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ドイツ人にとって ge- は空気みたいなものなのか【ドイツ語】Geraschel(『ホビットの冒険』)

Sie stiegen bergauf; ein richtiger Weg, der zu einem Haus oder Gehöft hätte führen können, war nicht zu sehen; und so gab es unvermeidlich einiges Geraschel, Geknirsch und Geknacke (um vom Gemurr und Geschimpf gar nicht zu reden), als sie in der Stockfinsternis zwischen den Bäumen hindurchtappten. (p.54)
一行は丘をのぼって行きました。民家や農家に通じていそうなまともな道は見つかりません。ですから、まっくら闇の雑木林を手探りで進んでいますと、どうしてもガサゴソ、パキポキ、バリバリ(ブツブツ、ブーブーいう声は言うまでもなく)といった音がしてしまうのは、仕方のないことでした。

J.R.R. TOLKIEN / Der HOBBIT oder Hin und zurück (1937, 1965)

13人のドワーフとホビットのビルボが、冒険の旅に出かけて、初めての困難にみまわれる場面。

擬音語・擬態語がテンポよく、コミカルに使われている。気になるのは、すべて動詞の過去分詞形から派生しているように見える点だ(rascheln〔ガサガサいう〕なら過去分詞形は geraschelt, schimpfen 〔文句を言う〕なら geschimpft)。

オノマトペにいちいち ge- がついているのって、ドイツ人は気にならないのだろうか。

日本語なら、「ゲガサゴソ」とか「ゲブツブツ」みたいに、すべてのオノマトペに「」がついていたら、かなりじゃまだ。「ゲロゲーロ」とか「ゲバゲバ」とか「ゲロッパ」などでもわかるように、「」で始まる言葉はけっこうなパワーワードだ。

ドイツ人は過去分詞で ge- を使い慣れ、聞き慣れているから、ゲでもない、じゃなくて、屁でもないのだろうか。きっと青空球児・好児がドイツ人だったら売れなかっただろうし、ドイツで『ゲバゲバ90分!』を放送しても鳴かず飛ばずだったに違いない。「ゲロッパ」を売りにしないジェームズ・ブラウンの一人勝ちになっていたことだろう(なんだこの結論は)。


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