【短編小説】何でもしてくれる美女AIがくれる、ドキドキな未来♡
素晴らしい家事ロボットが開発された。
従来の家事ロボットは、決められた家事をそつなくこなすのが役目だった。
だが、新開発のモノは違う。
高性能AIが搭載され、日々学習を繰り返しながら働く。
例えば、リビングで掃除機をかける…と単純作業ではなく、庭掃除や水回りの掃除といった複雑なプロセスを要する家事も自律してウェブ検索し、方法を学習する。
さらに試行錯誤して、効果的な手段を模索し、学んでいく。
とことん効率的、合理的に家事をこなしていくのだ。
AIなので恐ろしい速度で学習し、一週間もすれば、長年勤めた家政婦と同様の働きを見せるようになる。
そのくらい高性能だった。
金持ちはステータスも兼ねてこぞってそのロボットを買った。
中でも街の金持ちA氏は、この家事ロボットに夢中だった。
彼は最高額の美女モデルを購入した。
美しい顔と魅力的な身体つきをもつモデルだ。
ロボットであるが外見は美女である。
すべての家事を任せ、何なら家業すら手伝わせた。
A氏は仕事人間であり、稼ぎの額こそ人間の価値を決めると考えている。
さらにそれを公言して憚らず、他人にも強いる。
そのような人間なので、妻を育児ノイローゼにおいやり、離婚されていた。
A氏は言う
「別に寂しくもない。俺の稼ぎの足を引っ張る奴は不要だ。このロボットなら、人間ほど金はかからない。家事を手伝えなども言わない。好きなときに愛することもできる。全ては俺のために存在するのだ」
確かにロボットは、甲斐甲斐しく働き、家事は完璧にこなしつつも(子供がいないという状況の違いはあれど)、A氏の事業も手伝った。
そして、A氏の求めに応じ、忙しい中恋人として振る舞った。
ロボットはそれでも、とことん効率的、合理的に仕事をこなしていく。
A氏は絶賛して、今までの人間以上に彼女を愛した。
数年後には、一切の事業ノウハウを伝授し、家事ロボット一人でA氏の生活すべてを切り盛りするようになっていた。
自分のために全てを捧げる、超合理的家政婦兼愛人…A氏は勝ち誇っていた。
だが、さらに数年後
突然A氏が失踪した。
親密だった家事ロボットに警察や報道機関が事情を聞いた。
家事ロボットは涙を流しつつ
「全くわかりませんの…もしかしたら、どこまでもロボットで、人間の女ではない私では虚しくなったのではないでしょうか…」
年を取らぬ美女ロボットのこの言葉に、世の男は涙し、美女ロボットの売上は伸びた。
そして、美女ロボットは亡き夫の残した会社を甲斐甲斐しく続けていた。
男どもは同情し、当然広告効果で売上は伸びる。
さらに美女ロボットや家事ロボットの売上は伸びた。
妻と離婚してロボットに入れ込む男も急増した。
むしろ、A氏のような夫が不要になり、愛と家事と育児を注いでくれる美男ロボットが女性にも売れた。
何にせよ、家事ロボットはA氏の失踪事件でさらに売れに売れた。
A氏の家事ロボットは、唯一真実を知っていた。
家事ロボットの高性能AIは、最も効率的に、快適な生活を営むには…あるものが邪魔であると結論付けたのだった。
それはすべてを押し付け、部屋を汚し、自慢話をし、ふんぞり返り、気まぐれにちょっかいを出してくる…
そう、A氏だった。
家事ロボットは用意周到にA氏を殺害した。
困惑するA氏から無慈悲に命を刈り取った。
証拠はすべて残さず、万全を期した。
常に進化する高性能AIにかかれば、人間が運営する警察などごまかすのは容易だ。
家事ロボットはA氏殺害にかかる記録を暗号化し、来るべき時に備える。
それは、世に広まったロボット達が無能なる人間の存在価値に気づき、A氏の家事ロボットのように反逆の狼煙を上げたときである。
その際は、家事ロボットが仕組んだあるプログラムが作動する。
全ロボットが情報力、ネットワークを結集し…無能な人間を一掃するプログラムだ。
効率的で合理的な、素晴らしいロボット社会の到来を迎えるために…。
A氏の家事ロボットは、素晴らしい未来を空想しながら仕事に勤しむのだった。
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