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糖質制限とマラソンの関係(2)

前回の続きになります。

前回は、「糖質中心の食生活をしていると、一般的に脂質代謝能力がかなり落ちてるはずですよー」というところまで。

マラソンでの糖質・脂質代謝

人間は通常、安静時および、低強度の運動では、エネルギーの約50%を糖質に、残りを脂質に頼っているそうだ(一般人、アスリートの区別は不明)。そして、運動強度を上げていくと、脂質からのエネルギー供給量は一定のままだが、糖質からのエネルギー供給が増えていくという。つまり、高強度になるほど、糖質依存度は高くなる

運動で使われる糖質は、主に筋肉に蓄えらたグリコーゲン。運動中に補給する糖質(ブドウ糖やデンプンなど)ももちろん使われるが、消化吸収の過程に時間がかかるし、あまり効率は良くない。グリコーゲンは、燃焼効率もよく、瞬発力もあるのだが、最大の難点は、貯蔵量に限界があること。

対して、脂質は、皮下脂肪や内臓脂肪として、全身に蓄えられており、かなり痩せた選手であっても、ウルトラマラソンを走り切るのに問題ないほどは貯蔵量があるとされる。事実上、無制限に使える。

こうして、マラソンでは、糖質と脂質を並行して(高強度であれば、より多くの糖質に依存して)消費しながら、走り続けていくことになるのだが・・・

30kmの壁

俗に言う30kmの壁。マラソンは30kmあたりが一番苦しい、がんばったけど30kmから歩いちゃった、などなど、よく聞く話だ。これは、30kmあたりで、グリコーゲンが枯渇するランナーが多い、ということだという。貯蔵グリコーゲンは、基本的に、マラソンのゴールまでもたないのだ。前述のとおりだが、補給食で不足分をカバーするのも、事実上ほぼ不可能・・・ただし、強靭な胃腸の持ち主だったり、近未来的スーパー補給食が現れたりしたらわからないが。
(※マラソンを2時間少々で走るトップランナーたちは、もしかするとグリコーゲンが枯渇する前にゴールしているのかもしれない)

脂質だけで走る

こうして、30kmの壁を克服するためには、糖質依存度を下げればよいのではないか、という考えが生まれる。極端な話、脂質だけで走ることができれば(糖質依存ゼロ)、ハンガーノックも30kmの壁も関係なしに走り続けることができるはずである。無茶な理想論に聞こえるが・・・案外、それに近いことができるのだ。

トレーニングしながらの糖質制限

僕の実践経験を元に、解説してみる。
まず準備期として、3週間、糖質制限を行う。この間は、一日三食、すべて主食を抜き、糖質を含む間食も禁止。代わりに、脂質、タンパク質はしっかり摂る(これを怠ると栄養失調確定)。食品ごとの糖質量は、情報サイトがたくさんあるので、ここでは割愛。準備期には、毎日60~90分のジョグを行う。ペースは遅くてかまわないが、やってみるとかなりキツい。最初からガス欠だからだ。この期間は、身体に「脂質代謝酵素(前回のnote参照)の需要が増したこと」を伝え、「脂質代謝酵素の増産」を促す。

準備期の前半は、ゆっくりジョグでもかなりキツイが、1週間くらいを過ぎたあたりから、日に日にラクになってくるのがわかるはずだ。そしてだいたい、2~3週間で安定し、糖質制限以前と同じ感覚で走れるようになる。

この後は、維持期に移行し、糖質制限の強度を下げる。僕の場合だと、朝食はパン一枚程度、昼食は無制限(ご飯大盛りは避ける)、夕食は糖質オフ、というパターンだ。トレーニングは、通常パターンに戻す。インターバルなどの高強度もOK。この期間は、準備期で増産した脂質代謝酵素を維持するために、軽めの糖質制限を続ける

レースでの実践結果

ここ数年、おおよそこのプランで、僕はPBを更新してきた。PBが出るときは、このプランがうまくいったときだった、といってもいいほどに。

実際にレースを走ってみると、30kmの壁は全く感じられず、100kmにおいても、ハンガーノックはなかった。糖質無しだと、スピードを犠牲にせざるを得ないのではないか・・・と僕も最初思ったが、案外そうでもない。キロ4分台前半のペースで巡航可能だった。

そんな感じで、糖質制限はマラソンに有効である、と僕は考えているわけだが、次回はその問題点と代案について検討してみようと思う。

(続く)

※※実践結果について補足※※
「これだけでは、糖質制限でPBが出たという証拠にはならない」という反論があることは承知している。第一、対照実験をしていない(というか不可能)。あくまで自己人体実験に基づく主観的考察であることをご了承ください。


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