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使いたくも使われたくもない言葉【フレーズ】Permission denied(ジャスパー・フォード『文学刑事サーズデイ・ネクスト』)

Permission denied, Next. You’ll do as I tell you, or you’ll do nothing. I think that’s all. (p. 213)

話は終わりだ、ネクスト。指示に従うか、この件から降りるかだ。2つに1つだと思うがね。

Jasper Fforde / The Eyre Affair (2001)

文学にまつわる事件を解決する文学刑事シリーズより。政界も牛耳る軍事企業の介入により、主人公が上司から意に染まぬ命令を受ける場面。

知ってるけど使いたくないし、使われたくない言葉ってないだろうか。

私はある。例えば You're dismissed だ。

直訳すると「あなたは去らせられる」。この場に留まる必要はないことを伝える言葉で、「解散」とか「下がってよろしい」などと訳される。

この人を人とも思わないような超エラそうな感じは、日本人にはちょっと思いつかない言い回しだ。責任の所在を明らかにせず、議論の余地もない。

これに勝るとも劣らないフレーズを見つけた。それがこの Permission denied だ。

私は知らなかったが、IT関連の用語でもあって、セキュリティに引っかった時などに表示され、「権限がありません」と訳されるそうだ。ヒトが発するなら「却下する」だろうか。

しかし英語では却下する主体がなく、何が却下されたのかも、その理由も問題にされない。そのくらい絶大な権限が向こうにある感じがする。

日本語で超上から目線というと、「判決を言い渡す」とか「控えおろう!」とか「頭が高い」とかいろいろあるが、裁判官とか町奉行、暴れん坊将軍などが目に浮かぶ。コスプレと言ってもいいかも知れない。むしろコントだ。

しかし上の英語の2例は、有無を言わせない、血の通わない、冷徹なものを感じる。純粋な権力だ。美しくさえある。このニュアンスを訳出するのは本当にむつかしい。

うまく表現できないが、日本語と英語の間にある、何か根本的な違いが、そこにあるような気がする。

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