのことしか考えられなくなっていた。

「レールからもうおろさせてもらうわ。」


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