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レジャーを再考してみる

軽井沢に移住して起こった変化の一つが、「レジャー」という考え方の変化だ。

東京生活をしている時、僕は数ヶ月に一度旅行で、地方の温泉に入りにいくのが大好きだった。車で東京を離れるとだんだん、緑が見えてくるようになり、セロトニンがバンバン出てくるのがわかる。大体旅行先は、高い建物がないため空が広く、心にも余白ができる(気がする)。そして、温泉という非日常の体験に身を浸し、心身ともにリフレッシュする。1泊、もしくは2泊して、そろそろ帰らないとイケナイタイミングになると、その非日常への名残惜しさを感じつつ、都会に向かって帰っていく。帰宅すると移動で疲れてはいるが、また明日からの仕事に向けて、心の栄養をチャージして1週間に入っていく。ある種、平日はオン、休日はオフという境界線がはっきりした生活だった。

軽井沢に移住して、この感覚は大きく変わった。日々起きると常にツピッ、チッチッチなどのさまざまな野鳥の囀りとともに目を覚ます。朝起きて近くのコワーキングスペースに移動する間も、青々した浅間山の山麓が見える。時々仕事が早めに終わると、家族で近くにあるトンボの湯という露天温泉に入る。東京の時の僕からしたら、まさに憧れのリゾートライフ、のはずだ。

しかし、実際には、オフの時間が多いから単純に素晴らしい、という話かといえばそうでもないのだ。

軽井沢に住んでいると、旅行で温泉に行きたい、という渇望は以前ほどは無くなった。あれだけ、週末に温泉や、地方の緑を求めていた自分が、だ。むしろ、非日常を求めにいく先は、東京や京都などの都市に変わった。今まではあまり好きとはいえなかったビル群も、上京するとちょっとテンションが上がるようにすらなる。非日常では、むしろアドレナリンを刺激される都会の刺激を求めるようになる。そういう意味では、立派な「田舎者」になりつつあるのかもしれない。

結局、隣の芝は青いというやつなのだ。都会にいたら、自然に魅力を感じ、田舎に住んでいると人工物に魅力を感じる。結局は、都会も田舎もどっちも往復することで、お互いの良さを感じるのが良いね、と言う結論になるのだが、軽井沢に移住したことで自分に起こった変化はそれ以上のものがあるのではないかという気がする。それは、軽井沢に移住して「レジャー」と言う概念が自分の中で変わりつつあるということだ。

都会でバリバリ働いていた時の僕にとって「レジャー」は、ただの休暇ではなかった。「仕事のためのエネルギーをチャージするための余暇」を意味していた。仕事ありきの生活なので、あくまでも仕事を頑張るために、レジャーに出かけて英気を養うという感覚だ。東京に住んでいたときに温泉に行っていたのは、突き詰めて言うと仕事のパフォーマンスを上げるのが目的だったと思う。

趣味も同じで、東京に住んでいるときはそれらが人生や生活の真ん中を占めることはなかった。あくまでも仕事のための趣味だった。たとえば、筋トレやランニングを趣味としている人も、どこか仕事のパフォーマンスをあげるためにやっている節がある。すべての真ん中に仕事があるイメージだった。
ところが、僕が軽井沢に移住してからは、そのバランスに大きな変化が起きた。それまで中心を占めていた仕事の存在が、新しい生活ではワン・オブ・ゼムになったのだ。「仕事+その他」ではなく、趣味やライフスタイル、空間(スペース)など仕事以外の自分にとって大事なことが仕事と同列に位置付けられている。こうした変化は、都会から地方に拠点を移した人にお話を聞くとかなりの方が口を揃えて言うことだ。

軽井沢の冬は、長くそして寒く、過酷なのだけど、その期間は、大体車で30−1時間以内にあるスキー場に行くのが、週末の楽しみになる。しかし、これは、どちらかというと仕事の気分転換で行く、というより、冬の寒い環境の中ジムに行くように、日常でできるスポーツを楽しむ、場合によっては鍛錬するという感覚になる。スキーというスポーツ自体を趣味として家族で楽しむことをより意識している。

また、長期の休みが出来てどこに行くか?を考える時、もし自分が一人だったら、誰かに会いにいくか、何か作るということに時間を使いたくなるように思う。都会生活の際には、当たり前のようにあった情報刺激と、消費、ではなく、自ら情報刺激を得に行って、作ることでエネルギーを自家発電するような感覚だろうか。

実際、庭いじりをしたり、家庭菜園をしたり、小屋を作ったり、何かを作ることを楽しみに覚えている人は、軽井沢や御代田などの周辺にはすごく多い印象がある。それは、ある種、観光にしてもエンターテイメントにしても、レジャーにしても、消費する選択肢が少ないため、自分で楽しみ方を見つけるという選択肢を取るように自然になっているのかもしれない。

仕事への活力を消費するLeisureから、自ら楽しみを生み出すFUNへ。
そんな変化の渦中にいるのではないかと思う今日この頃である。

P.S.僕と同じく地方移住した人にいかにライフシフトが生まれたか、についてpodcastで聴く番組をやっています。「トランジションラジオ〜移住になるライフシフトを考える20分」

一人一時間じっくり移住による人生やライフスタイルの変化を聞いていく番組なのですが(voicyでは20分X3、Spotifyでは1時間)、やはり、どの方も東京などの首都圏に住んでいた時とは違う人生を過ごしていてとても面白いです。場が変われば、人は変化する、のですね。

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