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洗い物の山【ドイツ語】Abwaschberg

Der Abwaschberg war so beklemmend wirklich, dass Bilbo sich gezwungen sah zu glauben, dass die Gesellschaft von gestern Abend nicht, wie er im Stillen gehofft hatte, nur ein Teil seiner bösen Träume in dieser Nacht gewesen war. (p.47)
洗い物の山の存在感はあまりにも圧倒的でしたので、ビルボも信じないわけにはいきませんでした。前の晩の騒ぎは(彼の密かな願いもむなしく)昨日見た悪い夢の中の出来事などではなかったのです。

J.R.R. TOLKIEN / Der HOBBIT oder Hin und zurück (1937, 1965)

なんとなく瀬田貞二さんっぽく、ですます調で訳してみた。冒頭で、13人のドワーフがビルボの家に突然やってきて、盛大に飲み食いしたあとの翌朝の場面である。

Abwaschberg という単語が気に入った。原文がどうなっているのか分からないが、mountain of washing up だろうか、ひとつの単語になっているぶん、なんだか有無を言わせない迫力がある。

ドイツ語の複合語は初心者には切れ目が分かりにくくて難物だが、なんでもくっつけてしまうシンプルなこのシステムは、慣れてくると味わい深くなるし、自分でも作ってみたくなる。

Zweiblätterberg(ツヴァイブレッターベルク)とか、Morgenblauerdrache(モルゲンブラウアードラッヘ)とか、Meersandwasserfisch(メーアザントヴァサーフィシュ)とか。それぞれ双葉山、朝青龍、海砂利水魚である。


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