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糖質制限とマラソンの関係(1)

長くなると思うので、先に僕の考えを書いておいて、のんびりと根拠と考察を述べていきたい。

1.糖質制限は、マラソン(42km以上のウルトラを含む)に、有効である。PBの更新、未知の距離の完走など、ポジティブな効果は期待できる。
2.糖質制限以外にも、同様の効果を得る手段がある(代案がある)

今回(あるいはこのシリーズ)は、1の効果について、自分のおさらいを兼ねて書き出してみたい。2はまだ検証を始めたばかりなので、あまり触れないつもりだが、文の流れ次第だと思っている。未検証ながら2について確信があるのは、エリートランナーたちの多くが、糖質制限を実践していないことである。もし彼らが、現状に上乗せとして糖質制限をすることで、さらに速くなるのなら、とっくに「糖質制限はエリートランナーの必要条件」という考えが広まっているはずだが、もちろんそんなことにはなっていない。
(効果があって代案がないなら、ナイキの厚底シューズのように、あっというまに業界を席巻する)

エネルギー源の確認

今回、糖質制限という言葉を多用すると思うが、それが指すのはつまるところ、食事法である。できるだけ専門用語を避けて説明してみたい。

人間のエネルギー源となりうる物質(栄養源)は、大きく分けて、糖質、脂質、タンパク質の3種がある(現代日本の食生活では、特に糖質過多の傾向が強い)。各栄養素の性質(エネルギー源とした際のメリット・デメリット)をかんたんにまとめてみる。

糖質

メリット
摂取からエネルギー化までが一番早い。安価。甘い。唯一、満腹感をもたらす(満腹中枢を刺激する)。脳細胞が好んで使う。無くても死なない
デメリット
血糖値を上昇させる。太りやすい(中性脂肪に変換される)。

脂質

メリット
体内に大量に保存できる。細胞膜やホルモンの原料(故に欠乏すると命に関わる)。血糖値に影響しない。
デメリット
エネルギー化に時間がかかる。消化しにくい(?)ので、胃もたれなどの原因になる。

タンパク質

メリット
筋肉や酵素の主成分。必要に応じて、糖に変換可能(糖新生)。(※タンパク質はほとんどの生体構造物の骨格だが、話が複雑になりすぎるので、本文では筋肉と酵素についてのみ触れる。蛇足だが、酵素を栄養食品として摂っている人はすぐにやめるべし。必要な酵素は体内でのみ生産されるもので、摂取しても消化過程で完全分解される。)
デメリット
通常はあまりエネルギー源として使われない。糖新生が起きるときは、筋肉などの構造を切り崩す可能性が高い(自分の足を食うタコ?)。

糖質中心の食生活で、体内に何が起きているか

日本で一般的な食生活では、エネルギー源の糖質依存度がとても高い。ごはん、パン、うどん、ラーメンなどの主食はもちろん、ほとんどの間食やジュース類も、ガッツリ糖質が入っている。糖質摂取の害はいろいろあるが、ここでは、長距離アスリートに直接関係することだけ検討してみる。

まずなにより、糖質が大量に供給されている状態では、脂質の代謝(エネルギー化)が著しく制限される。わかりやすくするために、(非科学的だが)たとえ話を。4歳の子供がいるとして、その子の晩ごはんに、たっぷりのチョコレートケーキと、同じくたっぷりの野菜スープをテーブルに並べたとする。彼に好きなように食べなさい、と言ったら、どうなるだろうか。おそらく、お腹がいっぱいになるまでケーキを食べて、野菜スープは手もつけないのではないか。これと似たことが、体内で起きる、というか起きている。脂質はエネルギー化するのに手間がかかるので、扱いやすい糖質ばかり使うのだ。

さらに、慢性的な糖質過多となると、脂質代謝能力自体が落ちてくる。代謝、つまり、物質からエネルギーを取り出すということは、化学反応である。生体内での化学反応を支配しているのが「酵素」である。酵素については、タンパク質で作られた、分子サイズのロボットを想像してほしい。このロボットは特定の仕事しかしないが、非常に効率はよく働き、すぐに壊れるものではない。脂質代謝には、それを専門とする複数種類のロボットが必要なのだが、製造コストがかかる。糖質過多の状態では、ロボット生産は後回しにされ、いずれは凍結されて、生産されなくなる。こうなると、脂質はエネルギー源として使われることがなくなり・・・例えば、ダイエットも大変になるw

さて、逆もまた真かというとそうでない。脂質過多、糖質不足の場合、糖質代謝の酵素が作られなくなるということはない。糖質代謝は生体の緊急回路でもあるため、糖質代謝酵素(先の例だと糖質ロボット)は、必要がないときでも作られるからだ。

やっぱり長くなりそうなので、何編かのシリーズにしようと思う。感心があればぜひ続きを御覧ください^^


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